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貴族次男は書類偽装で戦場へ行く〜家族の為に頑張るぞ〜  作者: 糸魚樋


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17/22

17.辺境伯領の朝


 フワッと目覚めて、手に握り込まれた蜘蛛のオモチャに一瞬驚いて身体が跳ねる。

 すぐにオモチャと気付いて身体の力を抜いて、蜘蛛の足をムニムニと引っ張ってみる。

 手を動かして、だんだんと目が覚めてきたので布団から起きあがった。


「坊っちゃん、おはようございます」

「おはよ、コスティ。一晩ありがと」


 朝ご飯はどうすればいいか聞いてなかったな? と思ったけれどコスティが文官さんに聞いていてくれたらしく、1階に兵士用の食堂があるらしい。

 1階に行くと兵士数人が喋りながら移動しているのでそれに着いていって食堂に到着する。


「メニューは全員一緒なのかな?」

「そんな感じですね」


 配膳をしているらしい女性と目が合う。艷やかな髪をくくり上げた姿は爽やかで、豊満な肉体すらその爽やかさの添え物のような女性だ。


「おはよう! あら? ずいぶん小さい子ね、いくつ?」

「10になります。今回は門番長様のご厚意に甘えて泊めていただいたんです。辺境伯領の女性を見たのは貴方が始めてですが、美人が多いことに期待出来そうで嬉しいです」

「……口が回りすぎると逆に嘘くさいわねぇ」


 女性はニヤニヤと笑いながら、こちらに指を向けて指先をクルクルと回してくる。トンボじゃないんだけども、そんだけ口が回っていたと言いたいのか。


「けっこう本音だったんですけど」

「まあ頑張った方だから果物1つオマケしてあげる」

「やった、普通に嬉しい」


 その後に絡まれたコスティは俺以下だと酷評されてそんなんじゃ恋人に逃げられるよ!と言われていた。

 恋人いないのに、出来たとしても逃げられるらしい。可哀想に。

 食堂のご飯は普通に美味しかった。

 期待値の下限と上限のちょうど間みたいな……うん。よくある味している。

 ただ兵士向けだからちょっと味濃いかな?あと量があったのでコスティにちょっと押しつけておいた。

 こういう時によく食べるムキムキって便利だよな。


 食べ終わってお茶を飲みつつ、果物を摘んでいると門番長さんが顔を出した。

 周囲がザッと立ち上がって礼を取っている。

 うーん、昨日のアホがやっぱり例外だっただけで兵士たちは優秀なんだよな。

 門番長さんと朝の挨拶をして、少しだけ雑談をしたら文官さんが合流する。


「ニーエベルグ家御用達の宿に寄って、昨日の件を話せる人間を回収してから辺境伯のところに向かう。連絡は取っているから安心してくれ」

「はい」


 なんか手順と内容はおかしくなったけど、辺境伯に会うのは既定路線だったからまあいいだろ。

 

 宿に着いたら兵士や騎士たちに頭をかき混ぜられる。なになに!?


「皆心配していたんですよ。門塔の部屋に嫌がらせがされていたと聞いていますから」


 エディがクスクスと笑いながらコスティを労っている。


「辺境伯にお会いするので、必要なのは昨日の件を山で見た騎士、あと門の様子を見ていた騎士が欲しい」

「兵士じゃ駄目?」


 門の様子を見てた騎士はコスティだけなんだけど、流石にコスティがこき使われすぎて可哀想だよ。

 門番長さんがコスティの顔を見て、複雑そうな顔をした。


「辺境伯に会っても礼などで大丈夫な兵士はいるのか?」


 マルクスが兵士の顔を見渡す。

 新人たちがバッと地面へと目を逸らす。コラ。もっとさり気なくしなさい。

 小さくため息を吐いてエディが手を上げる。


「私が行きましょう」

「……申し訳ない」

「人手不足は仕方ありませんな」


 と、いうわけで俺、マルクス、メアリ、ジェード、エディの5人になった。

 他の奴らは待機。手を振って見送ってもらう。

 服を貴族服に着替えるか悩んで、結局止める。めんどいしいいや。

 門番長さんも服見ても何も言わんし。

 俺と門番長さんと文官さんだけ馬車に乗り込む。


「誰も乗せなくていいのか?」

「なんでです?」

「あ? そりゃ大事な子息を1人にしていいのかって」


 大口開けて呆れた声を出す門番長さんにちょっと笑ってしまう。


「辺境伯のところに連れていく人間に下手なことする馬鹿が門番長だったら問題じゃないですか?」

「……まあ、そりゃそうだが。子息を脅して子爵側に有利な発言させようとするかもしれないぞ?」


 それを俺に言ってる時点でそれは無いって分かってるしなあ。それに。


「男爵家の子供脅して何になるの。証言するのは外の騎士たちだし、そもそも今脅されたってその場で怯えて従うふりだけして、辺境伯の前で脅されたことぶち撒けたっていいんだし」

「……けっこういい性格してるな」

「子供だからうっかり口が滑っちゃうのは仕方なくない?」

「……そうだな」

「……そうですね」


 嫌なこと聞いたって顔してる2人を見て笑う。


「証言する内容で嘘はつかないよ」


 ただでさえ特大の嘘を抱えてるんだからな。必要以上の嘘を今は余計に抱えたくなんてない。

 どこから嘘の糸口が解けるかわからないんだから。


1ヶ月連載続いたヤッター!

ブクマや★はもちろん嬉しいけど、おめでとうって思ってくれる方は気楽にリアクションボタンを押してくれると作者がビチビチ喜びます。

リアクションボタンわりと好きなんですよね。

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