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ホームルームが終わると、和は春明の席に駆けて寄って来た。
「春明くん、この後予定ある?」
「あぁ、今日バイトなんだ俺」
「そっかあ…交通安全のポスターの事で手伝ってもらいたかったの。残念だなぁ」
と心底残念そうに言った。
「ごめん、また今度手伝うよ。今日は汐織に頼んでみたらどうだろう」
春明は汐織を呼び寄せる。
汐織が来ると和が話し始める。
「汐織ちゃん、今日ちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだけど。ほら、交通安全ポスターの件でねぇ」
汐織は嬉しそうに頷いて言う。
「いいわよ。私、特に予定ないし」
和はぴょん飛び上がって喜んだ。
「やったぁ。それじゃあまず、アイディアの整理から手伝ってもらおうかな」
「わかったわ」
「じゃあね、春明くん」と和は教室を出て行く。
汐織はちらりと春明を見て和に続いて教室を出て行った。
春明はそれを手を振って二人を見送った。
「よし、俺もバイト行かないとな」
春明はカバンを背負うと教室を後にした。
夕方の教室には汐織と和以外、誰もいなかった。
二人は机を四個くっつけて、その上に生徒から募集した交通安全ポスターのアイディアが書いてある紙の山を置いた。
それを見て汐織は驚いた。
「こんなにあるんだね…以外だわ」
にんまり笑って和は答える。
「美術部全員で整理すればいいんだけどね。皆忙しそうだったから私が全部引き受けたの」
「一人じゃ大変でしょう」
「うん、そうだけどね。だけど色んな人の絵を見れるから楽しいよ」
汐織はパラパラと数枚めくる。
「こりゃあ、何日かかるかわからないわね」と少しうんざりそうに言った。
「だね。また春明君にも付き合ってもらってやろうね」と和が困ったような笑顔で答えた。
和は紙の山を半分にわけて、片方を汐織の前に持ってくる。
「それじゃあね、汐織ちゃんにはこっちの山を見てもらうかな」
「どうすればいいの?」
「汐織ちゃんがね、いいなと思ったものがあればそれを分けてもらいたいの」
「わかったわ」と言うと汐織は早速、仕事に取り掛かった。
和も、もう片方の山に取り掛かる。
暫く、二人は黙々と仕事としていた。
ふと和が手を止め、顔を上げる。
「あのね」
和が汐織に向き直る。
「春明君のね、ほら、大学行くための条件の事なんだけどね」
汐織の体がぴくっと反応して、作業の手を止める。
「う、うん」
汐織は和を見ずに答える。
「実はね…ちょっと面白そうだなって」と和はにやけて言った。
深刻な質問を予想していた汐織は、ふぅっと気が抜けた。
和は嬉々として話し続ける。
「ほら、春明くんて一部の女子に“下から三番目”って言われてるじゃない。和は不思議に思ってるんだけどね」
汐織は苦笑いして相槌を打つ。
「それでね、春明くん、自分を変えたいって言ってたでしょ。春明くんがどうやって恋人をつくるまで成長するか。本人には悪いけど傍から見たら面白そうだなって」
それを聞くと汐織は体を乗り出して答える。
「わかる、わかるわ。真っ新なスポンジが汚れてく様というかなんというか」
「その例えはちょっとどうかと思うけど…。だから、和もその活動に協力させてくれないかな」
汐織の顔がぱっと明るくなる。
「もちろんよ。二人の方が楽し―いや捗るだろうし」
「うん、よろしくね」
二人は顔を寄せ合うとくすくすと笑い合った。
ふと、汐織が思い出したように言う。
「あ、作業続けないと」
「そうだね」と和は舌をぺろりと出して言った。
二人は再び黙々と作業を始めた。
陽は暮れ始めていて、教室が薄暗くなってくる。
汐織は教室の電気を点けた。
作業はまだまだ残っている。
二人は時折、談笑しながら作業を進めた。




