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マンションを出た二人はショッピングモールを出てすぐの、田んぼに囲まれた農道を二人並んで歩いてた。
日は既に落ちていて、果てしなく続いているような直線の農道の左右に、点々とある街灯は白く輝いてされている。
コウモリや虫が街灯の周りをぐるぐると飛び交っている。
風は冷たく、シャツ一枚の二人には肌寒かった。
二人はここにくるまで一言も喋っていなかった。
――二人きりになると、喋ることがないな…。
二人きりになったことで、春明は緊張して縮みあがってしまった。
春明は必死に話題を探している。
檸檬は口を固く結んで、かつかつと長い脚で淡々と歩みゆく。
気まずそうな春明の表情とは反対に、檸檬の表情は何も気にしていないように、整然としている。
ちらりちらりと、春明は檸檬の表情をうかがう。
檸檬の長く茶色い髪が、夜風にさらさらと靡く。
二人が並んで歩くと、檸檬の身長の高さが際立つ。
固い表情の檸檬の横顔は、夜の暗さと月の明かりによって端正な顔立ちをくっきりと浮かびあがらせる。
春明はその檸檬に少し見惚れた後、緊張しながらもなんとか声を絞りだした。
「堂島さんて、何か部活に入っているの?」
檸檬は目を前に向けたまま、首を左右に振る。
「ああ、そうなんだ。運動が得意そうだったから」
「…別に、得意じゃない」と素っ気なく檸檬が言った、
「へぇ、意外だね」
そう春明が答えると、また沈黙が訪れた。
春明は話しかけるのやめて、檸檬について考えることにした。
春明はクラスでよく聞く檸檬の噂を思い出す・
――みんなは堂島さんの事、不良だって言うけど、そんなことないんじゃないか。
春明は今日一日の檸檬の様子を思い返す。
四人で雑談したこと。和と堂島さんの仲のよさそうなやりとり。
堂島さんは不良なんじゃなくて、只、内気で不器用なだけなんじゃないか。
確かに見た目は怖いというか、威圧感があるけれど…。
春明がふと横を向くと、檸檬は春明の隣にはいなく、少し後ろで立ち止まっていた。
「どうしたの、堂島さん」
檸檬は口を開かず、十字路の右を指さす。
春明は家の方を指しているのだと察した。
「ああ、堂島さんはそっちか。それじゃあ、さよなら」と春明は手を振る。
檸檬は、口を結んだままで、手を振ることもせず、すっと歩いて行った。
春明はそんな檸檬の様子をみて苦笑いになる。
「よし、俺も急いで帰ろう」
そう言うと春明は走り出した。




