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[COORDINATE 0046] Sage’s Labyrinth ver.Valerion 3

# Sage’s_Labyrinth_3rd_Floor_1:


ルナリアが宝石のような赤い瞳で俺の目をじっと見ている。

隣では、次は自分だと察しているフェリスが、嫌そうにため息をついていた。


俺はそっと左手をルナリアにかざした。

最大階位の支援魔法を彼女に展開する。属性は速度上昇だ。


背を駆け巡る甘い電流が、ルナリアを支配した。

弓なりに背を反らした彼女の唇から、熱い吐息混じりの掠れた声が零れ落ちる。


「あ……っ! んんっ……! ……んぁっ、あぅっ……! ……熱い……」


ここまでの戦闘の汗を吸った濃紺のバトルドレスは、彼女にぴったりと張り付いていて、艶めかしい線を隠していない。

堪えきれない声とともに、彼女の体が震え、柔らかな胸が激しく弾んだ。

ルナリアの宝石のような赤い瞳は、甘い熱で蕩けていた。


ルナリアはしばらくの間震えていたが、やがてフェリスのために後ろへ下がった。

彼女の潤んだ瞳は、それでもなお俺を捉えて離していなかった。


フェリスの方へ向くと、彼女は腕を組んで瑠璃色の瞳で俺を見ていた。

しばらく逡巡した後、意を決したように俺の耳を両手で塞ぐ。

俺はフェリスの背中へ左手を回し、触れないようにしたまま速度上昇の支援魔法をかける。


甘い快感がフェリスの背中を突き抜け、彼女の身体がびくりと跳ねる。

彼女はすぐに声を呑み込み、息を詰めたまま必死にそれを耐えた。


「っ……ぁ! ……っ、く……は……っ、ぁ……あぁ……!」


細い肩が小刻みに震え、フェリスは刺激を逃がすように俺の胸板へ額を擦りつけた。

耳を塞ぐことをやめられない彼女の身体が、俺に密着してきた。柔らかな体温を感じさせ、甘い汗の匂いを漂わせていた。


震える肩で息をしていたフェリスは、そっと俺から離れた。

しばらく蕩けた瞳で俺の顔を見ていたが、やがて目元に意思の力を取り戻す。


俺は二人が落ち着いたのを見て、声をかけた。

「よし、いくぞ。三人で賢者の迷宮を踏破だ」


ルナリアが、開いている鉄の戸の前へ歩いていき先頭に立った。

剣の柄に左手をかけ、右手で鋭く銀の剣を抜き放って階段へ歩いていく。


「頑張ろうね。わたしは絶対に負けないから。安心して」


フェリスが軽く身体を回して動きを確認した後、俺をちらりと見た。

その瑠璃色の瞳には、少しの疑いが浮かんでいた。


「……なあ、アルス。私の声、最後の方聞こえてないか?」


俺は視線を逸らした。

フェリスは小さく息を吐いて、ルナリアの後ろに続いた。

紫と黒の短剣を腰の鞘から抜き放ち、くるりと回転させて逆手で握った。


俺は星切を鞘に収めたまま、彼女たちの後ろへ続いた。



俺たち無言で階段を降りる。

かつかつと革靴が石畳を踏む音が反響した。


しばらく降りた後、階段が終わり部屋の入口が見えてきた。


足を止めず、俺たちは部屋へ入った。

その瞬間、手前の燭台から青白い炎が、まるで侵入者を歓迎するみたいに部屋の奥へ向かって順番に灯っていく。


それは、荘厳な彫刻の施された神殿のような空間を徐々に明らかにしていった。

広大なその空間の奥、中央に巨大な魔物がいた。


光を拒絶するような黒い毛並みの巨大な軍馬。

その額には鋭い青白い角が一本生えていた。


軍馬の背には、鈍い光沢を放つ漆黒の騎士が跨っている。


生命を冒涜するかのような黒い霧が、二体の魔物からゆらゆらと漂っていた。


漆黒の騎士は、軍馬に見合う大剣を右手で握り、肩に担いでいた。


凄まじい武威を感じさせる、巨大な黒い騎士。

その騎士には――頭がなかった。


う、うそだろ。ナイトメアとデュラハンじゃないか。


どちらも、それぞれが上級魔物の中でも上位の存在だ。

なんだ、この最後の敵は気合を入れてみました、みたいな主は!


