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下から三番目の恋愛活動  作者: 兵衛 清彦
第一章「霜月沙織と野咲和」
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ホームルームが終わると、和は春明の席に駆けて寄って来た。

 「春明くん、この後予定ある?」

「あぁ、今日バイトなんだ俺」

「そっかあ…交通安全のポスターの事で手伝ってもらいたかったの。残念だなぁ」

と心底残念そうに言った。

「ごめん、また今度手伝うよ。今日は汐織に頼んでみたらどうだろう」

春明は汐織を呼び寄せる。

汐織が来ると和が話し始める。

「汐織ちゃん、今日ちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだけど。ほら、交通安全ポスターの件でねぇ」

汐織は嬉しそうに頷いて言う。

「いいわよ。私、特に予定ないし」

和はぴょん飛び上がって喜んだ。

「やったぁ。それじゃあまず、アイディアの整理から手伝ってもらおうかな」

「わかったわ」

「じゃあね、春明くん」と和は教室を出て行く。

汐織はちらりと春明を見て和に続いて教室を出て行った。

春明はそれを手を振って二人を見送った。

「よし、俺もバイト行かないとな」

春明はカバンを背負うと教室を後にした。



夕方の教室には汐織と和以外、誰もいなかった。

二人は机を四個くっつけて、その上に生徒から募集した交通安全ポスターのアイディアが書いてある紙の山を置いた。

それを見て汐織は驚いた。

「こんなにあるんだね…以外だわ」

にんまり笑って和は答える。

「美術部全員で整理すればいいんだけどね。皆忙しそうだったから私が全部引き受けたの」

「一人じゃ大変でしょう」

「うん、そうだけどね。だけど色んな人の絵を見れるから楽しいよ」

汐織はパラパラと数枚めくる。

「こりゃあ、何日かかるかわからないわね」と少しうんざりそうに言った。

「だね。また春明君にも付き合ってもらってやろうね」と和が困ったような笑顔で答えた。

和は紙の山を半分にわけて、片方を汐織の前に持ってくる。 

「それじゃあね、汐織ちゃんにはこっちの山を見てもらうかな」

「どうすればいいの?」

「汐織ちゃんがね、いいなと思ったものがあればそれを分けてもらいたいの」

「わかったわ」と言うと汐織は早速、仕事に取り掛かった。

和も、もう片方の山に取り掛かる。

暫く、二人は黙々と仕事としていた。

ふと和が手を止め、顔を上げる。

「あのね」

和が汐織に向き直る。

「春明君のね、ほら、大学行くための条件の事なんだけどね」

汐織の体がぴくっと反応して、作業の手を止める。

「う、うん」

汐織は和を見ずに答える。

「実はね…ちょっと面白そうだなって」と和はにやけて言った。

深刻な質問を予想していた汐織は、ふぅっと気が抜けた。

和は嬉々として話し続ける。

「ほら、春明くんて一部の女子に“下から三番目”って言われてるじゃない。和は不思議に思ってるんだけどね」

汐織は苦笑いして相槌を打つ。

「それでね、春明くん、自分を変えたいって言ってたでしょ。春明くんがどうやって恋人をつくるまで成長するか。本人には悪いけど傍から見たら面白そうだなって」

それを聞くと汐織は体を乗り出して答える。

「わかる、わかるわ。真っ新なスポンジが汚れてく様というかなんというか」

「その例えはちょっとどうかと思うけど…。だから、和もその活動に協力させてくれないかな」

汐織の顔がぱっと明るくなる。

「もちろんよ。二人の方が楽し―いや捗るだろうし」

「うん、よろしくね」

二人は顔を寄せ合うとくすくすと笑い合った。

ふと、汐織が思い出したように言う。

「あ、作業続けないと」

「そうだね」と和は舌をぺろりと出して言った。

二人は再び黙々と作業を始めた。

陽は暮れ始めていて、教室が薄暗くなってくる。

汐織は教室の電気を点けた。

作業はまだまだ残っている。

二人は時折、談笑しながら作業を進めた。


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