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貴族次男は書類偽装で戦場へ行く〜家族の為に頑張るぞ〜  作者: 糸魚樋


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10/22

10.狩りの終わり


 始めに誘導してもらった立派な角持ちの鹿以外にもお膳立てを数回してもらったり、一応自分でも探して獲ったりした。

 あと騎士2人は見向きもしない薬草や山菜、木ノ実をアランと一緒に採る。

 領地では見たことがない花は持ってきていた板に挟む。

見た目はキク科。色は薄紫。ハルジオンをそのままデカくしたみたいな花だ。


「なんて名前だろ。領地でも咲くかな?」

「このタイプは意外と丈夫ですからいけそうですが」

「辺境伯の町に植木とか種扱ってるところもあったら行けそうなら行きたいな」

「兄上様へのお土産ですか」

「母上様も花好きだし、2人用かな」


 うんうんとにこやかに頷いているアランはゴリゴリと何かをすり潰していた。


「何作ってるの?」

「神経麻痺の症状を起こす根です。痛み止めになるんですよ。ああ、顔はあまり近付けないように」

「はーい。それ粉にしたの人にぶつけたらどうなるの?」

「命中具合や吸い込み具合にもよりますが、目眩、前後不覚、立ちくらみ、呂律の低下といった症状でしょうか」


 クスクス笑いながら、試しにと小さな革袋を作って中にその他色々を詰めて渡してくれるアランの応用が聞くところ大好き。

 近くで鹿の解体をしていたコスティは俺と目を合わせるとサッと逸らした。見なかったことにしてくれるらしい。


「ジェードどこまで行ったのかな?」

「そこまで離れてはいない筈ですが、……!伏せて!」


 ドォンッと何処かで爆発音がした。振動がこちらにまで届く。

 コスティが俺を包むようにして身を低くし、アランが周囲に視線をやる。


「……参加してるヤツの魔法じゃない。そもそも森で爆発系使うバカはいないよな?」

「坊っちゃん、まだ動かないでください。相手が何かわかってません」


 静かに息を潜めていると、木に登って爆発地点を確認しに行っていたアランが降りてきた。


「爆発した場所に他所の貴族がいるようです」


 鎧を完全装備状態の騎士まで連れて獣に魔法をぶっ放していたらしい。

 森でフルアーマー着るとか可哀想。

 ウチの騎士?そもそもフルアーマー持ってないから今着けてるのは胸当てだけ。

 戦場だと脚甲と手甲を追加するくらい。高いんだよフルアーマー。


「貴族かぁ……挨拶するべき?」


 爆発音ってことは火属性。森で火属性をデカく放つような相手という時点で厄介なバカだとわかる。

 出来れば近寄りたくない。


「こちらに気付いていないようですので、今のうちに逃げましょう。ジェードも今こちらに逃げてきています」


 周りの荷物を素早くまとめて、痕跡が無いかの確認。アランが匂いを誤魔化す用の草を煮詰めた汁を振り撒く。

 ザザザっ、と音を立ててジェードが合流。


「ごめん!1人だけ強いのいて気付かれた!急いで逃げよー」

「後は?」

「後追いの魔力は無い。お守り優先で見逃してくれるみたいだな」


 アランが開く道をジェードとコスティに挟まれながら走る。


「まだ狩り途中だったのに……」

「浅いとこなら許してくれるかもしれませんよ。浅いとこなりの狩りの仕方もありますからお教えしますよ」

「たまには剣以外の武器訓練はどうですか?坊っちゃんなら槍もいいと思うんですよ」

「魔法訓練やろうよー魔力はとにかく操作を身体に覚えさせるのが大事なんだからー」


 オイ。止めろ。3人でほぼ同時に喋るな。

 かろうじて聞き取れたけど余計なことに頭使わせるんじゃない。


「とりあえず、馬車まで一度戻ってから」

「「「了解」」」


 後ろで時々起こる爆発音を聞きながら、山を駆け下りていった。

 本当は山を走って下りるの危ないからあんまりしたくないが、今回は仕方ない。


「……山火事になる可能性あるよな?」

「かなり高いです」

「一応、メンツの中に水属性と、かなり強い風属性がいるみたいだったけど、ちゃんと対応出来るかどーかかなー」


 場合によっては俺たちが野営をしている場所まで危ない。一応小さい川があったから川向こうに移動かな。

 あの爆音ならエディやマルクスたちも気付いている筈だから既にある程度はどうするかの決定をしてると思う。

 ため息を吐きつつ、周りの面子を見る。


「よくそんな大量に物抱えて走れんね?」


 俺はほぼ手ぶら、小さな鞄1つで全力疾走しているが、それ以外は背中に大量の鹿や兎、その他の荷物を抱えて走っている。


「毎日狩りしてたら慣れますよ」

「騎士は全員、女子供なら最低限2人は抱えて逃げられるようにとウチの領では訓練してるんですよ」

「コスティは今回使ってる馬車を馬の代わりみたいに引きながら1000走れる。キモいー」

「褒めから流れるような罵倒!?」


 そもそも馬車を引いて走れるということ自体、褒めてない可能性があるぞ。

 馬2頭で引いてる馬車を短距離とはいえ1人で引けるってちょっと引くよな。

 うん。やっぱり褒めてないわ。

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