涙の代償
年を明け、事態が、急変したか……。
やはり、成るべくして、成ったと言う処だ。
ヨセフは、家臣達の諫言を無視し、諸侯の力を削ぐ為、重税を課した。
最早、ヨセフは、誰も、信用していない。
それでも、諸侯は、何時か、ヨセフが目を覚ますと信じ、その重税に耐え様とした。
ただ一人を除いて……。
ただ一人、ヨーレスだけは、兄の暴挙を、許す事が出来ず、真っ向から、対立したのだ。
それに対し、ヨセフは、徹底していた。
自らの弟で在ろうと、裏切りは許さない。
諸侯に、そう知らしめる為、軍部に属していたヨーレスを、更迭し、牢獄へと、送ったのだ。
その後も、その采配に、異議を唱えた、ローバの息子。エローラの兄を、容赦なく、斬首した。
エローラは、ローバからの手紙で、それを知り、号泣。俺も、また、静かに怒った。
ヨセフが、最後に見せた、あの背中は、まやかしであったか?
これでは、正に、暴君では無いか!
俺は、ヨセフに、引導を渡す為、静かに立ち上がる……!
しかし、それより先に、
「急報!ラセス家、セバネス家、謀反!ヨーレス様を救出し、ユーロンへと、逃亡しました!そして、ユーロン、ロストゥーヌ、エルドア、挙兵!他領も、それに同調し、ヨーレス様を旗印に、北スターリーを建国!独立が、成されました!」
「早いな……。ヨセフの方……。南スターリーと、呼べば良いか?そちらの対しては、警戒を強めろ!北スターリー、ヨーレスに対しては、親書を送る!内乱には、直接、手を出さないが、必要とあらば、援助は送る!済まないが、モヤミに言って、更に、詳しい情報を、集めてもらってくれ!」
「はっ!!」
ヨセフよ……。
斬っては為らぬ者を、斬ってしまったな。
エローラの兄か……。
少し、心の整理を付ける為、彼女には、休養が必要だな……。
それに……!
エローラの事は、よく知っているつもりだが。万が一、セナ達に、危害を加える様な事が有れば……。
頼むから、杞憂で終わってくれよ……。
エローラと言う女性を、計り誤っていたか……。
エローラは、強い女性だ。
知ってはいたが、俺が思うより、ずっと強かった。
たった一日、涙を流し、兄の死を、悼んでいた。
だが、次の日から、何時もの彼女に、戻っていた。
無理をしているのか……?
ヨルムとフィールは、大いに嘆き、エローラに対して、一族集まり、膝をついて、首を垂れた。
しかし、エローラは、優しく笑い、
「セナ様……。貴方は、立派な、王に成って下さい……!人々の心が分かる、強い王に!そうして下されば、我が兄の死も、浮かばれます!どうか、貴方は、強くて優しい、王と成って下さい!」
セナは、エローラに抱きしめられて、大声で泣く。
まだ、何の事か、分からぬであろう。
しかし、セナは、
「エローラお姉ちゃん、ごめんなさい!パアパが、悪い事をしたんでしょう?エローラお姉ちゃん、僕、ジャショウみたいな、王様に成る!だから、もう、泣かないで!」
その言葉に、誰もが俯き、涙を流した。
俺もまた、目を背け、怒りに震える。
エローラとセナは、抱きしめ合い、大声で、泣き続ける。
やはり、エローラは、無理をしていたのだ。
ヨセフよ……。
エローラとセナの、涙の代償、これは、高くつくぞ……!




