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異世界平定奇譚   作者: 新樹 百佑
第五章 反抗作戦
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港に着いちゃいました

「王都に向かってるって? 何でそう言う大事な事を言わないのよ!」


 一矢はベッドに正座し、エイミーのカミナリを受け止めていた。


「何故か。……それはエイミーの怒った顔が見たいからだよ」


 一矢は下手くそなウィンクをエイミーに送る。


「キモいッス! そして痒いッス! キモかゆッス!」


 大笑いするクレアをエイミーは睨んだ。


 クレアは笑うのを止めると、口笛を吹きながら外の景色を眺める。


 そしてエイミーは一矢に振り返った。


「良い? 朝食の時にベティーナから聞いてビックリしたのよ! だってあたし達が依頼されてたのは『海上の魔族討伐』でしょ? ……そこは間違いないわよね」


 エイミーに睨まれ、一矢は目を泳がせる。


「ええっ? それは……そうに決まってんじゃん。……俺、嘘つくタイプじゃないでしょ?  そうッ! 特に女性にはね!」


 クレアが横で吹き出す中、エイミーは眉をピクリと震わせた。


「良くこの空気でそんな台詞ブッ込んだッスね! どんなハートしてんスか!」


 再度エイミーに睨まれたクレアは視線をそらす。


「こっちはね、ビックリし過ぎて何も言えなかったのよ。それをベティーナは勘違いして『辛く当たってしまい、申し訳無い』って頭を下げられたのよ! ……そりゃあちょっとは気にしてたけど」


 エイミーが視線を落とす。


「まぁまぁ、結局仲直り出来たんだから、俺の作戦通りって事で。……ほら、『ありがとう』は?」


「何言ってんのよ! あんたは何にもしてないでしょ! 全部ベティーナが大人の対応したからじゃない!」


 怒鳴るエイミーの後でクレアが大笑いする。


「『ありがとう』って! 一矢さんは何もしてないどころか、頼まれた伝言も伝えてなかったッス。ゼロじゃなくてマイナスッス!」


 エイミーはもう一歩一矢に迫る。


「それに聞いたわよ。『添い遂げよう』ってベティーナに言ったみたいじゃない」


「えっ? 妬いてんの?」


 一矢はエイミーを肘でつつく。


「違うわよ! 『驚いて冷たい対応をしてしまった』ってベティーナが気にしてたのよ! ベティーナは真面目なの! 変な事言ってからかわないで!」


「やだな~、別にからかった訳じゃないよ」


「嘘つきなさいっ! あんたハーレム作るって言ってんじゃない! 一人と添い遂げるつもりなんて無いんでしょ?」


「一人とは言ってないよ。みんなと添い遂げるつもりだ! エイミーやクレアともね」


 一矢は笑顔で親指を立てる。


「マジ、サイテーじゃないスか~。一矢さん、アウト~ッ!」


 クレアも一矢に親指を立て見せる。エイミーは頭が痛くなってきた。


「……クレア、こういうバカにかける魔法はないの?」


「う~ん。魔法じゃないけど、呪いならありますよ」


「ちょっと待った! き、昨日は俺の考えは立派だって言ってたじゃん!」


 焦る一矢はエイミーにすがる。


「そこじゃないでしょ! そんな考えを立派だって言う奴居るわけ無いでしょうが! ……クレア、お願い」


「了解で~す」


 こめかみを押さえるエイミーと入れ替わるように、笑顔のクレアが一歩前に出る。


 一矢はクレアから少しでも離れようと、ベッドの上で壁に張り付いた。


 クレアは腕をまくり、両手を一矢の前で妖しく振る。


「アブラカタブラハゲハゲハゲリン……」


「なっ、何その呪文……」


「ケセラセラセラクサクサクサオ~……」


「イヤ、……マジでやめて。大丈夫だよ? 俺、……みんな平等に愛せるよ?」


 泣きそうな一矢にクレアは呪文を続ける。


「ナンマンダブクブクデブデブデブデ~……」


「や、やめてくれよーー!」


 一矢は堪らず部屋を飛び出した。


「キャハハハ! マジウケる!」


「これで懲りるかしらね。……それで今のはどんな呪いなの?」


「嘘んこ呪いですよ」


「えっ?」


 驚くエイミーを見て、クレアは笑う。


「やだなぁ、わたしの専門は攻撃魔法ですよ? 呪術は専門外です」


「それじゃあ今のは……」


「あんなの子供しか引っ掛かりませんよ~」


「……あんたもよっぽどね」


 エイミーとクレアはが笑ってると開けっ放しだった扉からベティーナが顔を出した。


「たった今、一矢殿が泣きながら走って行きましたが、何かあったのですか?」


 それを聞いてエイミーとクレアはお腹を抱えて笑った。


 それから一矢は船が港に着くまで部屋にこもり、食事も一人でコソコソと食べるようになった。


「俺はハゲるんだ、デブるんだ、臭くなるんだ……」


 そんな声が一矢の部屋から聞こえて、クレアは大笑いでエイミーに報告しに行った。

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