Ep.6-3 黄金の決意
「そうか。遂に手を取り合ったか」
肘掛け椅子に座した男は低く言う。
「素晴らしい。実に素晴らしい。それがあるべき姿だ」
肩を揺らして含み笑う。
「彼らはそうなる運命の元に生まれてきた。二つが一つになった時、彼らは真に神となる。私の望んだ邂逅が、遂に果たされたのだ」
「楽しそうね」
男の横に立つ黒衣の女は無表情に言った。男は、フフフ、と愉快そうな笑い声を上げた。
「楽しい。楽しみでならない。あの子達はいつここまでやって来るだろう」
「じきに来るわ。それと、『彼』も……」
「そちらに興味があるのは、君くらいなものだよ」
「そうでしょうね。けれど、彼の存在無くして、ここまで辿り着けるかしら」
女は、嗚呼、と感嘆を漏らす。
「早く彼に会いたい」
「もうすぐ会えるさ。君の出番は近い」
男は目を閉じた。
「……待ち遠しいのは同じか」
呟いて、女に顎で合図する。すると女は、黄金の仮面を取り出し、男の顔に被せた。目と鼻だけのつるりとした仮面。
「どうやら余計な邪魔もあるみたい」
「だが利用価値はある。試練は多いに越した事はない」
男は仮面の下からくぐもった声で答え、女は微笑む。
「貴方は何もかもを利用するのね」
「君に言われるとは、心外だ」
女は男の耳元に唇を寄せた。
「私は見詰め、囁き掛けるだけ。闇の中から、ひっそりと……」
「では、見たものをまた知らせてくれ」
ええ、と女は頷く。
「喜んで、『神様』……」
扉が開かれた。飛び込んできたのはガルディアスだ。男の前で跪き、頭を低くする。そして重々しい口調で言った。
「報告致します、皇帝陛下」
女の姿は既に無かった。




