4 目指すもの
「で、どうすんの?マイは残るつもりだけど、こんな状態でやっていけるわけ?」
残ることに決めたらしい女子生徒、マリスイヤーは会長に面倒くさそうに聞いた。
「そうだな。確かに4人も抜けたのは痛いな。あいつらを慕っている奴らもいるし、もっと抜けるだろうな。」
寂しそうに会長はそう言うと、大きなため息をついた。
「感傷に浸っているとこ悪いけどさ、お前はどうしたいわけ?色々考えるのはそれを決めてからにしようよ。何の目標もないままだと、残っている奴らだってすぐに離れていくと思うけど?」
「それもそうだな・・・俺は、俺たち超能力者が、少しでも認められるようになりたい。化け物とかそういうのじゃなくて、普通に人間として。支配するされるとか、そういう考えをなくしたい。」
「ふーん。」
イリクは相槌をうった後、顎に手をやって考え込み始めた。
「君たちは、どうしたい?この、裏生徒会に何を求める?」
会長はイリクの様子を見た後、周りの生徒たちにそう聞いてきた。最初に答えたのは、副会長だ。
「力を自由に使いたいです。学校では力を使うことが禁止されています。」
そう、学校での能力の発動は禁止されている。これは、先生ではなく生徒会によって取り締まられていて、そのためにこの学校の生徒会は権力がある。
他の学校の雑用係的な存在とは違うのだ。生徒会は、能力使用者を現行犯で捕らえ、罰を与えることができる。軽いものなら口頭注意程度だが、最悪退学もありえる。
「マイは、会長に近いかな。普通に生活したいんだー。遠巻きに悪口言われるのとかうざいし。あ、でも自由に力を使えるのは嬉しいかも。移動が楽だし。」
そういえば、彼女はテレポーターと言っていた。自分の行きたい場所に一瞬で行ける能力だ。だが、彼女の場合は能力発動までに3秒かかると言っていた。能力も人それぞれで、同じような能力でもそれぞれの特徴があるのだ。
「・・・僕は、決まった意見に従うよ。何がしたいというよりは、仲間といたいだけだから。」
そう言ってライは、ジスターたちが出て言った扉を見た。
「仲間同士で争うなんて、悲しいことだ。」
「そうだな。だが、集まっていた目的・・・理想が違ったんだ。仕方がない。」
会長は扉の方を見た後、こちらを見て「君は?」と聞いてきた。
「私?うーん。」
ジスターたちの出て行った扉を見た。
彼らの言った、弱肉強食・・・はよくわからない。彼らの目指すべきものがどういうものか、いまいちよくわからなかった。ただ、現状に不満を持っていることだけはわかる。それは、私も同じ。いや、みんな同じなのだろう。そうじゃなければ、裏生徒会なんてできなかった。
でも、ライは仲間といたいという。なら、彼だけはきっと、満足しているのだろうな。
私は、どうしたいか。裏生徒会に何を求めるか?
「自由に力が使いたいんでしょ?リアはお転婆だったもんね。」
イリクの言葉に私は昔を思い出して・・・すぐに首を振った。
「私は、イリクと一緒にいられればいいよ。」
「え?」
驚くイリク。
ヒューと、誰かが口笛を吹く。
「お似合いのカップルですね。うらやましい限りです。」
副会長の言葉に驚き、私は否定した。
「私たち付き合ってないよ!?」
「「「え?」」」
会長、副会長、ライの言葉が重なった。マリスイヤーは、特に驚いた様子もなく「だよねー」とつぶやいた。
「えっと、なら君たちの関係は?」
「幼馴染だけど。」
「恋に発展しそうな関係ですね。」
「幼馴染とはこういうものなのか?」
「まー、距離感ちょっと近いよねー。」
「もうこの話やめない!?ウチは耐えられないよ!?」
焦ったようにイリクが言ったので、この話はやめて、本題に戻る。
「まとめると。自由に力が使える環境になって、悪感情なく接してもらえるようになって欲しい。で、いい?」
「そうだな。」
「はい。そもそも、自分の力を自由に使えないことがおかしいのです。」
「そうだよな。」
「マイもそれは思う。特にマイの力って、人に迷惑かけるものでもないし。」
「いや、かけるだろ。いきなり君が目の前に現れたら驚くぞ。」
「更衣室にいきなり来られても困る・・・」
ぽつりと言った私の発言に、マイ以外の全員がうなずいた。
「ひ、ひどい~」
「それで、考えたんだけど。とりあえず、どっちもすぐに実現するアイディアがない。ま、あるにはあるけど・・・」
「どっちなんだ?」
「あ、もしかして・・・」
「うん。リアの想像通り。でも、これはやめておいた方がいいでしょ?」
私はうなずいて返した。
イリクの言っているのは、自分の能力を使って、洗脳的なことをやろうということだと思う。周りに話さないだけで、彼はいろいろと能力を使ってできるのだ。だが、それを看破されたときが怖いので、その案は却下だ。
イリクに少年院に入って欲しくはないし、ばれれば超能力者全体の評判にかかわる。
「ま、この案は却下として。」
「どんな案なのか気になるのだが。」
「次の案として、超能力を身近に感じてもらい、役に立つ隣人と思ってもらうことを目的とした・・・便利屋をやるのはどうかな?」
「無視されたのは気に入らないが・・・便利屋か。」
「マイたちに、いいように使われろと?面倒。」
「僕たちに依頼する人がいるのか?」
「最初はいないと思うよ。いや、案外面白半分で来るかも・・・ま、やってみないことにはわからないけど。」
便利屋。困ったときに何でも助けてくれる存在といったとこかな。いい案だと思う。
人間、自分に利があるとわかれば好意を抱くものだし。
「うまく転べば、能力の使用も許可されるようになるかもね。」
「すぐには無理だろうけどね。だから、許可されるまでは、生徒会と鬼ごっこをしないといけないね。」
「悪いことをするわけではないが、能力使用の常習だと目を付けられるし、重い罰があるかもしれないな。」
「私はやります。難しく考える必要はありません。ようは逃げ切れればいいのです。」
「僕も仲間と一緒なら、どんな罰だって受ける。」
「え~マイは嫌かな。とりあえず、便利屋が軌道に乗るまでは、傍観させてもらうね。」
「・・・決まりだな。」
こうして、裏生徒会の活動に「便利屋」が加わった。




