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天翔雲流  作者: NOISE
降りかかる火の粉
1821/1865

茨の道

「兄上が、あれほどまでに、ジャショウ君の事を、嫌っていたとは……」

「んあ?嫌っているのとは、少し違うんじゃないかな?俺とヨセフは、違う様で、よく似ている。ただ、優先順位が違い、価値観が違うのだ。これは、産まれた境遇の違いだ。本質は、似た様なモノだよ。人々の笑顔が、何よりも好き!俺もヨセフも、人々を笑わせる、道化の様なものだ」

「道化ですか……。兄上には、難しい、役目ですね……」

「ああ、だから、癇癪を起したのだ。変わった奴だよ。優雅に踊れる癖に。無様に踊る俺を、嫉むなんてよぉ……」

「ジャショウ君!それは、少し違います!舞台の上でしか踊れぬ兄上は、舞台を降りて、民達と踊る君に、嫉妬したのでしょう。今思えば、哀れな人です」

「いや、もう、哀れむ必要は無い!去り行くヨセフの背は、王の背であった!ただ、警戒をしていた方が良い!あれは、王である為に、非情に成るぞ……!スターリーは、しばらくの間、荒れるかもしれぬな」

「そうですか……。スターリーは……。私達の愛した国は、破壊を経て、生まれ変わる事が、出来るのでしょうか……?」

「さあな……?それは、ヨセフ次第だろう。俺に、妻子を預け、鬼と成ったのだ。何が壊れ、何が残るか、俺にも分からん……」

 ヨシカは、俺の言葉に、寂しそうに笑い、静かに目を瞑る……。

「壊し続けた男に、何かを守る事が出来るとは、私には、到底、思う事が出来ません。ましてや、何かを創るなど……」

 ヨシカの言葉に、俺は、何も答えなかった。

 何も見えない……。

 今から、ヨセフが、何を成せるか、俺にも分からない……。

 ただ、スターリーは、分裂するだろう。

 ヨセフが言った通り、万人に、愛される人間など、この世に存在しない。

 ヨセフは、俺を非難したが……。

 ヨセフは、それ以上に、多くの者から、恨みを買っている。

 場合によっては、多くの血が流れるだろう。

 それでも、俺は、見届ける……。

 ヨセフが、スターリーに、何を残すか?

 今はただ、見守るだけだ……。

 ああ……。

 もっと早く、腹を割って、話すべきであった……。

 こんな結末を、望んじゃいなかったのだがなぁ……。



 ヨセフとの、金色の誓いが、消失した。

 本当の意味で、ヨセフと俺は、決別したのだろう。

 少なくとも、最初の頃は、ヨセフも、俺の事を、信じてくれていた。

 しかし、多くの問題の中で、互いの心は、離れて行ったのだ……。

 あの時の言葉は真実で、そして、現状が、現実なのだろう。

 不変のものは、この世に存在せず……。

 最早、俺とヨセフは、同じ道を、歩む事は無い。

 さらばだ、ヨセフ。

 俺を否定したお前も、多くの血で穢れ、それでも、玉座に座るか……?

 お前が、歩もうとしている道は、血で穢れた、茨の道よ。

 必ず、多くの血が流れよう。

 お前は、聡い男だ。

 それが、分かっていたから、俺達を、取り戻そうとした。

 また、俺に、血を浴びさせるために。

 自分に変わり、穢れる者を、必要とした。

 お前は、上手く、隠して居るつもりだが。そんな、浅ましい心は、多くの者達も、知っている。

 故に、人々の心は、ヨセフの下から、離れたのだ。

 その心を、繋ぎ止める為に、お前は、多くの血を流す。

 血を嫌うお前は、常に、最悪な選択をし。今までは、俺に、汚れ仕事をさせていた。

 しかし、今回ばかりは、お前自身が、血で汚れ、過ちを、正さねば為らない。

 これは、粛清でも無く、ましてや、聖戦でも無い!

 ただの、弾圧だ!

 多くの血が流れ。多くの者が、君を、憎むだろう。

 後の世で、お前は、暴君として、語られるかもしれない。

 それでも、歩まねば為らぬ道だ……。

 ヨセフよ……。

 今、お前の目には、何が映っているのだ……。


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