↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/32

2 裏生徒会



 下校時間。まだホームルームが終わってから時間が経っていないためか、友達同士で話をする者が多く教室はにぎやかだ。

 一層にぎやかなのは、窓際の一番前の席。私の列の先頭だ。


「イリコ君、今日みんなでカラオケ行くんだけど、イリコ君も一緒に行かない?」


 甘ったるい声で一人の女子生徒がイリクに声をかける。

 今日も幼馴染は大変だなと、他人事に思いながら、私は勉強道具をしまう。


「よくあんなのに声かけるよな。」

「危機感ってものがねーのかよ、あいつら。」


 すぐ横の席でそんな話が聞こえた。これは、イリクの能力のことを言っているのだろう。昨日のような周囲の認識をいじる以外にも、人の心を読めるという能力をイリクは持っている。その能力は高く、それゆえに恐れられ、このように言われてしまうのだ。

 誰だって、自分の心の内を無断で見られるのは怖いはずだ。だが、イリクは勝手にそんなことをしたりしない。

 わずかにいら立つ私の肩に手が置かれた。


「リア、支度は終わった?」

「うん。」

「なら、行こうか。」


 私はカバンを持って、先に行くイリクの後をついていった。その時、また話声が聞こえた。


「あれ、絶対読まれたよな。」

「あぁ、肩にわざわざ触れていたしな。よくあんなのと一緒にいられること。」

「心が読めれば、女の扱いだってお手の物なんじゃないか。」

「うわー。うらやましい限りだな。」


「リア。」


 名前を呼ぶイリクに頷き、私は教室を出た。


「ああいうのは、一定数いるな。尊敬されたり、怖がられたり。全くエスパーも楽じゃないよな。」

「・・・イリク。」

「いつものことだろ。あぁ、それとも・・・本当に読まれたと思った?」


 冗談交じりに言ったイリクは、笑っていなかった。私は、そんなイリクの顔を見て、首を振り、彼の裾を掴んだ。


「イリクが必要もないのに心を読むわけないよ。それに、見たいなら見れば?別に隠すこともないしね。」

「・・・だよなー。うん、ありがとう。」


 イリクは笑って、私も笑い返した。


「ちょっといいかな、イリク君。」


 声をかけられ、そちらを見ると同学年の男子生徒が近づいてきた。


「ん、なんだ?あーあと、俺のことはイリコでいい。みんなそう呼んでいるし。」

「わかった。イリコ君。ちょっと君に話があって・・・来てもらえないだろうか?」

「話?んー」


 ちらっと私を見たイリクは、すぐに視線を戻すと、私と一緒ならいいと言った。


「彼女か。・・・彼女なら大丈夫だろう。こっちに来てくれるか。」

「わかった。いこう、リア。」

「うん。」


 空き教室に連れてこられた私たちは、立ったまま本題に入ることになった。


「実は、俺たちの集まりに参加して欲しいと思っている。俺たちは、『裏生徒会』だ。」

「裏生徒会・・・なるほどね。」


 まさか、本当にあるとは思っていなかったその名に驚く。ただの噂話だと思っていた。その噂話とは、超能力者による超能力者のための組織がある。その名を裏生徒会という。現状の超能力者への待遇に不満を持ち、能力至上主義らしい。


「名前は聞いたことがあるようだな。俺たちは、今の超能力者の待遇に不満を持っている。能力の使用制限、大会などの出場権利のはく奪。細かいことを言えば、同じ人間なのに化け物のように扱われたりとかな。覚えはあるだろ?」


 覚えがある。それもついさきほど。


「確かにそうだね。で、お前たちはどういう活動をするわけ?」

「・・・それがな。俺たちの組織は、特に活動という活動を行っていないんだ。」

「うん、そうだと思った。今までお前たちが何かをしたって話は聞いたことがないからね。」

「それで、イリコ君に仲間になってもらいたいのだ。君は、能力だけでなく頭もいいし、ぜひ活動内容を考えてもらいたい。俺たちも3年生、今年が最後のチャンスだ。このまま何もしないままでは、集まった意味もない。」

