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グランタニア王国
アルカディアの片隅に位置する魔法の小国――グランタニア。
豊かな森と澄み渡る湖に囲まれたその国は、古より受け継がれる結界魔法によって守られ、外界の戦火とは無縁の平穏を保っていた。
人間、エルフ、獣人――あらゆる種族が共に暮らし、争いのない日常が当たり前のように存在していた。
その国を治めるのは、国王ヴィクトール・オス・グランタニア。
威厳と温かさを併せ持つ王は、種族の垣根を越えた共存を実現した名君として、国民から深く敬愛されていた。
王妃セシリア・ラオ・グランタニアは、穏やかで慈愛に満ちた女性だった。
三人の娘たちを心から愛し、その成長を何よりの喜びとしている。
第一王女ヴィオレッタ・サラ・グランタニア。
第二王女エリノア・セル・グランタニア。そして第三王女アリシア・オサ・グランタニア。
とりわけアリシアは国民に最も愛される存在だった。
無垢な笑顔と優しさを持ちながらも、名門グランタニアの血を引きながら魔法を一切使えないという秘密を抱えている。
生まれつき左手の甲には痣があり、それを彼女は密かに気にしていた。
――しかし、その平和はあまりにも脆かった。




