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放課後、帰りの支度をしている春明に、和が駆け寄る。
「春明くん、今日はバイト?」
「いや、休みだけど…」
春明の返事も聞くと、和はぱあっと表情を明るくした。
「それじゃあさ、和の家に来ない?」
「あぁ…」
と春明は言いよどむ。
「ごめん、今日はいいかな…」
春明はそう言って鞄を背負う。
「じゃあ、俺もう帰るから」
そう言うと、春明は教室を出て行った。
和はさっきの明るい顔から一気に変わって暗い表情でいる。
和は春明がいなくなると、汐織の席に向かった。
「汐織ちゃん、今日、家に来ない?ほら相談することもあるだろうし」
「そう…ね、いいわよ」
「やったぁ、それじゃあ、檸檬ちゃんも誘おう」
和が檸檬の席を見るとそこには誰も座っていなかった。
「あれ?檸檬ちゃんいないなぁ。さっきまではいたのに」
「なにか用事でもあったんじゃない」
汐織は気のなさそうな調子で言った。
「うぅん、残念…それじゃ帰ろっか」
「そうね、行きましょう」
二人は立ち上がって鞄を背負って、教室を後にした
帰り道、春明はぼうっと空を見上げながら帰っていた。
――どうしたもんかな…。
春明の頭の中に、和の悲しそうな表情が浮かぶ。
早く、仲直りしなくては…。
でも、どうすればいいのだろうか。
謝るのは簡単だ。それ以外の方法を探さなくては。
春明が悶々と考えていると、
「…春明くん」
と、誰かが耳元でささやいた。
「うわっ!」
春明は驚いて声を上げた。
春明がバッと、後ろを振り向くと、そこには檸檬が立っていた。
春明はそれを確認すると胸をほっとなで下ろした。
「なんだ、堂島さんか…驚かさないでよ」
「…ごめんなさい」
檸檬はしゅんとなって答えた。
「あぁ、ごめんごめん。そこまで気にしないでいいよ」
檸檬はこくりと頷いて、いつものポーカーフェイスになった。
「…一緒に帰って…いい?」
「もちろんだよ、いいよ」
二人は農道を並んで歩き始めた。
二人並ぶと檸檬の身長の高さげ目立った。
二人はしばらくの間、黙って歩いていたが、ふいと檸檬が口を開く。
「…汐織さんのこと、聞いてもいい?」
汐織は不安そうな目で春明をのぞき込む。
春明は少し考えてから答える。
「いいよ。俺もちょうどその事を考えていたんだ」
二人は、ショッピングモールの近くまで来ていた、
「あ、そうだ」
春明がショッピングモールを指さしながら言う。
「どうせなら、ショッピングモールにあるレストランで話さない?」
檸檬は春明の提案にこくこくと頷いた。
「じゃあ、行こうか」
二人はレストランへと向かった。
席に着いた二人はジュースを飲みながら話し始める。
「春明くん…汐織さんとはまだ喧嘩しているの?」
「あぁ、そんな感じかな…」
「…そう。やっぱり私が間に入ったほうが…」
「いや、それはいいよ。その内決心がついたら、あいつと話し合うからさ」
「…ならいいけど。いつまでも喧嘩してたら駄目…」
「うん、わかってるよ…」
二人は話がひと段落したので、ジュースを飲んで一息いれる。
「そういえばさ、ゲームの事で聞きたいことがあたったんだけど」
檸檬が表情を変える。
爛々と瞳を輝かせて、身を乗り出す。
その後、二人はゲームの話で盛り上がった。
和と汐織が、夕方の農道を並んで歩いている。
二人は他愛のない話をして、笑い合っている。
しばらく歩いていると、二人はショッピングモールの前まで来た。
ショッピングモールを見て、和が提案する。
「そうだ、ちょっとレストランでお茶しない?」
「いいわね、ちょうど喉が渇いてたのよ」
二人は喋りながら、レストランの前まで来る。
ふと和がレストランのある一席を指さして叫んだ。
「あっ、あれ春明くんと檸檬ちゃんじゃない?」
汐織も和の指す方を向く。
そこには楽しそうに会話している、春明と檸檬の姿があった。
「あ、ほんとだ…楽しそうに話しちゃって…」
――何よあいつ、落ち込んでいるかと心配してたのに…。
汐織は膨れ面になって心の中で愚痴った。
そんな汐織の心情を知らず、和がはしゃぎながら汐織をひっぱる。
「汐織ちゃん、二人と一緒の席に座ろうか」
汐織は少し考えてから答えた。
「…そうね、そうしましょう」
二人はレストランへと入っていった。




