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下から三番目の恋愛活動  作者: 兵衛 清彦
第一章「霜月沙織と野咲和」
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翌日、和は学校を休んだ。

春明は、誰も座っていない、和の席をちらりと見る。

胸がずきんと痛む。春明は昨日の事を思い出す。

――あの時、なんて声をかけてあげればよかったのだろうか。

堂島さんが檸檬に言ったように、和ちゃんの主張は単なるわががままだと思う。

やっぱり芸術だろうがなんだろうが、社会生活の常識はある程度必要だろう。

それに、この先もそんな態度を続けていたら友達がいなくなってしまうだろう。

一人は寂しい…それは少し前に身をもって俺が実際に感じていた。

和にはそんな風になって欲しくない。

どう伝えればいいのだろうか…。

汐織と堂島さんと相談するべきだろう。

春明は自分の考えをまとめると、黒板に向き直った。


昼休み、春明と檸檬は、汐織の席に集まっていた。

春明はさっきまとめた考えを二人に話した。

汐織は腕を組んで暫く考えたあと話はじめる。

「うん、私もそう思うわ。それをどうやって和ちゃんに伝えるかよね」

春明は檸檬にも答えを求めるように視線を向けた。

檸檬は、春明の目を見て黙って頷いた。

それから暫く、三人はそれぞれの意見を言い合って考えをまとめた。

「じゃあ早速今日、和の家へ行こうか」

「ええ。でも和、私たちに会ってくれるかしら」

檸檬がカバンを机の上に置く。

「これ…和が忘れていった」

檸檬がぼそっと言った。

「これなら、和ちゃんも私たちの訪問を受け入れそうね」

「それじゃあ、今日学校が終わったらまた」

そう汐織が言うと三人はそれぞれの席に戻った。。


放課後、三人は汐織の席に集まった。

「それじゃあ、これから和の家に行きましょう」

三人は並んで学校を出た。和のカバンは檸檬が持っている。

三人は田んぼに囲まれた道を並んで歩く。

夕日が三人の影を長く伸ばす。

春明が歩きながら話し始めた。

「和、意外と繊細な性格だったんだな」

汐織がそれに答える。

「あら、私は最初からそう思ってたわよ。確かにのんびりしている様に見えるけど。きっと感受性が豊かすぎるのよ。それで傷つきやすかったり、周りが見えなくなったり」

それを聞いて表情を変えずに檸檬が口を開く。

「霜月さんの言う通り。…和は、いつも絵と自然の事で頭がいっぱい。感受性が有りすぎて、人間関係を怖がっている」

春明は不安そうな顔つきで俯いたままぼそぼそと呟く。

「俺、ちゃんと伝えられるかな…」

「アンタがそんな弱気でどうするの」

汐織が苛立たしげに言った。

「あ、ああ。そうだな、すまん」

三人は再び黙って歩き始める。

気が付いた時、三人は和のマンションの前に着いていた。


檸檬はマンションの入り口にあるインターホンを押す。

檸檬が話し始める。

 「檸檬だけど。和、昨日カバンを忘れたから…持ってきた」

 檸檬は何度も頷く。

 マンションのドアが開く。

三人はマンションの中に入って行った。

エスカレータに乗って和の部屋がある階まで行く。

三人は口を固く結んでいて、緊張した空気が満ちている。

和の部屋の前まで来て、春明は緊張から口がからからに乾いている事に気が付く。

汐織の表情も硬く強張っている。

檸檬が、インターホンを押す。

ぱたぱたと駆けて来る足音がした。

和がドアを少し開けて、その隙間から顔をのぞかせた。

檸檬が和のカバンを前に出して、話し始めた。

「これ、和のカバン…」

少しの間、和は黙って三人の顔を交互に見た。

春明が、固唾を飲んでから話始める。

「ちょっと、上がっていってもいいかな」

和は少し間を置いてから、ドアを大きく開けた。


和の部屋に入った三人は、机を囲んで座る。

和がキッチンからジュースを運んで来る。

しばらくの間、四人は黙ったままだった。

重い空気が部屋に満ちる。

和は険しい表情のまま黙って座っている。話し始める様子はまったく無かった。

誰も机の上にあるジュースに手をつけていない。

春明は和の方を向く。

「俺の話を聞いてほしいんだけど」

和は黙ったまま、あらぬ方向を見続けている。

春明は緊張から、掌を握りしめて話し始めた。

「また、繰り返しになるんだけど…」

春明は続ける。

「やっぱり、学校の仕事とか人間関係は大事だと思うよ。相手もひどいこと和に言ったけど…。和も日直の仕事を休むならちゃんと説明するべきだったと思うよ」

和は黙ったまま春明の話を聞いている。

「俺も人間関係は嫌いだし、ついこの前まで友達もいなくて一人ぼっちだった。やっぱり一人ぼっちは寂しかった。でも、勇気を出して和に話しかけて、友達になって、新しい発見もあったし、楽しいことも増えた。そりゃあ煩わしい事も多いけど、人間同士の付き合いも悪いもんじゃないと、今は思ってる」

春明はからからに乾いた口で続ける。額にうっすら汗が滲んでいる。

「だから和も拗ねたりしないで、学校での人間関係に向き合ってほしいんだ」

春明は言い終えると、また俯いて口を固く閉じた。

和は黙ったまま答えない。

汐織と檸檬も黙ったままでいる。

再び重い空気が部屋に満ちる。

春明は汐織に視線を送る。

汐織はそれに気が付くと、小さく頷いて口を開く。

「…それじゃあそろそろ帰ろうかしらね」

春明と檸檬はそれに頷く。

「じゃあ、俺たちもう帰るから…」

三人は腰を上げる。

和は相変わらずじっとしたまま動かない。

三人は靴を履いて、玄関に立つ。

「それじゃ、また明日…」

春明はそう言ってドアをしめた。



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