第46話:再び打ち上げ、サイゼにて
【作者コメント】
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さて、その後……
転移ポータルによって外界に帰還した一行は、この国を救った英雄として、協会から惜しみない賛辞を受けることとなった。
結論から言えば、外界に広がり続けるダンジョンという異常を引き起こしたのは、深奥に潜む魔王レプリカのせいだった。
捕獲したモンスターを使い検証を行ったところ、それは外界に出た瞬間に黒煙となって霧散したらしい。つまりアーシオダンジョンの異常、すなわち日本崩壊シナリオは完全に回避されたのだった。
その分、報酬もすさまじかった。
具体的な額は割愛するが、首都圏ではない地方に一軒家を建てても少しお釣りが来る程度の金額が、パーティ、トゥルートーマスに支払われることとなったのだった。
で、そのお金の分割案だが……
途中でパーティに加入した絵麻、外野でナビを行っていた陽菜も含め、均等に分配しようという案を誠は最初に提案した。
ただし魔王を撃破して、実質的にこの国を救った誠の取り分が皆と同様なのは流石におかしいという話になり、最終的には彼の取り分を多めにし、残りを他のメンバーが分けるという形で同意がなされたのであった。
ちなみに協会の検閲の下、陽菜が編集したアーシオダンジョン攻略動画は、国境をまたぎ世界中でバズることになった。
その勢いはすさまじく、
公開から一時間で百万再生。
半日で一千万。
翌朝、五千万。
――と、いった具合に加速度的に膨れ上がった。
配信を期待していた日本勢のコメントは、まあ、なんというか、いつも通りのものだった。
〝やっぱトーマスTUEEEEEE!〟
〝相変わらず朝香ちゃんは色々デカい!〟
〝小鈴ちゃんの猫耳prpr〟
〝↑通報しますた〟
〝この褐色のメスガキが俺を狂わせる! おじさん、ざぁこざぁこって思い切り罵られたいんだけど!?〟
etc……
やはり情操教育上よくないので、少女たちにはあまり見せない方がいいかも誠は思った。
一方、海外の反応はこんな感じ。
〝この男はアメイジングだ。同じ人間と思えない〟
〝彼が最上位ランカーじゃないなんて馬鹿げてる。日本のダンジョン協会は何をやっているんだ?〟
〝みんな、注目してください。この男は確かに驚異的ですが、それに付いて来ている少女たちの活躍も尋常ではない〟
〝まるで奇跡を見ているようだ。この男と彼のパーティは間違いなくGOATです〟
などなど……
ダンジョン範囲拡大の件は協会によって秘匿されていたものの、初のアーシオダンジョン攻略者ということでメディアからの取材も殺到した。そのため1週間ほど誠はそれらの対応に忙殺されることとなったのだった。
そういったものが片付いた後、再びトゥルートーマスの打ち上げが行われる運びとなった。
選ばれたのは本格イタリアン……ではなく、またもサイゼリヤ。
正直、今回の報酬+動画の収益を考えれば、もっとグレードの高い店に行っても全然よかったのだが、細かい作法などを求められる場では息抜きしにくいということで、この場所が選ばれたわけである。
で、行われたのが席争い。
5人のメンバーが座るため、6人掛けテーブルのソファかチェアに3人に掛けることは確定していた。
小鈴と朝香が誠の隣に座るのを求めるのは、今までの流れを考えれば、当然といえば当然だった。問題なのは絵麻である。なんと彼女は子供がやるように、彼の膝の上に座ることを要求したのだ。
「それはズルいッス! 卑怯ッス! それがありならウチもそこがいいッス!」
「そうですよ! わたしもお師様の膝の上でミラノ風ドリア食べたいです!」
弟子たち2人の要求に、いや絶対に無理があるだろ、と誠は思った。
年齢の割に比較的小柄な小鈴がそれをやるならともかくだ。朝香がそれを行うことは物理的に不可能といっていい。
そこで誠は「俺の膝の上に座るのはナシ!」ときっぱり要求をつっぱねた。
結果3人の席争いは、ジャンケンという最も公正な手段で解決することになった。こうして小鈴と朝香が両隣、向かいに絵麻、余った席に陽菜という構図ができあがったわけである。
「モテる男はつらいね、おじさん」
「茶化すんじゃないよ、本当に困ってるんだ」
クスクスと笑う姪っ子に誠は呆れた目を向ける。
とはいえ、だ。
こうしてメンバーが欠けることなく皆で無事に生還できたのは、奇跡といっていいだろう。もし1人でも死者が出ていれば、こんなふうにみんなでワイワイしながら打ち上げすることはできなかった。
ああ、今回は守れたな……
ランディ、シルヴィア、アリオス、レヴィン。
かつて旅したパーティメンバーと楽しく飲み明かした光景が、誠の脳裏にふとよぎる。
そこには一抹の寂しさがあったが、それよりも今は仲間とともにすごせる喜びが大きかった。
まあ、なんにせよ、平穏は戻った。
協会からの謝礼+動画収益があるおかげで、しばらくはダンジョンとは無縁のスローライフを送れるはずだ。
今回はかなり頑張った。
少なくともここ半年ぐらいは、借りているアパートでごろごろしても文句はないのではなかろうか?
なんていうことを思いかけた時、コツコツという足音を響かせ、黒いスーツをぴっしり纏った人たちがテーブルの前にやって来た。
……猛烈に嫌な予感がする。
それは、なぜか? その先頭に立っていたのは他ならぬ黒沢女史だったからだ。
「ご歓談中にすみません。ですが、緊急のお話があります」
「……。……なんでしょう?」
「実は某県の某ダンジョンにて、前回とは違う種類の異常が発生しまして」
「そ、そうですか。それは大変ですねぇ」
「ええ、本当に大変なのです。私が、ここに来た意味は大体察せられますね?」
「えっと、その……念のために聞いておきたいんですが、それ放置すると、またこの国がヤバイやつですか?」
「ヤバイやつです。ですので藤増さん。どうか我が国を助けるために、再びご協力願えませんか?」
黒沢のそんな声を聞き、誠は文字通り頭を抱えた。
「お師様、仕方がありません。けれど、わたしが付いています」
「もちろん、ウチもひと肌脱ぐッス!」
「はぁ~、めんどくさ。でも、しゃあないか。マコトが行くなら、あーしも行くし」
3人はすぐに覚悟を決める。
一難去ってまた一難。
また新しい冒険が始まる。
異世界帰還者、藤増誠が平凡な日常を送るのは、当分先になりそうだった。
【第一部完】




