閑話 平和な地獄で
何度も繰り返される、亡者の断末魔。
地獄は、今日も、通常運転。
名無しは、鬼達に混ざり、こん棒片手に、亡者達を、追い回す。
その隣には、地獄犬の、ふわちゃんが。
ふわちゃんも、子供が出来て、張り切っているのだろう。
亡者の手を引き千切り、遠吠えを上げる。
名無しは笑顔で、引きちぎられた手を拾う。
「良かったね♪ふわちゃん。この腕は、子供達の、おやつに成るよ♪」
「わふっ!」
名無しとふわちゃんは、顔を見合わせ、にっこり笑う。
一人と一匹は、遊び疲れて、その場で、寝転がる。
これには、鬼達も、呆れ顔だ。
ここは地獄……。
天国とは、一番遠い場所。
しかし、この一人と一匹は、亡者達の叫びを、子守歌に、その地獄で、眠っているのだ。
誠、呑気なモノだ。
そして、何時も通り、
「こら!名無し!わらわの側を、離れるでない!」
「あれ?イザナミ様。おはようございます♪」
「何が、おはようじゃ!ふわも、子供達が、腹を空かせているぞ!」
「あっ!そう言えば、僕達は、ふわちゃんの子達の、ご飯を取りに来たんだ!」
「わ、わふっ!」
名無しは、慌て、近くの亡者を、切り刻む!
「こいつ一匹で、ふわちゃんの子達、満足するかな?」
「馬鹿を言うでない!後、二、三匹、切り刻んで来るのじゃ!」
「は~い!」
名無しとふわちゃんは、走り出す。
まったく、地獄は、今日も平和だ。
地獄で笑う、名無しと言う少年……。
イザナミも笑い、その少年の背を、温かな眼差しで、見守っていた……。




