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異世界平定奇譚   作者: 新樹 百佑
第六章 最終決戦
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砦の惨状

 一矢達はケンタウルス達を圧倒し、勝利は目前だった。


 だがベティーナはその状況に違和感を覚えていた。


『おかしい。……先の戦いでは引き際をわきまえていたのに、何故今回は引かない?』


 ベティーナは辺りを見回す。そしてとうとうその理由を知った。


 ウェアタイガー達が砦から出てきているのを。


「気を付けろ! 伏兵だ!」


 だが、圧倒しているとはいえ、ケンタウルス達も強敵。


 ベティーナの声に反応した兵士は少ない。


「一矢殿! ここは兵達に任せ、我等は砦へ戻りましょう!」


「あの虎達はどうするんだ?」


 砦から来るウェアタイガー達を一矢は顎で指す。


「勿論、蹴散らしていきます!」


 ベティーナは槍を構えて一人、ウェアタイガー達へ向かって駆け出した。


「勇ましいんだから。惚れ直しちゃうね」


 一矢もベティーナの後を追う。


 ベティーナはウェアタイガーの群れへ一人で突っ込む。


 ベティーナは体を回転させ、槍でなぎ払うと数体のウェアタイガーが顔を押さえて倒れ込んだ。


 その後ろに居るウェアタイガーを突き、払い、ベティーナは進んでいく。


 ウェアタイガー達の群れをモーゼの様に割りながら進んで行くベティーナの後ろから、一矢も突っ込む。


 左右から襲ってくるウェアタイガーを殴り飛ばす。


 二人は竜巻の如くウェアタイガーを吹き飛ばしながら突き進んだ。


 そして一矢達はウェアタイガー達の群れをとうとう突破した。


 一矢は一度振り返る。


 ウェアタイガー達の約三分の一位が倒れていた。


 残るは三分の二。


 まだ相当数居るので一矢は心配になった。


「一矢殿。奴等は砦から出てきました。クレア殿も居ますし、今はそちらを心配致しましょう」


 ベティーナはそう言いながら砦の門をくぐる。


 既にケンタウロスとサテュロス達は残りわずか。


 ベティーナの言う通り何とか頭を切り替え、一矢は砦に入る。


 砦に着くと一矢は直ぐに状況を理解した。


 砦の隅で防衛魔法を張る魔法団員。


 魔法壁の中にクレアの姿も確認出来た。


 その前で剣を構える傷だらけのロバートと二人の歩兵。


 倒れている多くの兵に、それを上回る数のウェアタイガー達が取り囲んでいた。


 ウェアタイガーの一体が近くに倒れている兵士を担ぎ上げ、魔法壁に向かって投げ飛ばした。


「クソッ!」


 ロバートが兵士を受け止めるが、ロバートはそのまま魔法壁に接触する。


 バチンッ。


「グウッ!」


 音をたててロバートの体は弾かれた。


「部隊長殿ッ!」


 そんなロバートを見て、歩兵が叫ぶ。


「大丈夫だ! 取り乱すな!」


 ロバートはよろめきながら立ち上がる。


 それを見てウェアタイガー達は笑っていた。


「ほらッ、どうする?  防衛魔法を解かないと『部隊長殿』がもたんぞ?」


 ウェアタイガー達の笑う中、歩兵がロバートに言う。


「ロバート殿! 他の者は手遅れです! 無理をなされないで下さい!」


「分かっている! ……だが、皆私の部下だ! イタズラに傷付かせはしない!」


 更に大きくなるウェアタイガー達の笑い声を切り裂いたのはベティーナだった。


「貴様等ーーーッ!」


 振り返ったウェアタイガーの顔が裂ける。


 続けて隣のウェアタイガーの胸にベティーナの槍が突き刺さった。


 驚いている他のウェアタイガーが一矢の拳で城壁まで吹き飛ばす。


 突然の乱入者にウェアタイガー達は混乱していた。


 ロバートまでの道が切り開かれた時、一際大きなウェアタイガーが行く手を遮る。


 ウェアタイガー達のボスだ。


 ベティーナが繰り出す槍をかわし、蹴りを放つ。


 それを槍で受け、ボスの足に乗るように自ら後ろに跳んだ。


 ベティーナは着地すると同時に間合いを詰め、鋭い連続突きを見せる。


 ボスはそれもかわし、掌底を繰り出す。


 それはベティーナの頬に爪痕を残した。


 ベティーナは体を回転させてボスの首を狙う。


 ボスはしゃがんでかわすとそのままベティーナの足元を狙った。


 ベティーナが一旦距離をとった所を他のウェアタイガーが襲いかかる。


 それを一矢が横から殴り飛ばした。


「一矢殿! ありがとうございます」


「あのデカいのは俺に任せろ! 一対一の方が戦い易い」


「分かりました! 他の魔族は近付けさせません!」


 襲い掛かってくるウェアタイガー達をベティーナが牽制し、一矢はボスに向かって走った。

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