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48 HoursIF2: 台湾海峡 2026 ――日米安保破棄・自衛隊解体ルート――  作者: 八咫 日本


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第8話 ソウルのジレンマ

【韓国・ソウル(大統領室)】

2026年6月20日 08:00

台湾海峡の戦火が激しさを増す中、朝鮮半島にも決定的な危機が迫っていた。

ソウル中心部にある大統領室の地下バンカーでは、韓国大統領と国防部長官、そして国家安保室長が、大型スクリーンに映し出される非武装地帯(DMZ)の衛星画像を前に、重苦しい沈黙に包まれていた。

「北の軍事境界線付近への兵力集結は、依然として継続中。過去最大規模です。さらに、西海岸および東海岸のミサイル基地でも、発射準備の兆候が確認されています」

合同参謀本部議長が、引きつった声で報告する。

台湾有事に乗じ、北朝鮮が突如として大軍を南下させる構えを見せているのだ。数時間前に日本海に向けて発射された短距離弾道ミサイルは、その前兆に過ぎなかった。

「彼らの狙いは何だ。このタイミングで、本当に南進を仕掛けてくるつもりか」

韓国大統領が、疲労の色が濃い顔を上げて問う。

国家安保室長が、手元の分厚いファイルを開きながら答えた。

「陽動作戦の可能性が極めて高いと分析しています。中国軍が台湾を制圧するまでの間、我が国と在韓米軍をこの半島に釘付けにするための、中朝による共同作戦です。問題は、彼らの背後にあるもう一つの『同盟国』の存在です」

室長がリモコンを操作すると、スクリーンの地図が広域表示に切り替わった。朝鮮半島から見て、東と南をすっぽりと覆うように位置する日本列島が赤くハイライトされる。

「日朝軍事同盟、ですね」

国防部長官が忌々しげに吐き捨てた。

「はい。日本がアメリカとの安保を破棄し、中国および北朝鮮と同盟を結んだことで、我が国の安全保障環境は完全に崩壊しました。現在、北朝鮮は『日中朝の平和の枠組みを脅かす米韓同盟こそが、アジアの不安定要因である』と公然と非難しています。もし我が国が台湾支援のために軍を動かせば、北朝鮮だけでなく、背後の日本列島を盾とした中国軍、さらには日本の港湾や空港を利用した北朝鮮の支援部隊から、挟み撃ちを受けることになります」

韓国大統領は、深く息を吐き出しながら頭を抱えた。

かつて日本は、有事の際の後方支援拠点であり、韓国を守るための重要な防波堤だった。しかし、その日本が突如として極端な左派政権に乗っ取られ、完全な非武装化と引き換えに中朝陣営へと寝返ってしまった。

その結果、韓国は民主主義陣営の「最前線の孤島」と化していた。東、西、北を完全に敵対国家と敵対的同盟国に包囲され、唯一の頼みの綱であるアメリカ軍は、日本の領空・領海に阻まれて救援に来ることすら困難な状況にある。

「ワシントンからの要求はどうなっている」

大統領が低く問う。

「米国防総省からは、在韓米軍の一部を台湾周辺に振り向けることへの承認と、我が国独自の海空軍による後方支援の要請が来ています。しかし……」

国防部長官は首を横に振った。

「不可能です。北朝鮮の動きが陽動であったとしても、我が国の防衛線を僅かでも薄くすれば、彼らは本当にソウルを火の海にするでしょう。それに、日本という巨大な壁がある以上、我が国の海軍が安全に台湾へ向かうルートは存在しません」

「つまり、我々は何もできないということか」

大統領の言葉に、バンカー内の全員が目を伏せた。

同盟国であるアメリカの窮地であり、同じ民主主義国家である台湾の危機。しかし、自国の存亡がかかっている今、彼らに助け船を出す余裕などどこにもなかった。

「……ワシントンへ伝えろ。我が国は現在、北朝鮮の重大な脅威に直面しており、全軍を最高度の警戒態勢に置いている。台湾方面への戦力抽出には応じられない、とな」

大統領の苦渋の決断は、実質的な台湾の見捨て宣言であった。

極東のパワーバランスが崩壊したことによるドミノ倒しは、最も脆い部分から確実に崩れ始めている。

【東京・首相官邸】

2026年6月20日 08:45

ソウルの苦境を、東京の首脳陣は冷ややかに見つめていた。

「韓国政府が、台湾支援を見送る方針を固めたようです」

内閣情報官からの報告に、総理大臣は満足げに頷いた。

「当然の判断だ。我が国が日朝軍事同盟を結び、北朝鮮との国交を正常化した効果がここに出ている。米韓の軍事的暴走を牽制し、アジアの無用な戦火の拡大を防いだのだ」

「まさに、我が政権の平和外交の勝利ですね」

官房長官も同調して薄笑いを浮かべる。

彼らの目には、韓国が直面している恐怖も、台湾で流されている血も映っていない。ただ、自分たちの掲げた「武装解除による平和構築」という空理空論が、表面上機能しているように見えるという事実に酔いしれているだけだった。

「これでアメリカも、アジアから手を引かざるを得なくなるだろう。我々が選んだ道こそが、真の平和への最短ルートだったのだ」

総理大臣の言葉が虚しく響く中、時計の針は午前9時を回ろうとしていた。

極東の孤児となった台湾は、いよいよ完全な孤独の中で中国の圧倒的な軍事力と対峙することになる。

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