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貴族次男は書類偽装で戦場へ行く〜家族の為に頑張るぞ〜  作者: 糸魚樋


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12/22

12.文官さんとお話


 若くて頭脳派って感じのお兄さんがこちらを愛想笑いを貼り付けた状態で見ている。

 やだ、こわい。

 俺8歳なのでそこまで警戒するの止めていただけませんかね?


「ニーエベルグ男爵家の方たちの報告で素早く山火事への対処に向かうことが出来ました。ありがとうございます」

「騎士たちが役に立ったのなら私も嬉しいです」


ペコリとお辞儀をしあう。


「しかし、何故、町の目と鼻の先で野営を?」

「町に入ればこの人数の狩りはしにくくなりますからね」


 出入りの手続きとかがめんどくさいらしい。

 あと、入ったらすぐに辺境伯にお知らせして町中で待ってなきゃいけないから俺は出れなくなっちゃう。

 まあ、その最後の楽しみをどこぞの貴族に潰されたのだが。くそ、鼻毛伸びろ。


「……狩り? 何故狩りを?」

「なぜ……?」


 そりゃあ良い狩り場が町の近くにあれば狩りするだろ。何を言ってるんだこの人。

 しばらくよくわからないやりとりをする。

 たまに羊皮紙に何かを書いている。

 そして途中で気付いてしまったんだけど、これキレていい?


「我々ニーエベルグが山火事を起こしたことを誤魔化していると言いたいんですか?」


 は?

 キレそう。山火事起こすような馬鹿と一緒にしないで。


「……いえ、ただ、そうなのではと言う者がいまして」

「はは、山に住む我々は山火事の怖さを貴方たちより遥かに知ってますよ。いつの間にか火に囲まれる恐怖、明日からの恵みが無くなる恐怖、そんな恐ろしい、憎らしくすらある物を自ら起こす? 馬鹿にしないでほしい」


 山に暮らす人間が山火事なんて恐ろしいことを自分からする筈ない。下手すれば自分が死ぬようなことをする? 自殺志願者か?


「っ、申しわけありません……」


 やべ、周りの兵士たちもキレそうなのか威嚇してるから兵士同士が一触即発だわ。

 一度ため息を吐いて、周りに落ち着けと指示をする。


「……ウチの騎士の証言でお偉いさんの身内が引っ掛かったのかな」

「証言された家紋を照らし合わせるとハプセン子爵家の物でして、……証言をしてくれたニーエベルグ男爵家の騎士たちが山火事の対処に向かってくれた後にそこと関わりがある人間が否定を始めました」

「証言に行った騎士たちの前でしなくてよかったね。あの中にはここにいるのより喧嘩っ早いのがいる」


 そう言ったら文官が目頭を抑えた。


「……既に門に来た際に別件で数人やられています。判断が遅いし態度が悪いと言って女性騎士が門番たちを張り倒したとのことです」

「……それは、本当にすまない」


 手遅れだったか……。子爵家のことと、兵士がやられたことへの怒りも含めてこっちを悪者にしたいって感じかな。


「素直に言いますと、ほとんどの兵士は貴方たちのことを疑ってはいません。もちろんやられたことに思う者はいますが、率先して動いてくださった皆様が犯人とは思えないですから」

「言ってるのは上の方か」

「……まあ、そうです。私の上司から判断材料が足りないので取ってこいと言われここに来ました」


うーん、面倒だな。


「坊っちゃん、我々、おそらく犯人が辺境伯の町に戻っていったの見てません?それは証言にならないんですか?」


 コスティがコソッと言う。

 うん、そうだね。門が見える場所にいたから全員でアイツらじゃんってワイワイ言ってたもんね。


「ここから門の距離が見えるのですか?」


 文官がこちらの話を聞いて訝しげな顔をする。

 そりゃこんな平原なら見える。


「ウチは地形の影響で遠くを見ることにも慣れてるヤツが多いからね。じゃあ、誰かにその時の様子を報告してもらおうか」


 手で後ろの兵士たちに指示をする。誰が言うかと少しコソコソと話し合いが聞こえて、テオが出てくる。

 補助系の風魔法が上手くて馬が好きな一児のパパである。


「では、僭越ながら、私が代表してその際の様子を」


 ちょっと緊張してるかな。ウチの領では報告に慣れてても他所の場所になるとちょっと勝手が違うもんな。


「マルクス隊長たちを見送って、一刻ほどは経った頃に山から降りてきた集団がいました。フルアーマーが4人、その後ろに貴族らしい青年が2人、髪の色は揃って唐黍色でクセがある髪質が肩に付かない程度、兄弟ですかね? 後ろを見ながら焦った様子で周囲に叫んでいました。それを嗜めるような濃い茶色のローブの魔術士? 黒髪で長い髪をしていましたね。そしてグッタリとした2人の騎士、その騎士を支えるフルアーマー。最後方におそらくあの集団のリーダーと思われるお強い方がいらっしゃいました。あの方だけはこちらが見ていることにも気付いておられるようでした」

「補足すると、旗持ちが1人いたが、その旗は隠していた。あとグッタリとした騎士はたぶん魔力切れじゃないかな」

「フルアーマーが焦げている者がいたので火に巻かれたのでしょうね」


 俺とコスティで少しだけ付け足し。

 文官は凄い速度で文字を書き続けている。証言を証拠として残してくれているんだろう。

 そして文官の後ろで向こうの兵士の1人が驚愕した顔をしている。


「どうやら覚えがあるような兵士がいるね」


 俺の言葉で全員の目が向いて、兵士がヒッと短い悲鳴をあげた。

 あ、ごめん。脅かしたい訳ではなかったんだ。

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