3 対立
「さてと、では、自己紹介といこうか。」
そう言った裏の生徒会長は、辺りを見回した。私も同じように見回す。
空き教室に集められた私たちも含めた10名。仲間はもっといるということだが、とりあえず幹部的な存在である彼らに紹介するとのことだった。
「みんなも知っていると思うが、イリク・・・」
「あぁ。全員に言っておくけど、ウチのことはイリコって呼んでくれ。君付けもさん付けも必要ない。」
「だそうだ。イリコには、これから俺たちの頭になってもらう。だが、最終的な決定権は俺たち幹部にある。今までとそう変わることはないな。」
会長の言葉が終わると、一人の女子生徒が手を上げてきた。
「なんだ、副会長?」
「イリコの能力が知りたいです。とても高い能力を持つと聞いたことがあります。」
「あぁ・・・確かに聞いたことがあるが・・・」
「別に話してもいいよ。ウチの能力は人の心を読むって感じのものだ。結構一般的な能力だよね。」
「それは、人の心しか読めないのですか?同じような能力を持つ・・・サイコメトラーでしたっけ?その人は、物に宿った思念も読み取れると言っていましたが。」
「ウチはできない。ウチができるのは、人の心を読むことだけ。ものに宿った思念なんて感じたこともないね。ただ、力が強いと言われているのは、だいぶ深いところまで読めるからかな?」
会長は頭をひねって、深いところとはどういうことかと聞いた。
「うーん。ここに同じ能力の人いる?」
すっと一人の男子生徒が手を挙げた。彼は無言のまま手を挙げている。
「えーと、君はどんな感じで、どのように読み取る?」
男子生徒は手を下げると、少し考えこんでから口を開いた。
「まずは、相手の体のどこかに触れる。どこでもいい。服の上からでも可能だ。」
イリクはうなずいて続きを促した。
「それから、話を振るな。聞き出したい情報を引き出すには、相手にそのことを思い浮かべてもらう必要がある。」
「それそれ。ウチにはそれが必要ない。話なんてしなくても、相手から必要な情報を読み取れることができる。」
イリクのその言葉に、私とイリク以外のみんなが驚き、ざわついた。
会長は驚きを残したまま口を開いた。
「それは・・・いつでも好きな時に、どのような情報でも読み取れるということか?」
「うん。あー、ひいちゃった?」
冗談交じりに言うイリクだったが、なんだか私は心配になって、彼の袖をつかんだ。彼はそれに気づき、こちらへ大丈夫だとでもいうように微笑みかける。
「ま、安心してよ。ウチは必要がない限り能力は使わないし。」
「それは、必要があればそうするということか?」
先ほど話していた男子生徒のその言葉に、イリクははっきりと肯定した。
「・・・ま、それは僕も同じことだ。僕はライ。さっき言ったように、人の心を読める。あと思念もだ。これからよろしく。」
ライの言葉に会長は今何をしているか思い出したらしく、今度は私の紹介を始めた。
「彼女はツァリア。能力の詮索はして欲しくないということだ。なるべく触れないでやってくれ。」
「なるべくじゃなくて、絶対ね。」
「だそうだ。」
イリクの言葉に若干あきれたように生徒会長はイリクを見た。
私は遅れて、よろしくと言って頭を下げた。
一通りの紹介を終え今日の本題へと入る。
「まずは、活動内容だな。」
そう言った会長にイリクはダメ出しをする。
「違うね。まずはウチらの信念・・・何を目的とするかを確認するべきだよ。」
「信念・・・目的か。」
「会長は何を目指すの?ずいぶん情熱的に前は語ってくれたけどさ。」
会長はひとまず考えをまとめているようだったが、一人の男子生徒が立ち上がった。
「何悩んでんだ。俺たちは、能力至上主義・・・そうだろ?何の能力もない癖に俺たちをさげすんで、化け物と見下している奴らを支配する。つまり、あるべき姿に戻すってやつだ!」
そう言った彼は、確かジスターという名前だったか。荒々しい口調が合う、リーゼントの男・・・リーゼント!?よく見れば彼はリーゼントだ。よく学校に入れたな。
ジスターの隣にいた金髪、バルもうなずきながら言った。
「弱肉強食ってやつだぜ、俺たちは古き良き時代に戻るべきだぜ。」
それは、髪型から変えろということか?私もおさげか、おかっぱにしろって言われるのかな?
「リア、変なこと考えてない?」
「え、ばれた?まさか読んだの?」
「読まなくたってわかるよ。」
そんなに顔に出ていたのか。気を付けないと。
「俺は、そうは考えていない。」
会長の言葉に、辺りは一瞬鎮まったが、すぐにジスターが叫んだ。
「それは、どういうことだよ。かいちょー。」
バルも強いまなざしで会長を見る。他にも2、3人同じように見ている者がいた。
「能力がなくたって、俺たちと同じ人間だ。それを支配するなんて、間違っていると思う。」
「なら、何の能力もないやつらに支配されろってか!?それこそ馬鹿馬鹿しい!だいたい、あいつらの方が、俺たちを同じ人間なんて思っていないんだよ!」
「そういうわけじゃない。ただ、俺たちは認められる努力をするべきだと思う。今まで、ただあいつらが悪い、あいつらが身の程知らずなんだ、と言って遠ざけることしかしていなかった。」
「そんなの、遠ざけるしかねーじゃねーか!俺たちがどれだけ化け物扱いされて、それを理由にどんな嫌がらせをされたか・・・大人も頼りにならねー・・・俺たちは俺たちしかいなかったじゃないか!それを忘れたのか!」
忘れたわけじゃないと会長は頭を振ったけど、ジスターは納得せずに、話そうとする会長の胸倉をつかみ投げ飛ばした。
投げ飛ばされた会長は、壁に思いっきりたたきつけられるかと思ったが、そうはならなかった。会長の体は壁にぶつかる寸前に動きを止め、そのまま床に落ちた。
「おやめなさい。」
「ふくかいちょー・・・お前もそいつの味方だっていうのか?」
「すべてに納得がいくわけではありませんが、まずは最後まで聞きましょう。」
「けっ。構ってられるか。おい、行くぞ!」
そう言うとジスターは、バルと共に出て行ってしまった。それに続いて4名ほど教室を出ていく。
「会長、ご無事ですか?」
「あぁ。それにしても減ったな。」
教室には、私とイリク、会長と副会長、ライ、最後に一人の女子生徒が残るのみとなった。たった数分で半分の幹部がいなくなってしまった。




