防衛隊と魔族連合軍
ロバートは改めて指示を飛ばし始める。
「騎馬兵、歩兵部隊は門の前に整列! 門が開き次第、全軍突撃! 弓兵、魔法団は援護せよ!」
ベティーナも名乗りをあげる。
「部隊長殿! 私も出ます」
「ではベティーナ殿は歩兵に参加して下さい」
城壁から降りようとするベティーナを一矢は追いかける。
「ベティ、俺も行くよ」
「一矢殿。向こうにはケンタウルスも居ます。騎馬相手に素手では厳しいかと……。無理せずここは我等にお任せ下さい」
一矢はそっとベティーナに近付く。
「少しでも力を見せておきたいんだ。無理はしないから安心してくれ」
「……分かりました。私からあまり離れない様にして下さい」
「任せろ! ずっと側に居るぞ!」
親指を立てて一矢はベティーナに顔を近付ける。
「あっ、……はぁ。お願いします」
「キャー! ラブラブッスね!」
「ラブッ? 何を仰いますか! 私は一矢殿の身を案じているだけです!」
赤くなるベティーナ。そして、前髪をかき上げて格好をつける一矢。
「ふっ、俺も自分一人の体じゃないって事だな」
「意味わかんないッス」
「あの……開門しても宜しいか?」
ロバートは戸惑いながら問いかける。
「そ、そうですね。一矢殿。参りましょう!」
「よっしゃー! やったるぜ!」
ベティーナは走って階段を駆け下り、一矢も後を追う。
「……皆さん、気負う事は無いんでしょうか」
ロバートが二人の背中を見ながら呟いた。
「無いッスね~。特に一矢さんは絶対無いッスね。変態スから」
「へっ、変態ですか?」
戸惑うロバートに兵達は指示を求める。
「部隊長殿。皆、準備完了しました。御指示を」
「……そうだったな。良し、開門と同時に防衛魔法を解け! 弓兵は一斉射! その後、魔法団が続け」
ロバートは一矢達が門の前へと集まるのを確認する。
「開門!」
魔法壁が消えると炎の渦が砦を襲う。
その中を矢が放たれると、矢を追うように炎の渦は向きを変えた。
矢が空中で燃え尽きると、続いて魔法団員が魔法を放った。
ケンタウルス達は攻撃魔法から防衛魔法に切り替え、魔法を防ぐ。
魔法は空中で花火の様に爆発した。
だが、もう砦の周りの炎の渦はない。
「今だッ! 全軍突撃ッ!」
騎馬隊と歩兵部隊が砦から飛び出した。
最初に騎兵部隊が敵陣に突撃した。
騎馬兵に遅れて一矢達の歩兵部隊も飛び出す。
騎馬隊が向かってくるのを見て、ケンタウロス達も突撃を始めた。
騎馬隊とケンタウロスが激突する。
先の戦いより武装を整えたケンタウルス達は手強かった。
だが人間達も訓練された騎兵達。
決して遅れはとらない。
そこに一矢達の歩兵部隊とサテュロス達が加わる。
一矢はケンタウロスの剣をかわし、相手の盾ごとケンタウロスを殴り飛ばした。
ベティーナはケンタウロスの剣の範囲外から巧みに武装の隙をつく。
サテュロスは棍棒を振り回す。
一矢がかわすと、今度はサテュロスの角が襲ってくる。
「デヤァーー!」
一矢はサテュロスの眉間を殴った。
殴られたサテュロスは他の魔族を巻き込んで吹き飛んでいく。
ベティーナに向かってサテュロスは炎を吐いた。
だがそこにベティーナの姿は無かった。
「ハァッ!」
上空からベティーナの鋭い突きがサテュロスを貫く。
その場に居る人間達は、自分達が優勢だと信じて疑わなかった。
だから誰も気付かなかった。
あの華麗な引き際を見せた魔族達が、今回に限って粘り続けている事に。




