魔王
エルフと人間、獣人など様々な種族が共存する世界――アルカディア。
その均衡は、ある日を境に崩れた。
空間の裂け目から現れたのは、“闇の群勢”と呼ばれる異形の存在。理性を持たず、ただ世界を侵食する災厄だった。
人々は恐怖に沈み、ようやく築かれた種族間の均衡は崩れかけていた。
そんな中、アルカディアに一人の男が現れる。
カイラス・ヴェイン。
彼は何者でもなかった。だが、剣を抜いた瞬間――闇を切り裂いた。
その戦いはやがて伝説となり、彼は“英雄”と呼ばれるようになる。
エルフも人間も種族の違いを越え、誰もが彼に希望を見た。アルカディアに、光が戻ったかのように思えた。
――しかし、それは長くは続かなかった。
闇の群勢との戦いが激化する中で、犠牲は増えていく。守るために選んだ戦いは、いつしか“誰かを切り捨てなければ救えない現実”へと変わっていった。
そして、ある決断が引き金となる。
人間は恐れた。エルフは疑った。
「彼こそが、災厄の元凶ではないのか」と。
英雄と呼ばれた男は、いつしか“異端”とされる存在へと変わっていく。信頼は崩れ、かつての仲間たちは次々と背を向けた。
最終的に彼は、戦場で一人になった。
救ったはずの世界に裏切られ、守ったはずの種族に拒絶されて。
その瞬間――何かが壊れた。
「……ならば全てを手に入れてやる」
カイラス・ヴェインは剣を握り直す。その影が、世界そのものを呑み込むように膨れ上がっていく。
闇に魂を売り、英雄は堕ちた。そして――“魔王”が生まれた。
アルカディアは、この日を境に歴史を分けることになる。光の英雄の終焉と、闇の支配者の誕生という二つの未来に。