ナイトメアが鼻息を鳴らした。

魔物から、地を這うような低い声が響いた。


「Welcome, pilgrim. Overcome the trial of knowledge.」


理解できない言語を発した後、ナイトメアが石畳を踏み割りながら駆け出した。

一直線にこちらへ突っ込んでくる。


デュラハンが巨大な大剣を上段へ振り上げた。


「フェリス、回避! ルナリア、魔法攻撃から始めろ!」


「……ん」


フェリスが、後方に跳び俺のもとへ着地した。

俺の腰に手を回し、肩に抱き上げた。

彼女の柔らかな身体の感触と、石鹸と汗の混じった甘い匂いが鼻腔をかすめた。


フェリスは、俺を抱えて右へ鋭く跳躍した。

デュラハンはすれ違いざまに、大剣を振り下ろした。


中空を斬った大剣が、迷宮の石畳を轟音とともに粉砕する。


「任せて! ――ファイアランス!」


ルナリアが左へ回避すると同時に、左手をデュラハンへ突き出した。

炎の槍がデュラハンを襲う。槍が直撃し、爆発音が響いた。だが、デュラハンには傷ひとつついていない。


しかし、ルナリアは炎の槍と同じ速度で突進していた。

炎の槍を追従するように魔物へ迫った彼女は、接敵する直前に跳んだ。

身体ごと捻り、燃え盛る銀の剣を振り抜いた。


最大階位の支援効果がなければ、デュラハンは防御しただろう。

だが、今のルナリアの速度は人知を超えていた。

その速度は攻撃にも乗り、紅蓮の剣閃がデュラハンの鎧を断ち切った。


一撃で、ルナリアがデュラハンの左手を切り飛ばしていた。


剣を振り抜いたルナリアの金糸の髪が、彼女の動きに合わせてふわりと浮き上がる。

それは青白い松明の光を反射して、神秘的な光沢を放っていた。


「す、すげえ! ルナリアすげえ!」

「……ああ。私も頑張らなければ」


俺たちは、警戒しつつもすでに勝利を確信しはじめていた。


ナイトメアが鋭く嘶いた。

魔力の奔流が魔物の周りに発生したのを感じる。


「ルナリア! 回避!」


追撃しようと走り込んでいたルナリアは、さらに加速して魔物を追い越し、その前方へ飛び込んだ。

勢いを殺さぬまま、地を這うような低い姿勢で前転し、そのまま着地する。

翻った白いスカートが大きくめくれ上がり、白いニーハイの上の太ももがあらわになった。


直後、大きな青白い炎の玉が魔物の周囲に発生した。

炎の玉がルナリアを襲う。彼女は凄まじい速度で走り抜け、そのすべてを回避した。


俺を降ろしたフェリスが、ちらりと俺を見た。

交差する視線に、俺は頷く。


フェリスは風のように駆け、デュラハンへ迫った。眼前で跳び上がり、身体を捻って右手を後方へ引き絞った。

ナイトメアは、階位を上げたフェリスの速度に反応し、床を砕きながら轟音とともに駆け出した。

フェリスの短剣が空気を切り裂く音を立てて、宙を斬る。


ナイトメアは歩みを止めない。

二人から距離を取ったあと、前足を高く上げて再び嘶く。

ナイトメアの暗く濁った青い目が、青白く輝いた気がした。


「I, a nameless bearer of the trial of knowledge, ruler of nightmares, rejecter of the insignificant, manifest the executor of nightmares.」


