素質
謁見の間の扉が、開かれる。
ヨルムとフィール……!
くしゃくしゃの顔で、ローバの下に、駆け寄って来る。
ローバの前で、必死に首を垂れ、
「ローバよ!誠に!誠に済まなかった!謝って、済む事では無い!我が愚息の行為、謝って、許される行為で無いと、分かっておる!しかし!本当に、済まなかった!!」
ローバの前で、膝をつき、必死に謝り続ける、ヨルムとフィール。
ローバは、涙を拭い、慌てて、ヨルム達を立たせる。
「お止め下さい!ヨルム様とフィール様に、何の罪もありません!私は、そんな事も、忘れていました。セナ様とルビア様にだって、罪はありません!私は、憎しみに囚われ、そんな事にすら、気が付かなかったのです!どうか、お許し下さい!」
「分かっておる!分かっておる!お主の心に、罪は無い!当然の事だ!謝るのは、儂等の方じゃ!!」
「も、勿体無き……。勿体無きお言葉!」
そんな、号泣する、三人の下に、セナとルビアが、現れる。
セナは、ローバの下に走り寄り、
「お爺ちゃん、ごめんなさい!エローラお姉ちゃんも、お爺ちゃんの様に、泣いていた!みんな、パアパが、悪いんでしょ!パアパが、悪い事して、ごめんなさい!」
セナは、そこまで言うと、号泣する。
ローバは、そんなセナを見て、膝をつく。
「私達は、こんな子を、盾にしようとしていたのか……?私は……」
ローバは、涙を流し、セナを抱きしめる。
ローバは、むせび泣きながら、
「セナ様……。どうか、立派に、成長して下さい。何時か、スターリーが、一つに戻った時、セナ様が、必要に成るでしょう。どうか、その時までに……」
「うん!セナ、いっぱい勉強するよ!ジャショウみたいに、皆を守る!」
「はい、はい!」
ローバは、セナの中に、王の素質を、見出したのだろう。
その涙は、ぴたりと止み、俺を、真っ直ぐ見つめ、膝をつく。
「ジャショウ国王陛下……!お願いが、ございます……!」
願い……?
俺もまた、真っ直ぐ、ローバを見つめる。
ローバは、深く、頭を下げ、
「我等、セバネス家を、エネスの末席に、お加え下さい!私は、セナ様の、王としての教育を、手伝いたいと考えております!どうか、我等を、エネスの末席に……!」
「そうか……」
俺は、それだけ言って、目を瞑る。
ローバの言葉に、嘘偽りは無い!
セバネス家と言っても、ローバの妻は、既に他界しており、兄も死んだ……。
今は、ローバとエローラしか居ない。
受け入れても、大丈夫だろう。
俺は、再び、目を開け、
「それでは、ローバ殿!一度、俺も、ヨーレス達に、会いに行く!付いて参れ!」
「はっ!!」
ヨーレスとの対談……。
あいつも、セナ達を、人質にとると言う事は、望んじゃいないだろう。
真意を、はかりたい。
一度、北スターリーに、行くとしようか……。
「よう、ジャショウ!久方ぶりだな」
「ああ。ヨーレス王も、ヨセフに、手酷くやられたと聞いたが、元気そうで何よりだ」
俺とヨーレスは、固い握手を交わす。
ヨーレスは、苦笑し、
「勿論、セナ達を、俺達に売るような事は、しないだろうな?」
「当然だ!俺の家族は、誰一人、北にも南にも、渡すつもりは無い!」
「そいつは良かった。正直、ほっとしたよ」
やはり、人質の話は、ヨーレスの真意では無かったか。
ヨーレスは、笑い、玉座に座る。
その横には、アルブレッド達が……。
こちらも、心なしか、ほっとしている。
俺は笑い、
「ローバ殿には聞いたが、人質の話は、ローバ殿の、一存か……?」
「ああ。家は、武闘派の集まりだからな!人質とか、そう言うのは好まねえ。それに、兄貴の事は、嫌っているが。セナ達の事は、皆、好いているからな。俺も、玉座は、どうにも、性に合わねえ!南北が、統一したら、出来る事なら、玉座は、他の者に、譲るつもりだ!最初は、ヨルブンの叔父貴に、任せようと思っていたが……。あっさり、断られたよ」
ヨーレスは、そう言うと、ヨルブンの方を向く。
ヨルブンは、肩をすくめ、
「残念だが、私は、そう言うモノが、苦手ですから。皮肉にも、この気持ちは、ヨーレスが、一番、分かるのでは無いのですか?」
「ははは!その通りだ!ジャショウ王は、本当に、上手くやっているよ!いっその事、お前が、スターリーの王に、成れば良かったのにな……。ヨセフの兄貴には、御しきれなかったか……。だからって、暴走するなっつうの!」
かる口を叩く、ヨーレス達。
成程な……。
独立はしたが、北は、はなから、王の玉座に、興味の無い連中の集まりか。
南北を、統一し。ヨーレスは、誰かに、王位を、譲るつもりであった。
ヨーレスは、にやにや笑い、
「最初は、ジャショウに、エネスと共に、統治してもらおうと、話していたんだが……。ローバ!お前、セナに、王の資質を、見出したか!」
全てを見透かす、ヨーレス。
ローバは、静かに、首を垂れる。
徐に、
「ヨーレス王……!どうか、お暇を頂きたく、本日は、ジャショウ王と共に、参りました。私は、エネスに仕官させて頂き、セナ様を、王として、育てる手伝いをしたいと思います。どうか、ご了承ください」
「ははは!そいつが、一番良い!セナであれば、ここに居る者達も、喜んで、付き従うだろう!それに、元ヨーシュアの者達もな!再び、スターリーが、一つに成る!その代り、兄貴の様に、甘やかすんじゃねえぞ?」
「はっ!お任せ下さい」
ヨーレスは、満足そうに頷く。
北の目的は、ヨセフの退位か……。
彼等は、まだ、スターリーに、忠誠を誓い続けている。
ただ一人……。
ヨセフだけが、憎まれている。
奴は、一人玉座で、何を思う?
孤独な王は、誰からも理解されず、一人寂しく、消えゆく定めか……?




