俺の愛した国は……。
対談の時……。
南と北の国境に、両者の兵達が、ずらっと並ぶ。
ヨセフは、満面の笑みで、ヨーレスを出迎える。
片や、ヨーレスの方は、眉を顰め、ヨセフを睨んでいる。
それでも、ヨセフはかまわず、
「やあ、我が弟よ!元気にしていたかい?」
「あ?つまらない口上は良いよ。南の要求は何だ?北は、兵を退く気は、さらさら無いぞ?」
「やれやれ、つれない事を言うなよ?私達三兄弟、助け合って、スターリーを発展させようと、誓い合ったじゃ無いか!私が、国を統べ。ヨシカが、政を行う。そして、ヨーレスが、軍事を統べる!忘れてしまったのかい?」
「あ?何を、白々しい事を、言っているんだ?全てを壊したのは、兄貴だろう?今更、そんな誓い、何の意味もねえよ」
ヨーレスは、ヨセフの差し伸べた、手を払いのけ、怒りを露わにする。
ヨセフは、肩をすくめ、
「やれやれ、君も、あの異分子に、惑わされているのかい?壊す事しか出来ない、あの愚か者に!!」
ヨセフは、豹変し、怒鳴り散らす。
異分子とは、俺の事だろう。
ヨーレスは、鼻で笑う。
「それが、兄貴の本性か?壊す事しか出来ねえのは、兄貴の方だろう?兄貴に、何か創れたモノが有ったか?親父達が創った、スターリーから始まり。皆が、必死に創って来たモノを、奪い、壊して行った!愚か者は、あんたの方だろうが!!」
「私では無い!私が、壊したのでは無い!スターリーを!私達の絆を壊したのは、あの愚か者じゃ無いか!何故、それが分からない!!」
「はっ!分からねえよ!あんたは、一生、他人の所為にして、逃げ続けるんだな……。残念だよ。あんたが、そういう人間なら、俺達は、心置きなく、南を潰し、スターリーを、一つに戻す!次会う時は、戦場だ!」
ヨーレスは、ヨセフに背を向け歩き出す。
ヨセフは怒り、
「待ちたまえ!スターリーの王は、この私だぞ!あの男でも、お前でも無い!この私だ!今なら、罪を、不問としよう!私の前で、跪け!!」
やはり、今のヨセフとでは、話に為らないな……。
ヨーレスは、振り向きもせず、陣営へと戻る。
冷めた目で、
「あれが、あの男の本性で。あの男の、限界か……。ちっぽけな人間だな……」
ヨーレスは、儚く笑い、兄と。ヨセフと、完全に決別する。
やはり、今のヨセフじゃ、話に為らないか……。
北の猛攻が始まる……。
今のヨセフに……。
南スターリーに、それを止める術は無い。
陥落してゆく、街々。
スターリーは再び、一つに成ろうとしている。
かつての王に、それを止める術は無い。
今のヨセフに、何が出来る?
北との対談でも、その本性を見せ、ヨーレス達の、最後の希望も、ぶち壊してしまった。
最早、ヨセフに、味方など、存在しない。
奴は、俺同様、壊す事しか出来ない。
救われないな……。
奴の、行動一つ一つが、多くの敵を作る。
忠臣を失い、兄弟すらも失った。
あいつは一人で、今も、玉座の上で、俺を呪う、呪詛を吐く。
救われないな……。
あいつも、ヨーレス達も。
さてと……。
俺は、エネスの為に、今日も、頑張って働きますか……。
「ジャショウ君。南スターリーから、書状が届いております」
「んあ?今度は何だ……?」
俺は、手紙を手渡され、難しい顔で、それを読む。
セナ達とヨルム達の、即時、引き渡しか。
話に為らないな。
俺は、手紙を破り捨て、何時もの業務に戻る。
エローラ達は、不安そうに、
「要求は、何だったのですか?」
「んあ?別に、大した事では無いさ。セナ達や、ヨルムの親父達の、即時引き渡し。こっちは、一切、応じる気は無い!要らぬ心配は、必要無いよ。武力行使で来ると言うなら、俺は、容赦しない!徹底的に、潰すだけだ」
「そうですか……。しかし、今更何故、セナ様達を、要求したのでしょうか?」
「ああ……。簡単な話だ。ヨーレスは、スターリー統一後、セナの成長を待って、王位を譲ると宣言した。前王ヨルムと、次代の王を、南は手に入れ、正当性を保ちたいのだろう。そんな事は、俺が、絶対、許さないがな」
「なるほど……。ヨセフと言う男の浅ましさが、よく分かります。セナ様達の護衛を、少し、増やしましょう。ここまで、来られるとは思えませんが……。あの男は、何をするか、分かりませんからね」
「ああ、頼む、エローラ。マルスさんにも言って、入国審査も、今一度、徹底させよう。最近、スターリーからの難民が、多く、エネスを頼り、入国しているからな。万が一も有る」
「はい。警察組織の方にも、巡回を、強化させます。はぁ……。スターリーを離れても、未だ、スターリーに、振り回されるとは。ヨセフと言う男に、怒りを覚えます」
「ああ、面倒な男だ。だが、俺達が、手を下す訳にもいくまい。俺達が、スターリーを、侵略すれば、本当の意味で、スターリーが、滅びてしまう。それだけは、何としても避けたい」
ああ、スターリー……。
あんなに、愛した国だが、今の俺達にとっては、邪魔な存在か……。
だが、情勢は、定まりつつある。
スターリーを、滅ぼさずとも、ヨセフを打倒する事で、この争いは、簡単に、決着がつくだろう。
しかし、それを、俺がやってしまえば……。
何とも、もどかしい。
この先を考えると、スターリーの事は、スターリーで、解決してもらわなくてはな。
済まないが、ヨーレス達よ、頼りにするぞ……。




