再会を喜ぶ
砦が徐々に遠ざかるのを一矢達は静かに待った。
沈黙が支配する中、砦は小さくなっていく。
そして馬車を操るベティーナはとうとう堪えきれなくなった。
「エイミー殿~、お久し振りでございます~!」
振り返ったベティーナの目には涙が溢れていた。
「あたしも会いたかったよーッ! 一矢に変態な事されなかった?」
「はい~、大丈夫です~!」
「……再開早々、失礼な奴だな」
そう言う一矢にエイミーは微笑む。
「じゃあ、その両手は何?」
「これは再開の喜びをハグで表そうとしてるんじゃないか!」
一矢は広げた両手をニギニギさせる。
「……その動きッ! 悪いけど生理的に無理ッ!」
「もう、エイミーさんったら! 相変わらずツンデレなんスね。ホレホレ、体は正直ッスよ?」
クレアがエイミーに抱きついて、胸を揉む。
「ちょっと、どこ触って……」
「痛い!」
耳慣れない声が馬車の中に響いた。
「すいませんッス。力入り過ぎでしたッスか」
「今の声はあたしじゃないわよ」
四人は何処から聞こえてきたのかと辺りを見回す。
すると、エイミーの鞄から小さな魔族が飛び出した。
「人間風情が! 気安くお姉様に近付くんじゃないわよ!」
「痛ッ!」
魔族はクレアのおでこを蹴飛ばした。
魔族は小さいながらも少女の様な体つきをしており、向こう側が透けそうな透明感を持っていた。
背中に付いた小さな羽を小刻みに羽ばたかせエイミーの周りを飛んでいる。
「ディナ! 着いてきちゃダメって言ったでしょ!」
「でもでも! ディナはお姉様の事が心配だったんです~」
ディナはエイミーの肩に飛び乗ると、一矢達を睨み付けた。
「野蛮で利己的な人間達と一緒に行くなんて! 森のみんなだって、何かあったら直ぐに知らせろって言ってるもん!」
「言ったでしょ? この人達はあたしの知り合いだから大丈夫だって」
「エイミー殿。この……方は一体?」
ベティーナが驚きながら聞いた。
「この子はピクシーのディナ、森に行ったあたしを色々助けてくれたの」
「お姉様の為なら当然です~」
ディナはエイミーの頬にすり寄る。
「それなら私からも礼を言わせて下さい。有り難うございました」
頭を下げるベティーナにディナはそっぽを向く。
「人間なんかに礼を言われる筋合い無いわッ!」
「ディナ、めッ! ベティーナはあたしの友達なんだから仲良くして」
ディナは頬を膨らませる。
「ゴメンね。まだこの子、子供だから」
「いえ、気にしないで下さい。……私も昔はそうでしたから」
ベティーナは苦笑いすると馬車の操縦に戻った。
「子供か、今いくつなの?」
一矢がディナに問い掛ける。
「……あんた、またくだらない事を考えてるんでしょ」
一矢にエイミーは嫌そうな顔をし、ディナは一矢を睨み付けた。
「レディに年を聞くなんて、人間は失礼な奴ねッ!」
一矢はそんなディナを笑う。
「悪いがうちのパーティーは18禁だ! お子ちゃまは帰るんだな」
エイミーは嫌そうな顔を浮かべる。
「悪いけど、あたしもそんな如何わしそうなパーティーに入るつもりないわよ」
逆にクレアは楽しそうだ。
「久しぶりの一矢ワールドキターッ! 理解不能ッス! ちなみにわたしは十七ッスけどね~」
「それで? お嬢ちゃんの歳は?」
一矢は鼻で笑いながら再度聞く。
「百八よ! 人間ッ!」
「俺のばあちゃんより年上だね」
エイミーはつい吹き出した。
「この子達の種族は長生きなのよ。大体人間の十倍かしら」
「と言う事は十分の一にすれば良いのか? ……何だ、ガキか」
「とことん失礼な人間ね!」
更に鼻で笑った一矢に、怒ったディナは猛スピードで一矢の両目にパンチした。
「目が! 目がーーッ!」
痛みで悶える一矢を見て、エイミーは笑った。
「みんな変わらないわね。……良かった」
「エイミー殿こそ。お変わり無く安心しました」
ベティーナがもう一度振り返る。
「わたしなんか心配し過ぎて食事も喉を通らなかったッス」
クレアがお腹を押さえて言った。
「あんたも直ぐ分かる嘘を。……でもありがと」




