↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
42/76

第42話:分断されし戦場①

 魔王のフィンガースナップにより3人が飛ばされたのは、直径50メートルはある闘技場のような場所だった。


 ただし観客は皆無である。


 その闘技場は、まるで人骨を切り出して造ったようなグロテスクな外観と色合いをしていて、それを見た絵麻は思わず「キモっ!」と、ドストレートな感想を言う。


「確かに、気分悪くなるッスね。ところで誠さんはどこに行ったんスかね?」


「あれじゃない、多分? 何、言ってんのかわからなかったけど、なんとなくあーしらが邪魔だから、とりあえず隔離するって言ったように聞こえた」


「何か根拠はあるのですか?」


「女の勘」


「我々も女なのですが……」


 理屈や理論を優先する彼女にとって、そういう根拠のない勘は眉唾もいいところであった。


 と、ふいに、3人の向かい側にある巨大な柵がガシャンと開く。


 そこから、のそのそ這い出て来たのは、まるでトカゲのような四足歩行の胴体に、ドラゴンの首を3つ付けたかのような奇妙なモンスターの姿だった。


 遠目にもわかるほど、かなり大きい。

 多分、尻尾まで合わせれば全長は5メートルぐらい。首をピンと伸ばした状態で測定すれば10メートルぐらいあるのではなかろうか?


「なにあれ、ヒュドラ?」


 絵麻はけげんな顔をする。

 それが魔王の〝ペット〟なことを、ペルボリア語話者でない彼女は知らなかった。


「大した魔物じゃないッスよ。現に、うちらは誠さん抜きでビッグトレントマンを倒した実績があるスから」


 朝香が楽観的に言う。

 しかし唯一、小鈴だけが、それを見てブルブルと震えていた。


「あのモンスターは、ドラゴベロスです」


「ドラゴン+ケルベロスってこと? 随分、安直なネーミングじゃん」


「確かに名前は安直ですが、決して舐めてはいけません」


「もしかして、強いモンスターッスか?」


「強いどころではありません。あれは最上級のSランカーがようやく相手にできるような伝説級レジェンドクラスのモンスターです」


 小鈴のそんな発言に、2人の顔は強張った。


   ◆◆◆


「フハハハ! どうした勇者よ? 動きがまるでノロマだぞ? 貴様、本当に我を討ったのか?」


 一方、誠と魔王ディアブロシア――正確にはその複製――は、それぞれの剣をぶつけ合い、命のやり取りをしていた。


 魔王は誠の攻撃を遅いだなどと揶揄したが、実際のところそうではない。


 もし素人が2人を見たら、彼らのあまりの素早さに、一体、何が起きているのかさえも理解することはできなかったろう。


 誠の名誉のためにあえて釈明をするのなら、彼の動きはノロマどころか並のSランカーを凌駕するほどのスピードを発揮していた。


 彼の動きが遅いのではない。

 相手の動きが俊敏はやすぎるのだ。


 ここには最早それはないが、もしもドローンカメラがあっても、2人の姿を追うことは不可能だったに違いない。


 それほどハイレベルな戦いだった。

 だが、しかし、誠は魔王と手合わせする上で、彼女が単なる模造品、つまりレプリカであることを意識せざるを得なかった。


 そう、これほどの実力があってなお、本物の魔王ディアブロシアと比べ、彼女あまりに弱すぎた。


 本家の魔王を討てたのは仲間たちの奮闘によるためだ。


 戦士ランディが斧を振り、魔法使いのシルヴィアが強力な魔法を連打して、神官のアリオスが彼らを回復、そして射手レヴィンが妨害をするといった皆の連携があったために、誠は魔王を倒すという最後の一番重要な役目を担うことができたのだった。


 だから、そう。

 もしも当時の仲間たちが共に戦ってくれたのならば、目の前の敵は取るに足らない〝やや強い敵〟にすぎなかったろう。


 けれども今の誠は単騎。

 レプリカに過ぎない魔王の攻撃を必死に防ぐことしかできない。


「ああ、わかる。わかるぞ、マコトよ。貴様、全盛期は過ぎているな? 大方、我を倒した後、修練もせずに怠けておったのだろう」


 誠は図星を突かれてしまった。


 ああ、そうだ。

 まともに剣を振るうのは魔王を倒した5年前までさかのぼる。


 その間、誠は国により英雄としてまつり上げられた。そのことに嫌気が差して逃げ出した彼は、ある小村で農夫としてスローライフを満喫したのだ。


 この世界に帰ってから挑んだのも、比較的難易度が低いとされるコニュードダンジョンのみであり、強敵と戦ったりはしていない。


 自分を勝手に師と慕う2人の少女に訓練をしたが、それが自分の修行になったかといえば、首を傾げざるを得ないのである。


 とはいえ、だ。

 弟子の指南を行うに辺り、全く何もしなかったわけではない。


 というのも、こちらの世界には、向こうの世界に存在しない独自の武技や魔法があったのだ。


 弟子に訓練をつける以上、自分は強者であらねばならない。そんな思いは誠にとある魔法を覚えさせるモチベーションに繋がったのだった。


 誠は魔王との剣戟の中で、一瞬の隙を見て、剣をパリィ。

 無防備になった敵の脇腹に、この世界独自の魔法を叩き込む。


三指三色超指玉スリーフィンガーストライクッ!】


 彼は詠唱の手間を省き、無詠唱でそれを敵へと放つ。


 直後、3色の異なる魔法が魔王の腹に命中した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。