27
翌日、空は晴れ渡っていて、風も爽やかに薫っている。
昼休み、二人はいつものベンチに座っていた。
二人は、暗い表情で俯いて、黙ったままでいる。
時計を見ては、そわそわと落ち着きがない。
「和さん、来るかな…」と弱弱しく春明が汐織にたずねる。
「知らないわよ…」と汐織はつんと言い返す。
そう言葉を交わすと、また二人は黙り込んでしまう。
ため息を吐いては時計を見て、そわそわとする。
そんなことを繰り返していると、昼休みももう半分を過ぎていた。
――やっぱり来ないか…。
そう二人は思って、うなだれる。
少し間を置いて、ふと汐織が口を開く。
「ねぇ、あんたの恋人づくりのことなんだけど…」
汐織は続ける。
「今までのように計画を立てて、がっついていくのはなんか、違うと思うの」
春明はうなだれたまま、だるそうに答える。
「ああ、俺もそう思ってた」
「あまり深く考えないで自然に接して、それで仲良くなって、それで友達の輪が広がって…。
それが一番いいと思うの。お互いに気持ちよく付き合えるし」
「そうだな…今更気付いても遅いかもしれないけど」
二人は太いため息を吐いてまた黙り込む。
ふと、うなだれている二人の耳にぱたぱたと足音が響いた。
二人はばっと顔を上げて、足音のする方に目をこらす。
そこには、ふわふわした髪を揺らしてぽてぽてと駆けて来る和がいた。
和は二人の傍にくると、少し恥ずかし気に口を開く。
「春明くん…汐織ちゃん…」
春明と汐織は驚きで固まっている。
「私の話し…聞いてくれるかな?」と和が呟く。
春明と汐織が頷くと、和はベンチに座って話し始める。
「この前はごめんね、あんな態度とっちゃって…」
うつむく和を見て春明は慌てて答える。
「そんなこと無いよ。傷つけたのはこっちなんだから」
和は困ったような笑顔を春明に向ける。
「それでね、二人が正直に話してくれて嬉しかったの」
和は緊張からか、途切れ途切れ話す。
「いっぱい考えてね、和もやっぱり二人とこれからも友達でいたいなって…」
「きっかけなんて、もうどうでもいいかなって」
和は笑顔を見せる。
「だからね、またここに来てもいいかな…?」
春明と汐織は顔を見合わせる。
「も、もちろんだよ」と春明が答える。
「うん、これからもよろしくね、春明くん、汐織ちゃん」
春明と汐織は先ほどの緊張した様子はなく、にこやかに柔らかい表情になっていた。
「それじゃあ、仲直りの握手」と和は小さい手を二人に突き出す。
春明はぽりぽりと照れ臭そうに頬を掻いてから、手を出す。
汐織もおずおずと手を出す。
和はぎゅうっと二人の手を握って、満面の笑みを見せた。
「はい、仲直りだね」
三人は手を握り合ったまま、互いに微笑み合った。
「あ、それとね」
と和は話しを切り出す。
「和のこと、“さん”づけしなくていいよ。和もそっちの方が嬉しいから」
「わかったよ、の、和」春明は照れながら言った。
「え、ええ。それじゃあ、和って呼ばせてもらうわね」と汐織も続いて言った。
「えへへ」と和は嬉しそうに笑った。
汐織は思い出したように時計を確認する。
「もうすぐ、昼休み終わっちゃうわね」
「ほんとだぁ、あっという間だねぇ」
「それじゃあ教室に戻ろうか」
そう言うと、三人はベンチから立ち上がった。
「三人で一緒に教室に戻ろうね」と和が言う。
春明と汐織は頷くと、三人揃って教室へ向かった。




