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天翔雲流  作者: NOISE
不死鳥の如く
1827/1865

素質

 謁見の間の扉が、開かれる。

 ヨルムとフィール……!

 くしゃくしゃの顔で、ローバの下に、駆け寄って来る。

 ローバの前で、必死に首を垂れ、

「ローバよ!誠に!誠に済まなかった!謝って、済む事では無い!我が愚息の行為、謝って、許される行為で無いと、分かっておる!しかし!本当に、済まなかった!!」

 ローバの前で、膝をつき、必死に謝り続ける、ヨルムとフィール。

 ローバは、涙を拭い、慌てて、ヨルム達を立たせる。

「お止め下さい!ヨルム様とフィール様に、何の罪もありません!私は、そんな事も、忘れていました。セナ様とルビア様にだって、罪はありません!私は、憎しみに囚われ、そんな事にすら、気が付かなかったのです!どうか、お許し下さい!」

「分かっておる!分かっておる!お主の心に、罪は無い!当然の事だ!謝るのは、儂等の方じゃ!!」

「も、勿体無き……。勿体無きお言葉!」

 そんな、号泣する、三人の下に、セナとルビアが、現れる。

 セナは、ローバの下に走り寄り、

「お爺ちゃん、ごめんなさい!エローラお姉ちゃんも、お爺ちゃんの様に、泣いていた!みんな、パアパが、悪いんでしょ!パアパが、悪い事して、ごめんなさい!」

 セナは、そこまで言うと、号泣する。

 ローバは、そんなセナを見て、膝をつく。

「私達は、こんな子を、盾にしようとしていたのか……?私は……」

 ローバは、涙を流し、セナを抱きしめる。

 ローバは、むせび泣きながら、

「セナ様……。どうか、立派に、成長して下さい。何時か、スターリーが、一つに戻った時、セナ様が、必要に成るでしょう。どうか、その時までに……」

「うん!セナ、いっぱい勉強するよ!ジャショウみたいに、皆を守る!」

「はい、はい!」

 ローバは、セナの中に、王の素質を、見出したのだろう。

 その涙は、ぴたりと止み、俺を、真っ直ぐ見つめ、膝をつく。

「ジャショウ国王陛下……!お願いが、ございます……!」

 願い……?

 俺もまた、真っ直ぐ、ローバを見つめる。

 ローバは、深く、頭を下げ、

「我等、セバネス家を、エネスの末席に、お加え下さい!私は、セナ様の、王としての教育を、手伝いたいと考えております!どうか、我等を、エネスの末席に……!」

「そうか……」

 俺は、それだけ言って、目を瞑る。

 ローバの言葉に、嘘偽りは無い!

 セバネス家と言っても、ローバの妻は、既に他界しており、兄も死んだ……。

 今は、ローバとエローラしか居ない。

 受け入れても、大丈夫だろう。

 俺は、再び、目を開け、

「それでは、ローバ殿!一度、俺も、ヨーレス達に、会いに行く!付いて参れ!」

「はっ!!」

 ヨーレスとの対談……。

 あいつも、セナ達を、人質にとると言う事は、望んじゃいないだろう。

 真意を、はかりたい。

 一度、北スターリーに、行くとしようか……。



「よう、ジャショウ!久方ぶりだな」

「ああ。ヨーレス王も、ヨセフに、手酷くやられたと聞いたが、元気そうで何よりだ」

 俺とヨーレスは、固い握手を交わす。

 ヨーレスは、苦笑し、

「勿論、セナ達を、俺達に売るような事は、しないだろうな?」

「当然だ!俺の家族は、誰一人、北にも南にも、渡すつもりは無い!」

「そいつは良かった。正直、ほっとしたよ」

 やはり、人質の話は、ヨーレスの真意では無かったか。

 ヨーレスは、笑い、玉座に座る。

 その横には、アルブレッド達が……。

 こちらも、心なしか、ほっとしている。

 俺は笑い、

「ローバ殿には聞いたが、人質の話は、ローバ殿の、一存か……?」

「ああ。家は、武闘派の集まりだからな!人質とか、そう言うのは好まねえ。それに、兄貴の事は、嫌っているが。セナ達の事は、皆、好いているからな。俺も、玉座は、どうにも、性に合わねえ!南北が、統一したら、出来る事なら、玉座は、他の者に、譲るつもりだ!最初は、ヨルブンの叔父貴に、任せようと思っていたが……。あっさり、断られたよ」

 ヨーレスは、そう言うと、ヨルブンの方を向く。

 ヨルブンは、肩をすくめ、

「残念だが、私は、そう言うモノが、苦手ですから。皮肉にも、この気持ちは、ヨーレスが、一番、分かるのでは無いのですか?」

「ははは!その通りだ!ジャショウ王は、本当に、上手くやっているよ!いっその事、お前が、スターリーの王に、成れば良かったのにな……。ヨセフの兄貴には、御しきれなかったか……。だからって、暴走するなっつうの!」

 かる口を叩く、ヨーレス達。

 成程な……。

 独立はしたが、北は、はなから、王の玉座に、興味の無い連中の集まりか。

 南北を、統一し。ヨーレスは、誰かに、王位を、譲るつもりであった。

 ヨーレスは、にやにや笑い、

「最初は、ジャショウに、エネスと共に、統治してもらおうと、話していたんだが……。ローバ!お前、セナに、王の資質を、見出したか!」

 全てを見透かす、ヨーレス。

 ローバは、静かに、首を垂れる。

 徐に、

「ヨーレス王……!どうか、お暇を頂きたく、本日は、ジャショウ王と共に、参りました。私は、エネスに仕官させて頂き、セナ様を、王として、育てる手伝いをしたいと思います。どうか、ご了承ください」

「ははは!そいつが、一番良い!セナであれば、ここに居る者達も、喜んで、付き従うだろう!それに、元ヨーシュアの者達もな!再び、スターリーが、一つに成る!その代り、兄貴の様に、甘やかすんじゃねえぞ?」

「はっ!お任せ下さい」

 ヨーレスは、満足そうに頷く。

 北の目的は、ヨセフの退位か……。

 彼等は、まだ、スターリーに、忠誠を誓い続けている。

 ただ一人……。

 ヨセフだけが、憎まれている。

 奴は、一人玉座で、何を思う?

 孤独な王は、誰からも理解されず、一人寂しく、消えゆく定めか……?


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