魔物が理解不能な言語を紡ぐ。

次に来るであろう大魔法に、俺たちは警戒を強めた。


「Infinite Chain of Nightmares !!」


額から伸びた角が蒼い光を放つ。

黒い霧がデュラハンの腕を覆い、その欠損した部分が瞬時に再生した。


「え! そんな、嘘!」

「……か、回復魔法!?」


大魔法の攻撃に備えていたルナリアとフェリスが、驚愕の声を上げていた。



# Sage’s_Labyrinth_3rd_Floor_2:


――俺は違和感を覚えた。


だが、大魔法の効果はそれだけではなかった。

デュラハンの腕が再生するのとほぼ同時に、周辺の影から十を超える黒いデーモンが床から生えるように出現した。


まずい! 何体か俺の位置に近い。

俺は即座に距離を取るために駆け出した。


二体が俺を追いかけてきている。

風の刃が俺を襲う。咄嗟に張れる限界硬度の防御結界を張るが、数発しか防げなかった。残った刃が俺を切り刻もうと迫ってくる。


「うおおおおお!」


俺は身体を転がすように地面へ転がって回避した。

避けきれなかった風の刃が俺を穿つ寸前、視界の端に赤い瞳が映る。

ルナリアが業火の剣で、その風の刃を切り飛ばした。


フェリスは飛ぶように黒いデーモンに迫り、飛び上がっていた。

紫と黒の短剣を双手に持ち、支援魔法の速度をすべて乗せて回転しながら、黒いデーモンの胴を斬りつけた。

独楽のように回転したまま、もう一度斬撃を入れ、黒いデーモンを地に伏させた。

フェリスはその回転を止めることなく、隣のデーモンも切り刻んだ。


異常な速度で回る彼女の動きに、はためく浅緑のワンピースから太ももが覗く。


黒いデーモンがその太い腕を振り上げてフェリスに迫った。

後方にいる魔物が放った風の刃が、その背後から追撃してきていた。


彼女はそれを回避しながら、後ろへ跳躍して回転し、俺たちのもとに着地した。


「……すまない。私一人ではあの数は無理だ」

「ううん。フェリスちゃん、任せて!」


ルナリアが左手を真っすぐ伸ばし、固まったデーモンに業火を放った。

「――ファイアブラスト!」


凄まじい熱波を放つ炎が、フェリスを追いかけて固まっていた黒いデーモンをまとめて襲う。

怯んだそのデーモンへ向けて、まずルナリアが飛んだ。

彼女は紅蓮の炎を纏う銀の剣を上段に構え、振り下ろした。一太刀で二体のデーモンを両断した。


フェリスが後ろから風のように突進し、ルナリアへ魔法を撃とうとしていたデーモンの首筋を斬り裂く。

フェリスはその直後、強く地面を踏み込み高く上空へ跳躍した。


ルナリアはフェリスが自分の剣閃の位置から離れたのを見て、引き絞っていたアストライアの剣を横へ振り抜く。

紅蓮の剣閃が円弧を描いて奔り、固まっていたデーモンをすべて両断した。血飛沫が宙に舞う。


二人の力は魔物を圧倒している。

だが、俺はこれでは終わらないと直感していた。

この魔法はおかしい。あれはアンデッドですらなかった。


生命を作り出す魔法なんてあるはずがない。

デュラハンとナイトメアを注視する。


再び、前足を高く上げたナイトメアが嘶く。


「I, a nameless bearer of the trial of knowledge, ruler of nightmares, rejecter of the insignificant, manifest the executor of nightmares.」


俺は二人に鋭く叫んだ。


「フェリス! 俺を守れ! ルナリア、デーモンが出ても絶命させるな。半殺しだ!」

「え!? う、うん。わかった!」


「Infinite Chain of Nightmares !!」


再び、周辺の影から黒いデーモンが溢れ出した。

黒いデーモンに攻撃を任せ、デュラハンはこちらへ近づいてこない。


――デーモンは影から出現した。


なるほど。

外と違うのは迷宮だけじゃない。

恐らく、魔物もだ。


透き通るような水色の髪を流しながら、フェリスが跳んできた。

俺の横に湧いたデーモンの首筋を十字に切り裂いた。


「……私も殺さず戦うのか? 私にルナリアのような、余裕のある戦闘は厳しいぞ」

「いや、こっちは倒してしまおう。全滅させなければいい」


「……わかった。それなら、任せろ」


フェリスは瑠璃色の瞳を俺に向け、頷いて短剣を双手に構えた。

デュラハンとナイトメアの動きを見極めつつ、俺はローディングを行使した。


――キンッ!