「よく理解したよ。そうだね、最後のチャンスだね・・・頑張ってくれ。」


 イリクはそう言うと、話は終わったとでもいうように扉に向かった。


「ま、待ってくれ!お願いだ。俺たちの仲間に入ってくれ。君も俺たちと同じ超能力者で、不満もあるはずだ。それは、社会に出たって変わらない。」

 確かに、学校とは小さな社会。学校ですらこうなのだから、本当の社会に出たって変わらないだろう。


「だからだよ。」


 イリクは振り返ると冷めきった顔で男子生徒を見た。


「何も、変わらない。ウチらが動こうが動かまいが、何も変わることなんてないよ。どんな活動をしようが・・・たとえ、この学校の意識を変えたとして、社会の意識が変わるわけじゃない。」


 男子生徒はその言葉に首を振った。


「結果を出すだけに意味があるわけじゃない。その過程も大事だと俺は思う。たとえ、結果が出せなくても、同じ目標に向かって仲間たちと共に努力した。その過程が、今後社会に出る俺たちの心を少しでも支えてくれると、俺は思う。」

「思うって・・・お前が思っているだけじゃないか。」


 その言葉に男子生徒は黙り込んで、悔しそうに肯定した。

 イリクは手を顎に持って行った。彼が考え込むときはいつもこうだ。考えるということは、彼にとってこの誘いに興味を持ったということだろう。


 そんなイリクが私をちらりと見た。私も彼を見つめ返して、どうするのかと聞いた。


「そうだな・・・仲間になってもいいが、条件がある。」


 その言葉に男子生徒は目を輝かせた。


「何でも言ってくれ。君がトップになりたいのならその座も譲ろう。」


 今の言葉だと、どうやら彼はトップのようだった。その言葉を聞いたイリクはすごく嫌そうな顔をして、やめてくれと言った。


「ウチはトップにならない。それも条件だ。ウチはアドバイザー・・・ま、裏生徒会のブレインって感じでいい。それで、あと条件が2つある。」

「わかった。君の実力は誰もが認めるが、いきなりトップだと荒れるかもしれないから、その方が助かる。」

「だろうね。で、もう一人仲間に入れて欲しい。」

「別に構わないが・・・能力者か?能力者じゃないと、少し居心地が悪いかもしれないが。」

「能力者だ。そこにいるリア・・・ツァリアだ。」


 いきなり名前を呼ばれた私は目を見開いた。名前を呼ばれたことではなく、超能力者であることをばらされたからだ。


「イリクっ!」

「君も能力者だったのか。全く知らなかった。」


 それはそうだろう。隠していたのだから。超能力者がつらい思いをしているのは、イリクやあの生徒会長・・・リディと一緒にいたから知っている。


「リア。どうせ調べればわかることだろ?それで、最後の条件だが、彼女の能力について詮索しないで欲しい。」

「なるほど。わかった。ただ、その条件だと、彼女が非能力者だと思う者もいて、居心地は悪いと思うが・・・」


 男子生徒は私を見て、心配そうな顔をして、大丈夫かと聞いてきた。


「そんなこと気にしないけど・・・イリクには何か考えがあるの?」


 私の問いに、イリクは笑顔を浮かべて頷いた。それなら仕方がないと、何も反論はしなかった。


「決まりだ。今日からよろしく・・・トール。」

「あ、あぁ。よろしく、イリコ君。俺の名前知ってたんだな。」

「呼び捨てで構わない。」

「そうか。なら、イリコ、それにツァリアさん。これからよろしく。」

「うん、よろしく。私もリアで・・・」

「それはだめだから。」


 私がリアでいいというのを遮ったイリクは、なぜか怒っているようだった。


「えーと・・・ま、よろしく。ツァリアさん。」

「うん。」


こうして、私たちは「裏生徒会」に入ることとなった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。