閑話 裏切り……!
「ヨーレス殿下!お怪我は、ありませんか!?」
「いつつ……。兄貴の奴、手加減無しかよ。まさか、諫めただけで、牢屋に入れられるとはな……。それより、ローバとアルブレッド。お前達が、俺を助けて、大丈夫なのかよ?」
「心配なされるな。最早、ヨセフ閣下には、付いて行けぬ!今、我が愚息が、リリイ様と共に、一族をまとめ、退路を作っています。ロンベル殿も、ヨルブン大公と共に、兵を挙げました!急ぎ、合流いたしましょう!」
「私の方も、一族を、スターリーの街から、退避させております!軍の一部が、ヨーレス殿下を慕い、暴動を起こしております。これに乗じて、ここから、脱出しましょう」
「ははは……。兄貴の、懐刀である、お前達を、信じろと言うのか?俺を利用し、ロンベルの親父達の懐に潜り込み、兄貴の兵を、招き入れるつもりじゃ無いのか?」
ヨーレスは、真っ直ぐ、ローバ達を見つめる。
しかし、そんな、ヨーレスの心配も、ローバが、見せたモノにより、杞憂に終わる。
一つの、四角い箱……。
ローバは、おもむろに、その箱を開ける。
「っ!?」
ヨーレスは、言葉を失った。
ローバは、涙を流し、震えた声で、
「我が、息子です……。ヨーレス様に対する、ヨセフ閣下の処置に怒り、私の制止を振り切り、御諫めに行きました……。その結果が……!」
「兄貴は、本当に、壊れてしまったのかよ!?」
そう、箱の中には、ローバの息子の、生首が……。
その生首は、怒りの形相で、虚空を睨んでいる。
アルブレッドも、俯き、震えている。
今まで、ヨセフの暴政に、必死に耐え、仕えて来た、二人に対しての、最大の裏切りだ。
アルブレッドとローバが、裏切ったのでは無い!
ヨセフが、裏切ったのだ。
ヨーレスは、痛む体を庇いながら、その首を、強く、強く!抱きしめる。
「馬鹿野郎!俺なんかの為に、死んじまうなんて!俺なんかの為に……!済まない!本当に済まない!!」
ヨーレスは、声を殺し、心の底から、涙を流す。
怒りの形相に変わり、
「この償いは、兄貴の首で、必ず返す……!」
血を分けた兄弟の、完全な決別。
スターリーは、嘗てない、混乱の世に、変わる事だろう。
地獄が、足音を立てて、ゆっくりと、近づく……。




