第十六話 『裁判』⑫
「ブランジェンド王都支局長! 俺がハンジェン裁判長を呼びました! そこの『罪人』を裁く為です!」
ハンジェン裁判長の代わりに、トニーが返事をする。そしてパトリシアを指差さす。
「成程、メライン公爵家の令息は節穴のようだ」
「……っ!? なんだと!?」
グラハムはトニーの評価を無表情で告げた。ブランジェンド王都支局の思わぬ言葉に、トニーは怒りを露わにする。
「私がここに来たのは、ノエル様に『鑑定魔法』を依頼されたからだ」
トニーの反応にグラハムは呆れているが、此処を訪れた理由を告げた。
「ええ、そうです。私の執事も『鑑定魔法』を使用することが出来ますが、それだと不正だと疑われてしまいますので……ブランジェンド王都支局長にご足労いただきました」
俺はグラハムの言葉に頷く。ジェイドに『鑑定魔法』を使わせて、不正をしていないことを証明してもいい。だがそうなると確実にトニーが、ジェイドが不正に加担していると主張するだろう。その為、偶然にも知り合うことが出来たグラハムを呼んだ。王都支局長の『鑑定魔法』ならば、トニーたちも文句をつけることが出来ないからだ。
俺はアンディー教員がカジノに通っている映像が映る水球を一つ、グラハムに渡した。
「ではこれより、この映像の『鑑定』を始める」
グラハムが宣言をすると、水球の周囲に魔法陣が浮かぶ。トニーたちはその様子を見て顔を強張らせているが、俺は余裕の笑みを浮かべる。
「結果は……『本物』だ」
数秒すると、魔法陣が消える。そしてグラハムは『鑑定』結果を掲げた。そこには、虚偽表示無し、魔法操作無しなどの、映像が本物であることを証明する表示が並んでいる。
「……なっ!? そ、そんなわけ……」
トニーは『鑑定』結果に顔色を悪くする。そして周囲からも、動揺する声が幾つも上がった。
「……つまりアンディー教員はカジノ通いの常習犯ということでよろしいですね?」
俺はトニーとアンディー教員に確定事項を突きつける。そしてアンディー教員が、カジノに通う映像が流れる水球を指差した。
「……っ!」
「…………」
悔しそうに俺を睨むトニーと、顔面蒼白のアンディー教員。こちらはグラハムまで呼んで真偽を明らかにしたのだ、もっと何か反応を示して欲しいものだ。しかし彼らからすれば、大きな反応を示す余裕はないのだろう。アンディー教員は保身をはかるにはどうすればいいのか考えるのに必死だ。だが、これはまだまだ前座である。
「嗚呼、それから……先程、デロンさんが仰った『その悪女の成績が常に首席なのは、試験用紙を盗んでいる』という噂話はある意味では本当ですよ?」
反応が鈍い二人を放置して、俺はデロンが発した噂話について言及する。
「ある意味だと? 仮にアンディー先生の映像が本物だとしても、悪女の噂話は本当だ!」
苦しそうにトニーが異論を唱えた。トニーにとっての希望はデロンが口にした噂話である。この噂話を本当だと証明することが出来れば、トニーは活路を見出すことが出来るのだ。残念ながら、そんな余地はない。
「トニー様。しっかりなさってください? 今、ブランジェンド王都支局の『鑑定魔法』により映像は本物だと証明されました。私がお話しをしたいのは……何故、アンディー教員は急にお金の巡りが良くなったのでしょうか?」
俺は首を傾げると、アンディー教員がカジノ通いを常習的に行えたかを問う。
「そんなことは知らない!」
トニーは考えることを放棄したようだ。感情的に叫ぶ。
「答えは簡単です。『試験用紙を』売りさばいているからです」
俺は答えを口にした。




