5 便利屋
困りごとはありませんか?
友達に頼むのも気が引けますよね。
なら、裏生徒会をお使いください。
超能力者の集まりである裏生徒会は、あなたの味方です。
ご依頼はこちらまで 裏生徒会長 トール
「なんか、読むたびに思うけど・・・新興宗教の勧誘?」
「え?そんなこと思ってたの、リア。ウチは、精神病院の案内かと思ってた。」
「なら君たちが考えてくれよ!これ書くのに3時間かかったんだぞ!?」
いつもの空き教室で、裏生徒会のチラシを3人で囲み話し合っていた。便利屋としての活動は?と聞かれても、依頼がなければ活動はできない。
「うーん・・・チラシも問題あると思うけど、実際困ってる人っていないんじゃ・・・」
「さりげなく俺をディスらないでくれ!」
「いや、困ってる人はいる。例えば・・・ほら、あそこに教頭がいるでしょ?」
イリクが指さす方には、確かに教頭がいた。中庭でなにやら探しているようで、草むらをかき分けたり、花壇の中に入り込んだりしている。花壇の中に入ってはダメだろう。
「あれ?あの教頭・・・いつもと何か違うな。なんだろう、何か物足りない気が・・・」
会長は不思議そうに教頭を見ている。私も会長にならって、教頭をよく見ると、確かに何かもの足りなかった。
「本当、何かが足りない気がする。」
「これでしょ。」
そう言ってイリクは、ふさふさとした黒い毛の塊のようなものを・・・
「って、カツラ!?」
「ま、まさか、教頭のか!?」
「うん。」
「なんてことするの!すぐに返さないと。いや、ここにあるのがばれるのはまずいよね。」
「あぁ。間違いなく教頭が怒り狂う。なんていうブツを持ち込んでくれたんだ、イリコ!」
イリクは、落ち着けと私たちにお茶を注いで渡した。渡されたお茶は紅茶で、甘いフルーツの香りがして癒された。
「良い匂い。これって、ピーチ?」
「あぁそうだ。こういうの好きだよね?」
「うん。特にピーチが好き。ストロベリーも捨てがたいけどね。」
「ツァリアさん、騙されるな!何も問題は解決してないぞ!」
「はっ。そうそう、どうするの、イリク?」
「うーん・・・ここは売り込みに行くのがいいと思う。ということで、トール、ゴー!」
会長はすごく嫌そうな顔をして首を横に振った。
「お前なぁ。ウチが作ってやったチャンスを逃す気か?このままだと、本当に依頼なんて来ないぞ。依頼が来なければ、自由に力を使うことも、いい感情を抱いてもらうこともできないよ?」
「いや、だからって・・・教頭のカツラを盗むなよ。」
「そうだよ、イリク。さすがにそれはないと思うよ。」
「ちょっと待って。ウチが教頭のカツラを盗んだなんていつ言った?あんなおっさんのカツラをウチが好んで盗むと思うのか!?」
「うん。必要とあれば盗むよね。」
「イリコ。俺も行くから一緒に謝ろう。」
「だから違うって。これはジスターの一味が持っていたんだよ。」
「は?イリコ・・・いくらなんでもその言い訳は通用しないぞ。」
「おい待て。ウチはジスターより信用がないのか!?本当だよ。なんかあいつらに絡まれてさ・・・」
30分前のこと・・・
ウチは、この空き教室に行く前に、日直だったから日誌を担任に渡すため、教員室へと向かっていた。
「おい、そこのロン毛。」
「え、それって、もしかしなくてもウチのこと?」
声をかけられたので立ち止まっていると、近くの教室の扉が開かれ、バルが入るようにウチをうながした。
「ウチ、暇じゃないんだけど。」
「よく言うぜ。ま、そんなに時間はとらせないぜ。」
仕方なくウチは教室に入ると、そこにはバルの他に2人の見知らぬ男子生徒がいた。
「これはどういうつもりだ。」
乱暴に押し付けられた紙を見てみれば、会長の書いた精神病院の案内・・・ウチらが今囲んでいるこのチラシがあった。
「ん?どこか読めないところでもある?難しい漢字はなかったと思うけど・・・」
「俺らを馬鹿にしているのか!裏生徒会の名をかたって、こんな媚を売るような真似するなんて、どう落とし前を付けるつもりだ!?」
「いや、ウチら裏生徒会だし。媚を売っているつもりもないよ?」
「ふざけるな!」
ドンッと壁際にいたウチは、嬉しくもない壁ドンをされた。さて、どうしたものかと考えていると、突然教室の扉が開かれ、生徒会長のリディが入ってきた。
「イリク・・・これは、何の騒ぎだ?」
ウチの名前を呼んだものの、すぐに視線をウチから外し、リディはバルたちをにらみつけた。
「ちっ。邪魔が入ったな。いくぞ、お前ら。」
教室を出て行こうとするバルだが、その腕をリディは掴み、「何をしていた?」と聞いた。
「離せよっ!」
腕を振りほどいたバルは、そのまま教室から出て行き、他の2人もそれに続いた。しかし、
2人のうち最後に出て行くことになった男の胸倉をリディは掴んだ。
「2度とこいつに手を出すな。それとこれはもらっておく。」
そして、男の懐から黒い何かを取り出したリディは、男を離した。男は舌打ちして、教室から出て行った。
「ま、ありがとな、リディ。それなんだ?」
「教頭のカツラだ。まるでいたずら小僧だな。教頭に返してくる。」
「ふーん・・・あっ!リディ、それウチが返しておくよ。お前何かと忙しいだろ?」
「あぁ、まぁ。それなりに忙しいが、大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫、ウチを誰だと思ってるんだよ?」
ウチはそう言って、リディからカツラを受け取り、その場を去った。
「うん。なんでカツラを持っているかは分かったけど・・・なんですぐに返さなかったの?」
「だから、この機会に、実績を残すんだよ。まず、教頭に話しかけて、手伝って、このカツラを渡す。依頼を受ける前から、成功を約束されているんだよ?絶対に失敗しないから、初めての依頼として完璧だね。」
「それはそうだけどさ。もう、普通に返さない?」
「なんでそんなことを言うの?せっかくの機会だっていうのに・・・」
「イリコ、見ろ。」
会長の指さす方向には、教頭の背中が。どこか哀愁漂うその姿は、私たちの胸を苦しめた。
「ごめん。ウチが悪かったよ。急いで返してくる。」
そう言って、イリクは走って教室を出て行った。
「俺たち、悪いことは絶対できないよな。」
「うん、そうだね。」
「男だけど、聖女召喚された」「見世物少女の逆転転移記」も連載中です!




