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アヤカシの末裔  作者: 遠野まみみ


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真実

丘の上まで来ると花畑があった。

ニリンソウやコマクサが咲いている。


「わっ。見たことない花が咲いてる」さえが感動している。

「コマクサは高山植物だけど、保護のためにここに植えているの。

ここは標高1500メートルくらいだけど、本当は2000~3000メートル級の山に

自生してるんだって。ニリンソウも都会じゃあまり見ないかもね。」

美和の説明に「おおー」と感嘆の声を上げるさえ。


「お昼食べよう。お母さんが作ってくれたの」

岩に座って美和がリュックを開ける。

「わっ。美味しそう。野菜がいっぱいで嬉しい」


お弁当を食べながら、だんだんと美和の表情が暗くなっていく。

「さえ…。思い出さない?」

「何を?」

「そのお弁当、お母さんのおまじないが込められているの。

忘れてしまった事を思い出すおまじない」


さえの箸が止まる



「わたし…わたしは…」

さえの脳裏に病院のベッドに横たわる自分と、

さえの母が泣き崩れている姿が蘇った。


自分が母の傍に立って、自分と両親を見ている…?


病気だった。


「もっと早く気が付いて、早く病院へきたらこんな事にはならなかったのに。

ごめんねさえ。ごめんねぇ」

泣く母をぼんやり見ていたが、気が付くと教室にいた。


「おはよう」とクラスメイトに声をかけても誰も返事をしてくれない。

「ムシしてる?なんで?なによっ。もういいや」と

窓の外を見ていたら声をかけてくれた人がいた


「ひとり?わたしもなの」



「最初はわからなかった。さえちゃんといるのが楽しかった。

でもアイスを食べに寄り道した時、影がないのに気が付いた」

美和は淡々と話す。

「さえちゃん、逝くべき場所へ行かなきゃいけない」


「嘘だ。なんでそんな嘘を言うの?だってだって、ちゃんと家では

お母さんと話を…」話…していない?

いつも母はうつむいていて、泣きそうで、自分と目を合わせなかった。


いや、自分の存在に気が付いていなかった…?

話していたのは独り言だ。


「…だって、ご飯だって食べてるし、美和と話もしてるのに」

さえは半泣きだった。

「それはわたしの能力。霊能力。生きている人もそうでない人も同じに視えて、

話ができてしまうの。さえが食べているのは【気】で実際には食べていないの」


「…だって、村の人は私が視えていたじゃない」

「多嘉良さんは同じ霊能者だから。志乃おばあちゃんは同じ死者だから視えた。

早瀬さんや梓ちゃんや戸隠さんは視えてない。

だから早瀬さんたちはさえちゃんと話さなかったし、

戸隠さんには『ここに』って紹介したの」


さえはうつむいたまま黙ってしまった。


「橘さんを突き飛ばしたとき、いけないって思ったの。

普通、霊は生きた人間に触れられない。

でもできてしまうのは能力を付けているという事。

「憎しみ」や「怒り」という負の感情が大きくなって、

能力になって【負】に飲まれ悪霊になる。

このままじゃ何もわからなくなって、人に仇なす存在になってしまう。

だから、お母さんや多嘉良さんに相談して

さえちゃんにここへ来てもらったの。

多嘉良さんが助けてくれる」


「イヤだ」さえが絞り出すようにつぶやく。


「イヤだイヤだイヤだ。もっといろんな事したい。ライブ行って美和と遊んで

もっといろんな事をしたい」

さえは叫びながら走って山を下って行った。


「さえちゃん!。待ってさえちゃん」

さえちゃんが怒りの感情を出したのは、橘さんを突き飛ばしたときだ。

つまりわたしのためにそうなった。

わたしのせいで悪霊なんかにならないで。


そう思いながらさえを追う美和だった。


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