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異世界平定奇譚   作者: 新樹 百佑
第五章 反抗作戦
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一矢の呪い

 船が港に着くと久し振りの大地に皆が喜んだ。


 その中で一矢だけが暗い顔をしている。


 タラップを渡っている途中、突然一矢はエイミーを振り返った。


「本当の本当に呪われてないんだな?」


「本当よ! ほら、さっさと降りてよ!」


 足取りの重い一矢をエイミーは後ろから急かす。


「絶対の絶対だな? 嘘だったら俺の老後はエイミーに世話してもらうからな」


 もう一度振り返り、エイミーを見る。


「なんであたしがそんな事しなきゃいけないのよ!」


「俺がモテずに一人で寂しい人生送ったらどうするんだよ!」


「元からモテてないでしょうが! あんた、鏡見た事あんの?」


「人間、外見じゃなくて中身だぞ!」


「だったらハゲでもデブでも良いじゃない! それにあんたは中身の方が問題あるからね!」


「まぁまぁ、二人共。痴話喧嘩は降りてからにして下さいッス」


 エイミーの後ろでクレアが笑いながら言う。


「痴話喧嘩じゃないわよ! そもそもあんたのせいでしょ? 何か言ってやんなさいよ」


「えぇ~、じゃあ……ホンジャカキモキモキモイ~……」


「イヤーーーッ!」


 一矢は船をかけ降り、人混みの中へ消えていった。


「ウケるー! 二回目はないわ〜。子供でも気付くッスよね?」


「あんた達……疲れるわ」


 エイミー達が船を降りるとベティーナが待っていた。


「私はこれからこの港町にある警備隊支部へ報告に行ってきます。皆さんは先にこちらの宿で休んでいて下さい」


 ベティーナはエイミーにメモを渡す。


「ところでまた一矢殿が泣きながら走って行きましたが」


「説明すると長いから……ハァ」


 エイミーの疲れ顔にベティーナは不思議そうな顔を浮かべた。






 一矢達が宿に着いた時、ベティーナは既に到着していた。


「皆さん遅かったですね。何処かに寄られてたんですか?」


「一矢のせいよ! もうッ! ちゃんと歩きなさいよ」


「……フフフ、この世界でも俺はモテないんだ……」


「いや~、良い具合に魂抜けてるッスよね」


 クレアは楽しそうに一矢の頬を突っつく。


「それで、ここは王都じゃなくてただの港町なんでしょ? 王都にはいつ出発するの?」


「それなんですが、少々問題がありまして……」


 エイミーはベティーナの隣に一矢を無理矢理座らせ、自分も席に着く。


 クレアも一矢の反対隣に座る。


「現在、中央警備隊本部にて魔族に対し、大反抗作戦が行われております」


 エイミーは嫌な予感がした。


 大反抗作戦中は休戦を求める自分達にとって不利にしか働かないようにしか思えない。


「それで各地の魔族に対する警戒が強まっているのです。海賊騒動のお陰で我々への連絡が遅れてしまっていたようで……」


 エイミーは心配そうな眼差しをベティーナに向ける。


「それじゃあ今、王都に向かうのは危険?」


「危険過ぎます! 場合によっては王都に着く前に処刑、という事も考えられます」


「わたしは魔法団に入りたかったんスけど……ダメッスかねぇ」


「王宮魔法団も作戦に参加しているので、入団試験を受けるのも難しいかと思います」


「そうッスか……。ブゥ」


 クレアはテーブルに顎をのせて不貞腐れる。


 エイミーもどうしたものかと一矢を見るが、まだ心此処に在らずだ。


「ちょっと一矢! 話聞いてるの? ねぇッ!」


 エイミーは一矢を揺する。


「聞いてるよ。その大反抗作戦に俺等も参加すれば良いだろ?」


「えっ?」


 エイミー達は一矢の言葉に驚いてお互いを見回す。


「はぁ……せっかく異世界に来たのに……これなら家でエロゲでもしてれば良かった」


「もうッ! 良い加減にしてよ! 呪いは嘘だから! あんたについてここまで来たあたしの立場はどうなるのよ!」


 エイミーは一矢の首を絞める。


「くっ、苦じ~……」


「はいッ! ここはわたしに任せて下さいッス」


 クレアは手を挙げる。


「元々あんたのせいだからね! 何とかしてよ」


「了解ッス」


 クレアは一矢の耳元に顔を近付ける。


 フッ。


「うおっふ!」


 クレアが耳に息をかけると、一矢は驚いて立ち上がった。


「なななっ、何すんだよ!」


「やだなぁ、呪いを解いたんですよ」


「えっ? 解いてくれたの?」


『呪いをかけられたと信じてるなら解いたと信じさせれば良かったのか』


 だが散々呪いは嘘だと言ったのに中々信じなかった。


 本当に信じるのか、エイミーは心配だった。


「ふふふ……」


 一矢はうつむき加減に笑う。


『これは信じたのか? それとも良い加減にしろって怒る?』


 三人は息を飲んで一矢の様子を伺った。


「これで一矢帝国の復活じゃあーーッ!」


『簡単に信じたし、馬鹿が悪化したわ』


 エイミーは呪いを解いてしまった事を少し後悔した。

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