茨の道
「兄上が、あれほどまでに、ジャショウ君の事を、嫌っていたとは……」
「んあ?嫌っているのとは、少し違うんじゃないかな?俺とヨセフは、違う様で、よく似ている。ただ、優先順位が違い、価値観が違うのだ。これは、産まれた境遇の違いだ。本質は、似た様なモノだよ。人々の笑顔が、何よりも好き!俺もヨセフも、人々を笑わせる、道化の様なものだ」
「道化ですか……。兄上には、難しい、役目ですね……」
「ああ、だから、癇癪を起したのだ。変わった奴だよ。優雅に踊れる癖に。無様に踊る俺を、嫉むなんてよぉ……」
「ジャショウ君!それは、少し違います!舞台の上でしか踊れぬ兄上は、舞台を降りて、民達と踊る君に、嫉妬したのでしょう。今思えば、哀れな人です」
「いや、もう、哀れむ必要は無い!去り行くヨセフの背は、王の背であった!ただ、警戒をしていた方が良い!あれは、王である為に、非情に成るぞ……!スターリーは、しばらくの間、荒れるかもしれぬな」
「そうですか……。スターリーは……。私達の愛した国は、破壊を経て、生まれ変わる事が、出来るのでしょうか……?」
「さあな……?それは、ヨセフ次第だろう。俺に、妻子を預け、鬼と成ったのだ。何が壊れ、何が残るか、俺にも分からん……」
ヨシカは、俺の言葉に、寂しそうに笑い、静かに目を瞑る……。
「壊し続けた男に、何かを守る事が出来るとは、私には、到底、思う事が出来ません。ましてや、何かを創るなど……」
ヨシカの言葉に、俺は、何も答えなかった。
何も見えない……。
今から、ヨセフが、何を成せるか、俺にも分からない……。
ただ、スターリーは、分裂するだろう。
ヨセフが言った通り、万人に、愛される人間など、この世に存在しない。
ヨセフは、俺を非難したが……。
ヨセフは、それ以上に、多くの者から、恨みを買っている。
場合によっては、多くの血が流れるだろう。
それでも、俺は、見届ける……。
ヨセフが、スターリーに、何を残すか?
今はただ、見守るだけだ……。
ああ……。
もっと早く、腹を割って、話すべきであった……。
こんな結末を、望んじゃいなかったのだがなぁ……。
ヨセフとの、金色の誓いが、消失した。
本当の意味で、ヨセフと俺は、決別したのだろう。
少なくとも、最初の頃は、ヨセフも、俺の事を、信じてくれていた。
しかし、多くの問題の中で、互いの心は、離れて行ったのだ……。
あの時の言葉は真実で、そして、現状が、現実なのだろう。
不変のものは、この世に存在せず……。
最早、俺とヨセフは、同じ道を、歩む事は無い。
さらばだ、ヨセフ。
俺を否定したお前も、多くの血で穢れ、それでも、玉座に座るか……?
お前が、歩もうとしている道は、血で穢れた、茨の道よ。
必ず、多くの血が流れよう。
お前は、聡い男だ。
それが、分かっていたから、俺達を、取り戻そうとした。
また、俺に、血を浴びさせるために。
自分に変わり、穢れる者を、必要とした。
お前は、上手く、隠して居るつもりだが。そんな、浅ましい心は、多くの者達も、知っている。
故に、人々の心は、ヨセフの下から、離れたのだ。
その心を、繋ぎ止める為に、お前は、多くの血を流す。
血を嫌うお前は、常に、最悪な選択をし。今までは、俺に、汚れ仕事をさせていた。
しかし、今回ばかりは、お前自身が、血で汚れ、過ちを、正さねば為らない。
これは、粛清でも無く、ましてや、聖戦でも無い!
ただの、弾圧だ!
多くの血が流れ。多くの者が、君を、憎むだろう。
後の世で、お前は、暴君として、語られるかもしれない。
それでも、歩まねば為らぬ道だ……。
ヨセフよ……。
今、お前の目には、何が映っているのだ……。




