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34. ビルの家と奥さん


 門をくぐるとそこに先ず広がっていたのは商店街だった。殆どの店が活気づいており、食べ物を売っている店だった。


 串に刺した肉をたっぷりとタレに搦めて肉汁が滴る匂い…や、麺料理だろうか…トマトを使ったソースがかけられており、仕上げにチーズをたっぷりと惜しげも無くかける。他にも色々といい匂いが漂ってきてつい唾液が溢れ出てしまう。


 「嬢ちゃん…」


 残念そうな目でそれらを見送る黒金。と白金。


 空きっ腹には拷問のような商店街を抜け、右へ左へと進んで行く。…さっきまでの活気のある商店街とは打って変わって、静かな住宅街へと一頭と二人は到着した。


 「ここだぜ。白金はそこの庭にはなしといて良いぞ。逃げるのが心配ならロープを貸すがァ…」


 ふと、黒金は考える。白金はここで大人しくしているだろうか…?目の前に美味しい物があればそっちヘフラフラと寄っていく姿が脳裏に浮かんだ。


 「ロープ貸して欲しいな。ちょっと不安かも」


 スタッと白金から降りた黒金はロープをビルから受け取る。


 「ヒンッ」


 嘘だろ!?といった顔で顔を上下に振る。


 「あァ、嬢ちゃん、無口の作り方知らねぇだろ。簡単なもんだがちょっと貸してくれ。」


 そう言ってロープをまた受け取ると、器用にロープの端で輪っかを作り、その輪にロープの端を入れた。


 「…完成だァ。ちょっと付けさせてもらうぜ白金」


 白金は絶対に嫌だ!と言わんばかりに顔を上に上げ、ビルが下から鼻先を掴もうとすると、ヒョイッと顔を上げる。


 サッヒョイッ、サッヒョイッ……


 「白金…大人しくして?」


 首元を叩いて愛撫してやると、やっとビルに捕まった。


 ビルはサッと輪っかを鼻先に通し、グルっと耳の後ろまで通し、また輪っかの中へロープを入れる。

 ここにコツがいくつか有るのだが割愛させてもらう。


 そうして引っ張れば引っ張るほど締め付けが強くなるような、無口をつけられ、白金は観念した。


 ビルはそのまま庭の木にロープを結び付け固定した。そこそこ長さがあるため、庭の中を歩く分には困らないだろう。


 白金はいじけたようにロープを口の中で弄ぶ。が数秒後、直ぐに庭の草を食べ始めた。自動草刈機の誕生だ。


 それを見届けたビルと黒金は家の中へと向かった。



 「おーい!帰ったぞ!客が居るんだがァ、大丈夫か」


 と玄関で呼ぶと、


 「あらあら、ちょっとあなた!先にそう言うのは言ってちょうだい!もう!お人好しなんだから」


 ペシッと奥さんはビルの頭を叩く。


 「あァ。すまねぇ。俺ァが悪かったァ。んで紹介するわ、フード取ってくれ。んで、この嬢ちゃんが黒金」



 「あらあらあらあら。すっごい可愛い子じゃないの!嫉妬しちゃうわ?黒金ちゃんね!覚えたわ!私の名前はクカルよ!クカおばさんって呼んでくれると嬉しいわ!こんな可愛い子は歓迎よ!ようこそ我が家へ!」


 「クカお…ねえさん?」


 ちなみにまだ20代である。


 「まぁ!いい子ね!夜ご飯追加で作るから先にお風呂に入ってらっしゃい。ビル、案内してあげて!」


 「ありがとうございます。お世話になります」


 とぺこりと頭を下げると、満足そうな顔をしたクカおば…ねえさんは台所へと消えていった。


 「…まぁ。ゆっくりしてってくれやァ。」


 ビルも、奥さんが好きでたまらないと言った笑顔で笑う。


 ビルの家は一軒家で、かなり大きい。木材がふんだんに使われており、天井が高い平屋である。綺麗な家だ。家に風呂が有るのはそこそこ珍しいだろう。この水源が豊富なカスラテ街ならではとも言える。それに、ビルはこの街で一番の冒険者なのでそこそこ稼ぎがあるのだろう。


 靴を脱ぎ、ペタペタと廊下を歩いて行く…


 



次の話…お風呂…?


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