1 幼馴染
楽しんでいただければ、幸いです
あなたは、何か不思議な力を持っていたりする?
人の心が読めたり、手を使わずに物を動かせたり、思い通りの場所へと一瞬で行ける。そういう力を持っている?
そんな力を持った人たちのことを、この世界では超能力者、エスパーなどと呼ぶ。魔法使いとかではないのが、私には不思議。超能力者と言った方が、まだ科学的に感じるからか?
私がいるギフト高校は、そんな超能力者が一般の高校より多く在籍している、超能力者に多少理解があると思われる学校だ。現在の生徒会長も、人の心が読める能力を持っている超能力者だ。
「リア、久しぶりだな。」
そう声をかけたのは、その生徒会長。新緑のようなさわやかな緑の髪をして、私と同じ紫色の瞳をしている。自信に満ちたその表情は、昔と違って上に立つものとして安心できるものだ。彼とは幼馴染なので、昔の彼を私は知っている。
彼は昔、能力のせいで人間不信とまでなっていたが、今はその面影はない。
「うん、そうだね。同じ学校にいるのになかなか会わないからね。」
私はそっと目をそらして、彼に答えた。
「リア・・・」
少し遠慮がちに彼は私の愛称を口にした。私の本名はツァリア。親しいものは私をリアと呼ぶ。青い長い髪に、紫の瞳。眼鏡をかけているが、シンプルなもので、飾りっけは全くない。客観的に自分を見ている場合ではなかった。
私は、辺りをそっと見回す。目的の人物はすぐに見つかったが、数名の女子生徒に囲まれていた。
女子生徒の間から、落ち着いた茶色い髪と、ルビーのような赤い瞳が見えた。こちらも幼馴染で、イリクという。みんなにはイリコと呼ぶように言っているが、私は、本名で呼んでいることを許されているので、そう呼んでいる。
「リア、少しいいか?」
生徒会長・・・リディングは、私に遠慮がちに言う。まずい、逃げられない。断ればいいのだが、別に彼が何か悪いことをしたわけでもないのに、断るのは悪い気がした。
「・・・」
「リアっ!」
どうしたものかと迷っていたら、先ほど女子生徒に囲まれていたイリクが、こちらに駆けてきた。一つに縛られた長い髪がしっぽのように左右に揺れている。彼が走っている姿を見るのは珍しい。
「待たせてごめん。」
「ううん。」
今は下校時間で、私はいつもイリクと帰っているのだ。
「えっと、リディ・・・ちょっと今日は予定があって急いでいるんだ。リアに用があるなら、また今度の機会にしてもらっていいか?」
「あぁ。構わない。2人共、気をつけてな。」
少々納得していないようだが、リディは引き下がってくれた。
「じゃな。」
「さようなら。」
片手をリディに挙げて挨拶するイリクに続いて、少し頭を下げて私も挨拶をする。リディは「あぁ。」と声にならない声で返事をした。
学校の門をくぐり、いつもの道を歩き始めると、私はイリクの袖を軽く引っ張った。
「助かったよ、イリク。ありがとう。」
「気にするな。ウチがお前のことをずっと守ってやるって、約束したんだから。」
そういってイリクはニカッと笑い、私の頭に手を置いた。
「え、ちょっと、イリコ君が・・・」
「な、誰よあの女・・・」
少し離れているところで、女子生徒の悲鳴にも似た声が聞こえた。イリクにも聞こえたようで、顔をしかめて謝ってきた。
「忘れてた・・・」
そう言ってイリクは急ぎ足で、次の角の先へと消えていった。
私はそのまま何事もなかったように、イリクの曲がった角を曲がる。そこには髪を下ろしたイリクが立っていた。
「おまたせ~」
「いつ見ても思うけど、これだけでイリクのことが周りには女子に見えるってホントなの?」
「まだ疑ってんの?なら、試してあげようか?」
そういうとイリクは突然私を抱きしめた。あまりに突然のことで、私の思考は停止した。
「え、何あれ・・・」
「へー・・・共学にもいるんだね。ああいうのは女子校限定かと思った。」
通りすがりの女子高生たちが、こちらを見てそんなことを言った。ああいうのって・・・
「ほら、わかっただろう。どうみてもウチのことを女の子だと思っているよね。」
抱きしめられたまま話し出すイリク。はっとして、手をイリクの胸板にあてて力を入れ突き放した。簡単に外れた腕から逃れると、私はいつの間にか止めていた息を吐きだした。
「な、何をするの!?」
「ん?確認かな。ウチがしっかり女の子だって、周りに認識されているかどうかのね。」
「な、ほ、他に方法はなかったの?」
「ないこともないけど、これが一番手っ取り早いから、なーんてね。さ、行こうか。」
そう言うと、イリクはそのまま歩き出した。私と同じくらい長い髪。後姿は女性に見えなくも・・・いや、ないない。背格好が男の子だし。
そんな彼がなぜ女性に見えるかと言うと、彼の能力だ。彼は、周囲の認識を多少いじることができるらしい。ただ、彼の能力だけでは、男性を女性と認識させることは難しく、髪を下ろすことでそれを補っている。髪の長い男性はいるが、一般的でない。髪が長いのは女性という思い込みを利用しているって言っていたな。
ただ、この能力はイリクをまじまじ見れば、すぐに解けてしまう簡単なもの。イリクをただの通行人、自身に関係ないものとして見るから、周りには女性の姿に見えるのだ。
「どうかした?」
突っ立ったままの私を、振り返ったイリクが見て声をかけた。
「何でもない。今日はどうする?」
「そうだな・・・家で宿題でもするか?今日の数学で出たプリント結構多かったし。」
「そうだね。うん、そうしよう。家に帰ってもやる気でないと思うし。」
そして、私たちはイリクの家に向かった。