戦闘音が遠ざかっていく。

俺を木漏れ日のような光が照らし、讃美歌が鳴り響いた。


前方ではルナリアが、デーモンの攻撃をすべて回避しながら魔法を放っていた。

俺の横ではフェリスが、俺を狙う数体の黒いデーモンを相手取っている。


[ System : Universal_Truth_Load ...40% ...50% ...60% ]


デュラハンは俺の光に反応した様子はない。

ローディングに反応するのは魔族だけなのか?


[ System : Universal_Truth_Load ...70% ...80% ...90% ]

[ System : Universal_Truth_Load 100% Reached ]


円状にくっきりと俺を照らし出した神威の光が、最大階位に達したことを確信させる。


「ルナリア! デーモンを今すぐ、すべて倒せ!」


[ System : Lunaria Reason_Gauge -10 ]


俺の無茶な命令を聞いたルナリアが、踊るように剣を振るいだした。

彼女の金糸の髪が、それに合わせるように優雅に舞う。

紅蓮の炎が描く剣閃は、美しい軌跡を描きながらすべてのデーモンを両断していった。


「アルス! ぜんぶ倒したよ!」


「フェリス、今すぐナイトメアへ突っ込め」

「……任せろ」


フェリスは凄まじい踏み込みから、魔物へ向かって風を斬り裂きながら跳んだ。


デーモンが全滅した直後、ナイトメアが再び嘶く。


「I, a nameless bearer of the trial of knowledge, ruler of nightmares, rejecter of the insignificant, manifest the executor of nightmares.」


