18.辺境伯屋敷
辺境伯のお屋敷を眺める。でっかい。
しかもここにあるのは迎賓館的な物で、実際に辺境伯が住んでいるのはまた別の場所らしい。
ひっろい。金持ちってやっぱり違うな。
「ウチにもお客様迎えるところってあったっけ?」
「一応ありますよ。屋敷の端にもう一つ建物があるでしょうアレです」
「あの赤茶色の屋根の?あそこ倉庫じゃなかったんだ」
しょうもない話をしつつ案内された部屋に用意されていた椅子に座る。辺境伯は向かいに座るのか部屋の一番奥、上座に1つだけある椅子に座るのか。どっちだろう。
「……思ってた以上に驚いてないな」
「驚く要素ありました?」
隣に座っている門番長さんがこちらを睨む。え、なにこわい。
「こういった贅を凝らした屋敷は格下貴族を威圧するためでもあるんだが」
「あー……いや、こわいなーって思ってますよ?」
財力すっげとは思っていますとも。
前世の記憶で迎賓館や華族の屋敷を見にいってたり、映像とかで世界の豪邸とか見たこともあるせいでこういう威圧というか財力誇示ってどこも一緒になっちゃうものなのかもなーって思うだけで。
強いていうなら玄関ホールに飾ってたワイバーンの剥製は異世界特有かもね。
ウチの家も玄関に宝石みたいな角を背中に生やした熊飾ってるし。もはやゴジラっぽくてカッコいいヤツ。
「普通は後ろの若い騎士みたいになる」
俺の後ろにいるジェードを見るとカチンコチンに固まってた。おお……珍し。
大丈夫か声をかけると震えた声が返ってくる。
「壊した場合の弁償、どれくらいになるかわからなくて、怖い」
「なんで壊す前提思考なの?」
「これもこれでちょっと違ったな……」
執事みたいな格好をした人が辺境伯が来るという報告をして、部屋を出ていく。
それと入れ替わるようにメイドさんがお茶を運んで俺と門番長さんの前に置く。
綺麗な赤色だな。飲もうとするとメアリが俺のお茶をヒョイと取り上げて飲んだ。
「あら、フォートナムの早摘み。淹れた子の腕もいいじゃない」
「美味しい?」
「有名所だから味が悪かったら問題ね」
カップを手を絡ませながら返してくるのにちょっとゾワゾワとしつつ、お茶を飲む。うん。
「美味しい?」
「なんか香りが違うことはわかる。あと味が口の中でヴァーってなる」
「ンフフ、子供舌」
顎を掬いあげられて、指先で唇を撫でられる。
なんだかなあ、綺麗なお姉さんで終わらせてくれないところが実にメアリだよな。
手が俺から離れた瞬間に後ろが喧嘩しだしたのを感じつつ無視しておく。
「……凄いところで育ってるな」
「まあ、甘やかされてるなあ、とは」
「うーん、そういう認識か」
どう答えるのが正解だったんだよ今の。
先ほどの執事っぽい人が戻ってきて、辺境伯らしい人が入ってくる。
立ち上がって礼を取り、辺境伯が奥の椅子に座る。
顔を見る。ダンディというかロマンスグレーに差し掛かり始めていらっしゃる感じ。
白髪混じりの髪とおヒゲがとても綺麗に整えられている。
「さて、昨日の山火事の功労者に挨拶をして貰おうか」
「ニーエベルグ男爵代理として辺境伯にご挨拶させていただきます。アルヴィン・ニーエベルグと申します。本日はお時間を取っていただき誠にありがとうございます」
にっこりとした顔で頷く様にとりあえず及第点は取れたらしいと安堵する。
「報告は届いてはいるが、君たちの口から再度報告をして貰おう。あぁ、口調に関しては気にしなくていい」
「では時系列順に喋ってもらいましょうか」
門番長さんが指示をして、俺の後ろでジェードが動く気配と同時に声が届く。
「では僭越ながら私から報告をさせていただきます」
ジェードが山の中で騎士を見掛けたところから話し始めて、火属性の魔法による爆破から慌てて逃げたという話に続けるようにしてメアリが話し始めて、メアリ視点での爆破の様子と報告に行った流れが伝えられる。
……兵士に攻撃したことは報告しないんだな。
報告のところで門番長さんが補足をする。
そしてエディが門に入っていく際の子爵子息御一行の様子を話して、文官さんが来たことでトラブルの気配を感じて門塔へ移動。
という感じに昨日のこちらの一連の流れを話し終えた。
「うん、ありがとう。報告書と齟齬の無いわかりやすい報告だった」
「お褒めいただきありがとうございます」
代表として俺が礼を言うと柔らかく微笑んでくれる。これだけで辺境伯を良い人認定しちゃいそう。
「ニーエベルグは相変わらず質がいい。問題児も紛れているが、メアリ嬢はニーエベルグ領に迷惑をかけていないかい?」
「あら、ひどいお言葉ですわね」
「君が門の兵士に暴行したのは知ってるからね」
バレてーら。そりゃそうか。
というかメアリは辺境伯と知り合いだったようだ。さすが一応は伯爵令嬢ってところか。




