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異世界平定奇譚   作者: 新樹 百佑
第六章 最終決戦
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砦は抜かれました

 ロバートは一矢達の戦いの様子を望遠鏡で見ていた。


「流石ベティーナ殿。そしてあの一矢と言う若者。……只者ではないな」


 ロバートが二人の戦いぶりに感心していると見張り台の兵が叫んだ。


「部隊長殿! 伏兵が現れました! 後ろです!」

「後だと? 弓兵、魔法団員はついて来い!」


 ロバート達は城壁の上を砦後方まで走る。


 砦後方に着く頃には、既に望遠鏡を覗くまでもなく、魔族達は目視で確認出来る距離に居た。


「クソッ! 森の魔族共か!」


 一矢達が駐屯地へ来る前に、伐採作業を邪魔していたのはケンタウルスやサテュロス達ではない。


 体の割に小さな三角の耳、全身を覆う毛皮には黄と黒の縞模様。


 鋭い牙と爪を持つウェアタイガー達だ。


「ええいッ! 奴等を近付けさせるな!」


 弓兵が放つ矢はかわされるか、太い腕で叩き落とされる。


 魔法団員の魔法もすんでの所でかわされる。


 爆風で飛ばしても巨体に似合わぬ、しなやかな動きで着地した。


 ウェアタイガーの足を止める事も出来ず、あっという間に城壁の下まで辿り着いてしまった。


 そして手足の爪を使って城壁を登り始める。


「マズイッ! 奴等を登らせるな!」


 魔法団は爆発魔法から電撃と氷魔法に切り替えて攻撃する。


 だがウェアタイガー達には魔法の効果が薄かった。


 雷は毛皮の表面を流れ、氷も毛を凍らせただけで、その身までは凍らせられなかった。


「クソッ! 全員待避! 防衛魔法を急げ!」


 ロバートの号令で城壁の上から兵士達は駆け降りる。


 そして下に居た防御魔法要員が城壁の上に魔法壁を張った。


 バチンッ。


 城壁を乗り越えようとするウェアタイガーを何体かが魔法壁によって弾かれた。


 だが遅かった。


 既に城壁を登りきっていたウェアタイガーが居た。


 階段へと逃げる兵士を後から襲いかかる。


「チィィィッ!」


 ロバートが急いでウェアタイガーに斬りかかるもヒラリと身を翻される。


 そしてウェアタイガーはそのまま城壁の内側へと飛び降りた。


 音もなく着地するとウェアタイガーは走り出す。


 下で待機していた歩兵部隊が斬りかかる。


 ウェアタイガーはその毛を赤く染めながらも決して止まろうとしない。


 それを見ていたロバートが気が付き叫んだ。


「止めろ! それ以上行かせるな! ヤツの狙いは……」


 ウェアタイガーが兵士の頭上を飛び越える。


 そして、その先に居たのは防御魔法に両手を奪われている魔法団員だった。


 更に兵士の一太刀を背に浴びながらも、ウェアタイガーは牙を魔法団員の喉笛に食い込ませた。


 魔法壁の一部が消失し、そこから他のウェアタイガーがなだれ込んできた。


 ロバートは逃げる兵士を援護しつつ、階段を降りていく。


「防御魔法はもっと狭い範囲で維持せよ! 歩兵部隊は隊列を立て直し、魔法団員を死守せよ!」


 ウェアタイガー達は次々と城壁を降りてきては十メートル程の高さを一気に飛び降りる。


 ウェアタイガーはロバートよりも先に下へ着くと、砦の中は一瞬で混戦へと変わってしまった。


 ウェアタイガー相手に決して遅れを取らない兵達ばかりだが、今はケンタウルス達に多くの兵を割いてしまっている。


 残って居る兵はウェアタイガー達の半分程度だった。


「すまん、ベティーナ殿。砦は抜かれた……」


 砦の隅に張られた小さな魔法壁を見て、ロバートは呟いた。

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