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下から三番目の恋愛活動  作者: 兵衛 清彦
第一章「霜月沙織と野咲和」
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「あら、奇遇ね、二人とも」

 汐織は、ツンと澄ました態度で振る舞い、二人に声をかけた。

 「うっ、汐織…」

 春明は苦虫を噛み潰したような顔になる。

 和は明るく、いつもどおりに春明に駆け寄って、

「春明くん、檸檬ちゃん、一緒に座ってもいいかな?」

春明は和に振り向くと、汐織に対する表情から一変して、緩み切った顔で和に答えた。

「もちろんだよ」と言って、席を詰める。

檸檬もこくこくと何度も頷いて、席を詰めた。

春明の隣には和、檸檬の隣には汐織が座った。

汐織と和は、ドリンクバーを頼んで、それぞれジュースを持ってきた。

汐織がジュースを一口飲んで、それから春明に話しかけた。

「二人とも、すごく盛り上がってたみたいだけど、なんの話をしていたのかしら?」

春明は嫌々といった風に答える。

「別に…ゲームの話だよ…」

檸檬も話を合わせるように、こくこくと頷く。

和が身を乗り出して口を挟む。

「和の家にある、ゲームのことでしょ?」

「そうだよ。この間、堂島さんにそのゲームの攻略本を借りてね。それで俺も俄然興味が湧いてきてさ、堂島さんに色々と聞いてたんだよ」

「そうなんだぁ、また今度、和の家に皆集まってゲームしようねぇ」

春明は一瞬ちらりと汐織を見てから答えた。

「そうだね…また今度ね」

四人の間に沈黙が満ちる。周りの喧騒だけが引っ切り無しに聞こえる。

春明と汐織は口を固く一文字に結んで、自分から話す気配はまったくない。

和は不安そうにきょろきょろと二人を交互に見る。

檸檬は黙ってジュースを飲んでいる。視線をちらちらと二人に向けている。

しばらくしてから、和が沈黙を破る。

上擦った調子の声だった。

「あ、あのさ、今度の土曜日また家に集まらない?」

春明と汐織は、黙ったままそっぽを向いている。

和は助けを求めるような視線を檸檬に送る。

檸檬もそれに気づいて何度も頷いて同意する。

「…私も、またみんなで集まりたい…」

檸檬は春明に向き直って、

「…春明くんとゲームがしたい…」と身を乗り出して念を押した。

檸檬の迫力に春明はたじろいだ。

「で、でもなぁ…」

「…ね、春明くん…対戦、しよう…」

春明は押し切られて頷く。

「う、うん。いいよ。俺も対戦したいと思ってたし…」

汐織がふんっと鼻を鳴らす。

そんな檸檬と春明の様子が面白くなかった。

今度は和が汐織に話しかける。

「ね、汐織ちゃん、和ね、汐織ちゃんに料理教えてもらいたいと思ってたんだ」

「ふぅん…」と汐織は努めて気の無い風に答えた。

「お願い、ね?和、料理のレパートリー増やしたいの」

和はテーブルに身を乗り出して汐織をのぞき込む。

「また二人で料理したいな…」

和はうるうると瞳を潤ませている。

「わ、わかったわ…」

和はぱあっと表情を明るくして叫ぶ。

「やったぁ!」

和はぱたぱたと脚を動かしている。

ふと、春明と汐織の視線が交わる。

二人はぷいっと顔を反らした。

汐織が窓の外を見ながら話し始めた。

「春明と堂島さん、最近仲がいいみたいだけど…」

春明は飲んでいたジュースでむせた。

「ごほっごほっ、急になんだよ…」

檸檬は頬をほんのり赤くして俯いている。

「最近よく一緒にいるみたいだし、こうやって二人で出かけてるみたいだし」

「別に、友達として普通だろ。そんなことぐらい…」

「そうかしらね…」

汐織は含みを持たせて言った。

春明はそんな汐織の態度に、少し腹が立った。

「なんだよ…それ」

場が険悪な空気に包まれる。

汐織は攻めるような調子で話し始める。

「だって放課後、和の誘いを断ったのに、二人でお茶なんかしてさ」

「なに突っかかってんだよ、お前」

「別に突っかかってなんかいないわよ」

あわてて和が間に入る。

「二人ともやめよう、ね?和、全然気にしていないから」

和が間に入ったので二人は口を噤んで互いにそっぽを向く。

和と檸檬が目を合わせて頷く。

和が立ち上がって汐織に話しかける。

「それじゃ、汐織ちゃん、もう行こっか」

和が汐織の手を引っ張る。

「わわ、引っ張らなくても行くわよ」

「それじゃあね、二人とも」

汐織は和に引っ張られて、レストランを後にした。


レストランに残った、春明と檸檬は汐織と和が出て行ったのを確認すると、長いため息を吐いた。

「はぁ、また口喧嘩しちまったよ…」

「…ごめんなさい。私と一緒にいたせいで誤解されて…」

春明は慌てて手を振る。

「違うよ、堂島さんは悪くないよ。あいつが勝手に突っかかってきただけだから」

 「…ありがとう、春明くん」

 「そんな改まって言わなくても」

 春明は照れて頭をぽりぽりと掻く。

「それにしても」と春明は真面目な顔つきになる。

「それにしても、土曜日、和の家に行くって約束しちゃったけど…。大丈夫かな」

檸檬が両手を握りしめて、胸の前にかざす。

「…二人で話し合うチャンス」

春明は不安そうに首を傾げる。

「うまくいくかなぁ…。さっきだって、些細な事から喧嘩になったし」

「大丈夫、二人きりになれば、きっと落ち着いて話し合えるはず」

「そうかなぁ…」

「私と和も協力、するから…」

春明は檸檬の熱意に押されて、なんとか決心した。

「…うん、わかった。今度の土曜日、ちゃんと話し合ってみるよ」

檸檬は春明の返事を聞くと、ほっと胸をなで下ろした。

 「和も、汐織さんに色々と働きかてるから…きっと大丈夫」

 「そっか…ありがとう」

ふと、春明は携帯で時間を確認する。

「そろそろ家が心配だから帰るよ。母さん一人で参ってるかもしれないし」

「…私も帰る」

二人は立ち上がって、会計を済ます。

「それじゃあ、また明日」

「…また…ね」

レストランの前で二人は別れた。



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