決戦の裏側
「まぁ、俺は心配してなかったけどな。エイミーならきっと巧くやってくれると思ってたよ」
一矢は涙目のまま、親指を立てる。
「魔族も好戦的な者ばかりじゃないからね。なんとか」
「エイミー殿。もし宜しければ何があったのか、詳しくお聞かせ頂けませんか?」
「あっ、わたしも聞きたーい」
ベティーナの提案にクレアが同意の手を挙げる。
エイミーは微笑みながら頷いた。
「あたしが森に着いた時はウェアタイガーと逃げてきたケンタウルスやサテュロス達がモメてたわ。『勝手に縄張りに入るな』ってね。そこであたしが人間達に停戦しようと言っても、誰も聞く耳持たなかった」
「その時はまだウェアタイガー達が人間を追っ払ってたもんね」
ディナが付け足す。
「でも人間達が防御魔法を張り始めてウェアタイガー達だけではどうしようもなくなったの。魔法耐性は高いんだけど、魔法自体は使えないからね」
エイミーは肩をすくめて見せる。
「それでもみんな停戦には反対してた。特にウェアタイガーのボスは、一矢の事を聞いたら『絶対戦う』って引かなかった。だから人間達と戦う方向に話を持っていったの。一矢に言われた通りね」
一矢は表情を曇らせる。
「そう、俺が。戦って痛い目にあえば、停戦の話しも進めやすくなるかなってね。……でも予想以上の被害だった」
ベティーナはロバート達の事を思った。
「あたしも戦いの為に偵察したり、作戦も考えたわ。補給部隊を襲わせたりしたのもあたしの考え。だから被害が大きかったのはあたしにも原因があるの」
エイミーも一矢に気遣いの言葉を投げ掛ける。
「出来る限りの事をするように言ったのは俺だ。負けるわけ無いと思う位の戦いじゃないと意味が無いからね」
「お陰で他の停戦反対派も『この戦いで負けるなら仕方ない』って話しになったわ」
ディナも首を縦に振って同意する。
「ディナもまさかお姉様の作戦で負けるなんて、信じられませんでしたわ」
馬車の中は沈んだ空気のままだった。
「……もしエイミー殿の作戦で魔族側が勝利していたらどうするおつもりだったんですか?」
ベティーナの言葉にクレアとエイミーは一矢を見る。
「えっ? ……いや、特に考えてなかったけど」
そんな一矢にエイミーは溜め息をついた。
「どうせそんな事だろうと思った。まぁ、何とかするって信じてたわよ」
そう言うエイミーにクレアはニンマリ笑う。
「『デレ』ッスか? そろそろデレちゃうんスか?」
「バカッ! 一矢だけじゃなく、あんた達も居るからって事よ」
「でもここまでは一矢さんの予定通り、後は王様がオッケーすれば良いんスよね?」
一矢は腕を組んで唸る。
「う~ん。……取り敢えずはね。出来れば森だけじゃなく、魔族全体との停戦に持ち込みたいんだ。だから王様の次に魔王にも会ってオッケー貰わないと、かな」
「魔王様に会うつもり? 人間ごときが? 辿り着ける訳もないわよ!」
ディナが興奮気味に言った。
「あっ、やっぱり? ちなみに魔王がどこに居るか知ってる?」
「魔王様なんて、おとぎ話でしか聞いたことない」
一矢は一瞬、考え込む。
「おとぎ話か。……なんか今さらだな」
「どういう事?」
エイミーが聞くと一矢は自信ありげに笑う。
「俺が異世界ヒーロー・一矢様だからだ!」
「馬鹿だからでしょ?」




