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土曜日、昼。天気はこれ以上ないほど晴れ渡っていた。
春明と汐織は待ち合わせ場所のショッピングモールに来ていた。
「遅いわね、和さんと堂島さん」
少し苛立たしげに汐織が言った。
「どうしたんだろうね」
と、春明が言った瞬間、遠くから声が響いてきた。
「春明くぅん、汐織ちゃぁん」
和が手を振りながら駆けてきた。
和の私服はふりふりの女の子らしい可愛らしいワンピースだった。
「ごめんなさい、檸檬ちゃんったら服選ぶのにやたら時間をかけて…」
春明と汐織は和の後ろから歩いてくる檸檬に視線を注いだ。
檸檬の私服は、シンプルなカジュアルだった。細見のジーンズに青いスニーカー、真っ新なTシャツに、レザーのショルダーバック。それらが檸檬のスタイルに相まって、モデルのようだった。
檸檬は二人の視線に気が付くと、顔を赤らめ俯いた。
「…おしゃれだね、堂島さん」
春明が見つめながら漏らした。
「堂島さん、かっこいい」
汐織は頬をほんのり赤らめて言った。
檸檬のとなりにいる和がぷぅっと頬を膨らました。
「もぉ、二人とも檸檬ちゃんのことばっかり。和はどう?」
と、和はひらりと体を回して、二人に感想を求めた。
「あぁ、女の子らしくてすごく可愛いよ」
「えぇ、とても似合ってるわよ」
春明と汐織は微笑みながら言った。
「えへへ、嬉しいな」
和はにっこりと笑いながらぴょんぴょんと跳ねまわった。
「それじゃあね、買い出しに行こうね」
和は春明の手を掴むと引っ張って、スーパーへと駆けていく。
「わっ、慌てないでいいよ、ちゃんと行くから」
春明はよたよたと引っ張られながら苦笑いでいる。
「しょうがないわね」
「しょうがないな…」
と、汐織と檸檬の声が重なった。
汐織は檸檬と顔を見合わせてくすくすと笑い合った。二人は和と春明の後に続いて、スーパーへと向かって行った。
スーパーで買い物を終えた、四人は和のマンションへと向かっていた。
「お、重い…」
春明は両手に、ぱんぱんに膨らんだスーパー袋を持って歩いていた。
春明の少し先を汐織と和は談笑しながら歩いている。
春明がひぃひぃ言いながら歩いていると、すぐ横から声がした。
檸檬が長い腕をすっと伸ばして春明に話しかけた。
「…片方…持とうか」
檸檬は鼻の頭をぽりぽり掻きながら春明に言った。
春明は突然の申し出に、一瞬面食らったが、すぐに返事をした。
「あ、ありがとう。ホントに重くてさ。助かるよ」
春明は檸檬に片方の荷物を渡した。
「…ん、本当に重いな…」
春明と檸檬は顔を見合わせて苦笑いした。
二人はよたよたと並んで歩き始めた。
夕方の農道、二人の間に沈黙が続く。
春明は、自ら話を切り出した。
「堂島さんてさ、いつ頃から和と仲がいいの?」
「…一年生、入学してすぐ」
「へぇ、切っ掛けはなんだったの?」
「登下校の道が一緒だったから、和から話しかけてきて…」
「やっぱり、和ちゃんて活発だったんだね」
檸檬は、表情を崩して話し始めた。
「うん、和は活発でやさしい子。ただ、たまに我儘だったり頑固だったり、こどもっぽいところもあるけど…」と苦笑いした。
「そうだね、でもそこも個性というか憎めないんだよね」
「そう…憎めない」と檸檬は繰り返した。
二人は顔を見合わせて笑った。
少し先を歩いていた和が振り向いて叫んだ。
「おおい、二人とも遅いぞ。はやくはやくぅ」
和の隣を歩いている汐織は困ったように笑っている。
春明と檸檬は少し足を速めた。




