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下から三番目の恋愛活動  作者: 兵衛 清彦
第一章「霜月沙織と野咲和」
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放課後、バイトのない春明は汐織と二人で図書室に来ていた。

ノートと資料を机に広げて、二人は向かい合って座っている。

二人は呆然として、黙ったままでいる。

開いたノートが窓から吹いてくる夕風に吹かれてぱらぱらとめくれる。

図書室には数人の生徒がいるだけで、しんと静まり返っている。

汐織が、あらぬ方向を見たままで口を開く。

「役に立たなかったんじゃない、これ」とノート指さしながら言った。

「いや、そんなことないだろ。これから活かせる機会はあるだろう」

春明は落ち着き払って答えた。

汐織は呆然としたまま話す。

「和さん、私たちの事、友達だって…」

「ああ、そうだな…」

二人とも少しにやけた顔でいる。

「なんか疲れちゃったし今日は解散しましょうか」

「そうだな、俺も疲れた」と春明は頷く。

「明日、和さん来るのかしら、いつもの場所に」

「そうかもな。だとしたら、俺たちが話し合う場所を変えなくちゃな」

「そうね…」と頷く汐織。

春明はノートをカバンにしまいながら話す。

「別に隠しているわけじゃないけど、変な誤解されるといけないから、暫くは黙っていた方がいいと思うんだ。」

「私もそれには同感だわ。捉えようによっては、和さんを実験台にしてるように思われるかもしれないからね」

「じゃあ俺もう行くわ」

「私はまだ図書室に居るわ。それじゃまた明日の昼ね。ちゃんとノートを読んで勉強してくるのよ」

春明は頷いて答えると、席を立って図書室を後にした。


夜、春明の家の居間はまだ明るかった。

帰宅した春明は食事を済ませて、風呂に入っていた。

湯船から足を出しながら、口笛を吹いている。

今日の昼の事を思い出して、にやにやとする。

――もう友達だね。

和の言葉、春明の頭の中に何度も繰り返される。

高校に入って始めて自分から話しかけて友達ができた。

俺だってやればできるじゃないか。

春明は充実感から、自然と顔がほころんだ。


同じ時刻、汐織はシャワーを浴びていた。

汐織の顔は、いつもより柔らかい表情だった。

汐織の頭には、和のふわふわとした髪と愛らしい顔が浮かんでいた。

和に握られた手を、見つめる。

――和さんの手、小さかったな。

昼休みの出来事を反芻する。

春明の友達づくりも順調だ。

それに私にも初めての女子の友達ができたのだ。

これ以上嬉しいことはない。

ただ、春明の恋人探しの事はどう伝えてよいのかわからない。

「恋人を探すために女友達をつくっています」なんて言ったら失礼だろう。

きっと踏み台にされたと思ってしまうのではないか。

そんな風に思われたくない。

理由はどうあれ、私は純粋に、和さんと友達になれたことがうれしいのだ。

どうしたらいいのだろうか…。伝えるべきなのだろうか。

明日、春明に相談しよう。今後の方針にも関わる事だ。

汐織の表情は固くなっていた。



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