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48 HoursIF2: 台湾海峡 2026 ――日米安保破棄・自衛隊解体ルート――  作者: 八咫 日本


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第7話 沖縄の異変

【日本・沖縄(与那国島)】

2026年6月20日 06:00

日本の最西端、与那国島。朝の光が差し込む美しい海岸線に、普段ののどかさは微塵もなかった。

島民たちは海岸や高台に集まり、言葉を失って南西の水平線を見つめている。

約110キロメートルしか離れていない台湾本島。そこから立ち上る幾条もの黒煙と、夜明けの空を不気味に赤く染める爆炎が、肉眼ではっきりと捉えられたからだ。かすかに地鳴りのような重低音すら響いてくる。

「本当に戦争が始まったんだ……」

島民のひとりが震える声で呟いた。

かつてこの島には、領空・領海を監視する陸上自衛隊の沿岸監視隊が駐屯していた。最新のレーダーが回り、不測の事態には素早く情報が国へと上げられていた。しかし、現在の駐屯地跡はもぬけの殻だった。施設はすべて閉鎖され、レーダーは撤去され、国旗掲揚台には何も翻っていない。

代わりに島にいるのは、オレンジ色の制服を着た日本災害救助隊の隊員がわずか十数名のみ。彼らは拡声器を手に、港や役場前で必死に声を張り上げていた。

「島民の皆さん、落ち着いてください! 本土の政府からは『これは中国の国内問題であり、日本に危険はない』との通達が出ています! パニックを起こさず、自宅で待機してください!」

しかし、その言葉を信じる島民は誰もいなかった。頭上を不気味な金属音とともに通り過ぎていくのは、沖縄本島から発艦した中国軍の戦闘機群なのだ。日本の主権下にあるはずの空が、完全に侵略の動線として蹂躙されている。

「自衛隊がいれば、せめて守ってくれるのに!」

避難を求めて役場に詰め寄る老人たちの悲鳴が響く。だが、災害救助隊の隊長は唇を噛み締め、俯くことしかできなかった。彼らの手元には、瓦礫を取り除くためのシャベルと、応急処置用の医療品しかない。迫り来る戦火に対して、彼らは文字通り無力だった。

【台北・総統府地下(衡山指揮所)】

2026年6月20日 06:30

台湾の中枢は、四方からの圧力に悲鳴を上げていた。

中国軍の第一波ミサイル攻撃、それに続く空海からの海上封鎖。だが、最も現場の指揮官たちを混乱させていたのは、北方の「日本」という存在だった。

「防空管制より報告! 与那国島の上空および周辺領海をかすめるようにして、中国軍のヘリボーン部隊および低空侵入機が南下しています!」

情報将校が悲痛な声を張り上げる。

「何だと……? 日本の領空を通過しているのか!」

国防部長が身を乗り出した。

「はい。正確には、領空の境界線を完全に無視した飛行ルートです。しかし、日本政府からの抗議や、それに対する迎撃の動きは一切ありません。それどころか、我が方の警戒レーダーを欺くため、中国軍は意図的に与那国島や石垣島の背後に機体を隠しながら接近しています!」

地形を利用した遮蔽。それを日本の領土で行っているのだ。

もし台湾軍がこれらを迎撃しようとすれば、ミサイルが日本の領空を侵犯し、最悪の場合は与那国島や先島諸島に誤着弾する恐れがある。非武装となった日本を盾にすることで、中国軍は一切の反撃を受けない「無敵の接近経路」を手に入れたに等しかった。

「東京の政権は、自国が他国を滅ぼすための凶器に使われていることに気づいていないのか」

国防部長が怒りで机を叩く。

総統は静かに目を閉じ、深く息を吐き出した。

「気づいていて、目をつぶっているのだろう。彼らにとっての『平和』とは、自分たちが血を流さないことだけだ。そのために、我々の血がどれだけ流れようとも構わないのだ」

【東京・首相官邸】

2026年6月20日 06:45

同じ頃、朝の光が差し込む官邸では、テレビニュースが淡々と沖縄の混乱を報じていた。

与那国島から中継される、台湾の爆炎の映像。そして、島の上空を飛ぶ中国軍機の姿。

「総理、野党や一部のメディアから、沖縄の安全確保のために中国軍への『自制要請』を出すべきだとの世論が強まっています」

内閣官房長官が、支持率の急落を示すデータを差し出した。

しかし、総理大臣は温かい茶をすすりながら、冷淡にそれを一蹴した。

「過剰反応だ。中国政府からは、日本領土の安全は完全に保証するという親電が届いている。我が国が日中安保を破棄するような真似をしなければ、沖縄が攻撃される理由はどこにもない。むしろ、下手に動いてアメリカや台湾の側に立っていると誤解されることこそが、最も危険なのだ」

総理大臣は窓の外の穏やかな永田町を見つめた。

「我が国は、世界で唯一、戦争の惨禍から解き放たれた絶対の平和国家なのだから」

その平和が、南の島の人々の悲鳴と、隣国の致命的な流血の上に成り立つ、砂上の楼閣であることを見ようともせずに。開戦から6時間が経過し、極東の歪んだ平和は、確実に狂気を孕み始めていた。

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