「三つ数えたら目をつむれ! 三、二、一!」


俺は自分も一瞬目をつむりつつ、最大階位の灯火の魔法を上空に展開した。

広い空間すべてを、強烈な青白い光が覆う。


「Infinite Chain of Nightmares !!」


大魔法が発動した。


――だが、デーモンは出現しない。


「フェリス、角を斬り飛ばして退避!」


すでにフェリスはデュラハンの眼前に達していた。

デュラハンは大剣を上段に構え、彼女へ振り下ろす。

フェリスは体を捻るように跳び上がり、振り下ろされた剣の上に着地する。


彼女の水色の髪が、慣性に引かれて波打ち、薄暗い迷宮できらきらと輝く。

そのまま剣の上を駆け上がり、途中で跳び上がる。


脚を揃えたまま、天地逆さに回転し、双手に持った短剣を振り抜いた。

紫と黒の剣閃が十字に走る。


俺の支援を受けたフェリスの一撃は、容易くナイトメアの角を切り飛ばした。

ナイトメアから地を這うような低い声が響く。


「ガアアァァァァァ!」


――直後、デュラハンの姿が掻き消えた。


この迷宮を作った賢者は勘違いをしている。

こんな魔物では何も測れない。


「ルナリア! いけ!」

「やっぱり、きみはすごいね!」


ルナリアが舞うように飛び上がった。

赤い剣を覆う炎が、彼女に呼応するように紅蓮の業火を巻き上げた。


アストライアの剣を両手で握り、身体を捻るように左へ引き絞る。

汗を吸った濃紺のバトルドレスの生地が、彼女の豊かな双丘にぺったりと張り付いていた。薄く頼りないそれは、艶めかしく揺れる胸元の線を如実に浮かび上がらせていた。


ナイトメアに迫る直前で、ルナリアは引き絞った剣を振り抜く。

横へ回転し、赤い円を描きながらナイトメアへ迫った。

轟音を轟かせる赤い斬撃は、滑るようにナイトメアの首に入り込み、そのまま横へ抜けた。


空気を震わせる断末魔のあと、黒い魔物は黒煙を引きながら地に倒れ伏した。



静寂の訪れた部屋に、ルナリアが着地する音が響く。

フェリスは血糊を払いながら、短剣を腰の鞘に仕舞っていた。


ルナリアが額の汗を拭いながら近づいてきた。

「さすがアルスだね。デーモンが影から出てくるとか、よくわかったね」


さすがのルナリアも激しい戦闘で、全身にぐっしょりと汗をかいていた。

ぺったりと胸元に張り付いた濃紺のバトルドレスには、胸の突起の陰影が浮かんでいた。


俺は目を逸らした。


視線を変えた先からは、ゆっくりとフェリスが歩いてきていた。

「……ああ、私も驚いている。角が魔法の条件なのは、どうして気がついたんだ?」


彼女も相当疲弊したのだろう。珍しく外套の前を開いて、手であおっていた。

汗でへばりついた薄手のワンピースは、彼女の胸元の先端に淫靡な影を落としていた。


俺は上空を見ることにした。


「お前ら、身体の汗を拭いておけ。……この迷宮は賢者が造ってる。これは間違いないと思うんだ」


ルナリアは俺に汗を拭けと言われたので、素直に拭き取っているのだろう。

衣擦れの音が聞こえる。絶対に上を見るのをやめてはならない。


俺は上へ視線を向けたまま続けた。

「まず、女神様や賢者の奇跡じゃあるまいし、命を造れる魔法なんかあると思えない。なのに、魔物を生み出すのを見て確信した」


ほとんど直感だったので、俺もどういう考えだったのか整理しないと話せない。

「ここまでの道中で、迷宮を造った賢者は完璧主義だと感じていた。なら、迷宮の主の戦闘方法は美しくするだろうと思ったんだ。無限に出てくる影の魔物を倒せって話ではないはずだ」


フェリスからは衣擦れの音が聞こえてこない。

こいつ、また俺をからかうつもりだな。

「……なるほど。対処法を用意しておかなければ、ただの力比べだ。美しくない。……賢者はわかってないな。その乱雑さが迷宮の醍醐味なんだが」


足音とともに、フェリスの声が近づいてきていた。

「おい、フェリス。汗を拭きなさい。透けてるんだよ」

「……感想を言うなら、別に見ても構わんが?」


横から、慌てた様子のルナリアが口を出してきた。

「だ、だめだよ! フェリスちゃん。はしたないよ! はい、これ新しい布」

「……え? あ、ああ。そうだな」


フェリスは心外そうな声を上げた。

ルナリアに、そんなことを言われると思っていなかったのだろう。

ふふふ。こいつは自覚がないだけで、貞操観念は高いのだ。


俺は天井を見上げたまま言った。

「あとは、デュラハンが再生したのも違和感があった。回復魔法じゃないと直感した。だって、回復魔法で鎧は修復されない。それと、影の魔物も同時に出てきただろう? だから、あれは武具を製作再生する魔法だと思った」


頭の上で、俺は手を組んで最後の説明をした。


「ナイトメアの角が魔法の鍵だと思ったのは、光ってたのもあるけど半分は勘だ。ただ、いかにもこの迷宮を作った賢者が好きそうだろ?」

「……ああ、確かに。……アルス、お前は凄いな」


突然、腕に柔らかな何かが押し付けられた。


むにゅりという感触は、一瞬で俺の理性を奪う。俺はそちらに視線を向けてしまう。

ルナリアが赤い瞳をきらきらと輝かせながら、俺に抱きついてきていた。


汗の甘い香りが俺の鼻腔をかすめた。

「すごい! すごいよ! 格好良い!」


俺は頬をかきながら、照れ隠しに言った。

「凄いのはお前らだよ。気がつけたのは、考えるだけで済んでいたからだよ。俺なんか何もして……あ、いや。三人の力だな」


フェリスがお姉ちゃんのような目で俺を睨んでいたので、最後は言い変えた。


俺の言葉がお気に召したのか、目元を緩め、唇には薄っすらと笑みが浮かんでいた。

「……ん。そうだな。……きちんと気がついてえらいぞ」



――部屋の奥の方から、重厚な鉄の戸が開いた重い音が聞こえた。


俺たちはその戸の前へ歩いていく。

そこには白い階段が下の方へ伸びていた。

階段と壁は、薄っすらと光沢を放っていて、不気味なほど真っ直ぐだった。


いよいよ、賢者が残したという力がこの先にあるのだろう。

伝説の迷宮の最奥へ続く階段は、あまりにも無機質だった。



# COORDINATE 0046 END

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