第十三話 『裁判』⑨
「は? 水を浮かべて何を考えている? 水遊びでもするつもりか? ノエル?」
トニーは俺が発動した魔法を見ると、余裕の笑みを浮かべた。俺が単純に、水の塊を呼び出したと思っているようだ。浅はかな考えである。俺が何と言って魔法を発動させたか、考えるべきだ。
「ご希望とあらば、トニー様の頭上に降らせることも可能ですよ?」
「う、五月蠅い! 誰がそのようなことを望むものか! 余計なことをするな!」
俺はトニーにある提案をするが、焦った様子でトニーは否定する。多少の冗談にも過度な反応を示すとは、余裕の無さが現れているようだ。残念ながら、この後はもっと余裕を無くしてもらうことになる。
「では……こちらの映像をご覧ください」
空中に浮かぶ無数の水の塊が、俺の呼びかけにより水面に映像を映す。その映像には、カジノへ出入りするアンディー教員の姿が映し出されている。周囲から動揺する声が上がった。
「なっ!!? こ、これは……」
アンディー教員は水球に映し出された映像に驚愕した。それはそうだろう。俺が噂話を裏付ける証拠を持ち提示するなど、夢にも思っていなかったのだ。この儚い容姿と病弱な立場というのは、大いに役に立ってくれている。
「た、たまに……一度くらい、そうだ……息抜きでカジノに行ったとしても問題はないだろう?!」
驚き固まるアンディー教員に代わり、トニーが映像に関して擁護する発言をした。まるで自分自身に言い聞かせるようだ。虚勢を張っているが、トニーの表情は動揺が現れている。己が尊敬するアンディー教員の知りたくない一面を垣間見たからだろう。だが、残念ながらこの程度で動じてもらっては困る。まだまだ序の口なのだ。
「慌てないでください。映像はこれだけではありません」
トニーの発言に釘を刺す。そして俺は水球に映る映像を変えた。その映像は数秒ごとに、別のものへと次々と変わる。その映像のどれもが、アンディー教員がカジノを出入りしている映像だ。
「な、なんで……」
「……っ!?」
アンディー教員は水球の映像に焦りを見せ、トニーは瞠目する。
「おやおや……服装が毎回違いますね? 季節も違います。これは……『一度くらい』や『息抜き』という範囲内ではありませんね。常習犯です」
俺はわざとらしく、映像から分かる情報を指摘した。映像の中のアンディー教員は、服装が異なり、それぞれ別の日であることが分かる。加えて、季節は春から冬まで、一年間を通しているのだ。トニーが先程、アンディー教員を庇う発言をしたが、この映像からそれは意味を成さない。
「……っ!? そ、それは……」
トニーは俺の言葉に、悔しそうな表情を浮かべる。そして何か言い訳を口にしようと、するが言い淀む。その反応になるのは仕方がない。アンディー教員がカジノに通っている証拠の映像を提示されたのだ。擁護するには厳しい状況である。
「この映像からアンディー教員が、カジノに通っていることは明白です。ですが、そうすると……『私は学園の教員だ! 噂話の様なことはしていない!』や『私がカジノなどに行くわけがないだろ!?』という先程の発言と食い違うのですが? それに関しては何か弁明がございますか? アンディー教員?」
俺は首を傾げると、アンディー教員に視線を向けた。




