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翌日の昼休み、春明と汐織と和は、教室でお泊り会の会議をしていた。
和がまず最初に話し始める。
「それじゃあ、午後一時にショッピングモールに集合して、買い出しを済ませようね」
「ええ、それがいいわね。夕飯に何を作るかも決めなくちゃね」
汐織は珍しく、明るい表情で乗り気だった。
「堂島さんには伝えてあるの?」と春明が言った。
「うん、ちゃんと伝えてあるよ。大丈夫だって」
「そっか、よかった」
春明は、すらりと伸びた姿檸檬の四肢を思い浮かべた。
――堂島さんってどんな寝巻を来ているんだろうな…。
汐織が怪訝な顔つきで春明を肘で小突いた。
「あんた、またいやらしい事考えたんじゃないだろうね」
春明は慌てて、首を振った。
「いやいやそんなことないよ」
くすくすと和が笑う。
「いやぁほんと楽しみだよぉ、四人でお泊り会なんて初めてだから楽しみだよぉ」
「俺なんて、友達の家に泊まること自体が初めてだよ」
「私もよ。だから楽しみでしょうがないわ」
四人はその後も楽しそうに、予定を話しあっていた。
放課後、和は美術部に行き、汐織と春明は校庭隅のベンチに来ていた。
「それじゃあ、和の件もひと段落した事だし、また活動を始めるわよ」
そう言うと、汐織はまたノートを取り出して春明に渡した。
「今度はなんだ…」
春明はノートを受け取って、ぱらぱらとページをめくる。
汐織が揚々として話し始めた。
「今度はね方針を変えて、『好きな人が出来たときの対応』にしてみたの」
「へぇ~…」
春明は、素っ気なく答えた。
「何よそのリアクション」
「いや、別に…。ほら、続けていいよ」
「ったく。それでね、あなたはもう友達作りの段階は終わったと思うの。もう一人でも女子と普通に話せるだろうし、自然と輪が広がってくると思うの」
春明は、少し得意げになっている。
「まぁ、話してみれば簡単な事だったね」
「調子にのるな…。だからね、あとは好きな人が出来た時の為の練習に集中してもいいと考えたの」
「異議なし」と春明は頷く。
「それじゃあ、今日からそういう方向でいくわね」
そういうと汐織は、春明からノートを取って、あるページを開いて、指を指した。
「じゃあ、これを声に出してみて」
汐織が指を指したページには、愛を歌った詩が書いてあった。
「古典の愛の詩を集めて書いてみたの。これを覚えれば間違いないわ」
春明はそのページを凝視する。
「これ、本当に実際に使えるの…?」
不安そうに春明が言った。
「古人に学べ。間違いないわよ」
汐織は嬉々として、堂々として春明に答えた。
「ほら、はやく言って」と汐織は春明を急かす。
「わ、わかったよ…」
春明はしぶしぶと、それを読み始めた。
「え、えぇと…。嗚呼、どうして僕が耐えられよう。渇きに苦しむ遭難人が眼前にみる蜃気楼を手でかき寄せるが如くに、僕は貴女を求めている…」
春明の恥ずかしそうな声が、辺りに響いた。




