水無月の一本矢
「邪聖殿、飲んでおるか?」
「こら!惟信!邪聖殿を、困らせないで下さい!」
「良いじゃ無いですか!若!儂等の分の、武器も用意するなど、これは、共に酒を飲んで、感謝を示すべきですぞ!」
「それは、私がやります!」
宗茂が、惟信を押しのけ、
「さあ、邪聖殿、一杯!」
皆、この調子だ。
あっちで飲まされ、こっちで飲まされ。
そんな俺の側を、セナは、離れようとしない。
「ジャショウ、楽しいねぇ♪」
景虎も、俺の肩に、手を回し、
「邪聖よ!我も、あの茶釜が、欲しいのだが!」
「はぁ……。ドーラに、注文しておきますよ」
「うむ♪」
これには、義元も、話に入って来て、
「のう、邪聖殿!わらわも、あれが、欲しいのだがのう」
「ははは。それなら、景虎殿も、義元殿も、ドーラと話して、茶釜のデザインを、伝えてやってください」
「「うむ♪」」
やれやれ……。
他数名も、期待の目で、こちらを見ている。
ドーラのおっちゃんも、しばらくの間は、茶釜作りで、大忙しだろうなぁ……。
この宴、倭国だけが、騒いでいる様に見えるが、他の国も、負けてはいない。
アルテイシアは、アメルと共に、上機嫌で、
「馬鹿犬!倭国にばかり、武具を献上し過ぎよ!」
「あのなぁ……。お前達にも、渡しているだろう?エリアや、ロナ、ロアにも、ちゃんと、武器を渡した筈だ」
「数が、違い過ぎる!ヒヒイロカネだっけ?私の国にも、輸出しなさいよ!それから、加工方法も!」
「無茶を言うな……。ドーラとリー。それから、シャル達ほどの、符呪の使い手が居て、初めて、実現する技法だ。どうにか出来るモノじゃねえよ」
またアルテイシア、分かり易く、癇癪起こして……。
俺は、アメルと共に、ため息をつく。
俺は、呆れながらも、アルテイシアを諭す。
これでは、ギリセアは、エネスの劣化版と、言われてしまうでは無いか。
アルテイシアは、悔しそうに、唇を噛み締め、俯いてしまう。
それでも、ヨセフとは違い、アルテイシアは、聡明だ。
自分が、エネス国を、意識しすぎている事を悟り、
「分かっているわよ……。ギリセアには、ギリセアの特色があり。エネスにも、エネスだけの、特色がある。だけど!あんたは!王に成っても、一人で、走り抜けていく!あんたは、何時もそう!ただ一人、前を歩き、後ろを、振り向かない!ちょっとは、後を歩く者達の事も、考えなさいよ!置いて行かれる人の気持ちが、貴方に分かる?必死に走っても、どんどん離れてゆく、あんたの背中!歯を食いしばって、走っているのに、決して届かない、あんたの背中!あんたは!もっと、周りの者達の事も、考えなさいよ!!」
アルテイシアの声が、パーティー会場に、響き渡る。
景虎を始め、多くの者達が、その言葉を聞き、複雑な顔をしている。
俺もまた、過ちを、繰り返そうとしていたのか……?
ただ、駆け抜ける。
俺は、水無月の一本矢として、ただ、真っ直ぐと、駆け抜けて来た。
その矢は、スターリーを貫き、壊してしまった……。
俺は、深く、ため息をつき、
「済まない……。お前の言う通り、周りが、見えなくなっていた。立ち止まれねえが、少し、自重しよう。やれやれ、俺もまた、王失格だな……。多くの者達に囲まれながらも、一人、孤独を歩く。まったく、王失格だ」
「馬鹿……。あんたが、王失格なら、誰が、理想の王なのよ?私は、そう言う事を、言っている訳じゃ無いわよ!ただ、あんたが、生き急いでいるから、私は、怒っているのよ!ジャショウ・シルフィール!私は、貴方を、まだまだ、こき使うわ!覚悟しておきなさい!」
「はぁ……。お手柔らかに頼むよ」
漸く、アルテイシアの顔にも、笑顔が戻る。
やれやれ……。
まだまだ、俺は、楽が出来そうも無いか……。
しかし、俺は、この者達と共に歩み、どこまでも、どこまでも、駆けあがってゆくのだろうな……。




