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異世界平定奇譚   作者: 新樹 百佑
第四章 船出
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最終目標はハーレム、ヒモ暮らし

 一矢達は船内に入ると無言で廊下を進む。エイミー達も口を開かない。


 一矢は自室の前で立ち止まるとエイミーに向き直る。


「エイミー、ちょっと話しても良いか?」

「ええ、良いわよ」


「それじゃあ私は先に部屋へ戻ってるッス。エヘヘ、ごゆっくり~」


 クレアが部屋へ入るのを見送り、二人は一矢の部屋へと入った。


 一矢は部屋へ入ると窓から外を眺める。


 丸く切り取られた世界はどこまでも美しかった。


 澄み渡った青空。太陽に煌めく波。


 ザパンッ


 その時一矢は、何かが海に投げ込まれる音を聞いた気がした。


 船長が海に投げ込まれるイメージが一矢の脳裏をよぎる。


 重い鎧が動かぬ船長の体を海底へと運んでいく。


 深い深い、闇の中へと。


『そんなわけない。そんな音聞こえるわけない。そんな、分かるわけ……』


 一矢は固く目を閉じ、頭に浮かんだイメージを追い出そうとする。


「一矢の考えは立派だけど、やっぱりこの世界には合わないのかもね」


 エイミーの声で一矢は我に返った。


「……エイミーも俺には敵わないと思うから一緒に来るのか?」


「確かに一矢は私より強いと思うわ。でもね、あたしは自分の意思で一緒に来てるの」


 エイミーはそう言いながらベッドに腰掛ける。


「一矢が強くても嫌なら逃げるわよ。あたしには羽があるんだから。そこは負けないわ」


 冗談めかしてエイミーが言っても一矢は振り返らない。


「エイミーは人間の事……どう思ってるんだ?」


「そうね、魔族で言えば最弱の部類に入るかな。……でも最弱でも怖いと思ってる。特に集団はね」


 エイミーは天井を見上げて続ける。


「正直、人間と手を取り合うなんて想像出来ない。……でもね。手を取り合わなくたって、戦う必要は無いのかなって思えてきたの。あんたのお陰でね」


「俺は……」


 一矢はエイミーに背を向けたまま言い淀む。


「あんたにしてはシリアス過ぎるわね。バカなんだから、あんまり考え過ぎると熱が出るわよ?」


「俺は女が男の部屋に来るって事はOKのサインだって聞いた事が有るんだけど」


「えっ?」


 振り返った一矢は悪戯っぽく笑っていた。


 エイミーは自分が腰掛けているベッドを見て、顔を赤くした。


「バ、バッカじゃないのッ! この変態! あたしはもう行くからね!」


 エイミーはベッドから立ち上がる。


「エイミー」


 一矢の声にエイミーは振り返る。


「ありがとう」


 エイミーは微笑んで部屋を出ていった。


『確かに考え過ぎだな』


 一矢は自分の頭をかく。


『俺の目標はあくまでハーレム、働かずに養ってもらうんだ! 今はただ、出来る事をやろう』


 一矢はそう思ってベッドに横たわる。


 その時、エイミーの甘い残り香が一矢の顔を綻ばせた。






 エイミーが部屋に戻るとクレアがベッドの上で微笑みながら待っていた。


「どうでした? チュー位したんスか?」


「あんたまで何言ってんのよ! するわけないでしょ!」


 エイミーは備え付けの椅子に腰掛ける。


「えぇー、でも彼氏さんが落ち込んでたらそん位するんじゃないですか?」


「そんなんじゃないから!」


 クレアはベッドを飛び出し、エイミーの向かいの椅子へ座る。


「でもでも、何か良い感じじゃないッスか?」


「全ッ然! 仕方なく一緒に旅してるだけだし、それにあたしは魔族で一矢は人間でしょ?」


「キャーッ! 禁断の恋じゃないスか!」


「私の事は良いの! それよりあんたはどうなの? 人間同士じゃない」


「わたしは男性を受けか攻めかにしか見れないッスから」


 クレアは遠い目をして言った。


「さっきも男になったエイミーさんとベティーナさんが一矢さんを取り合う設定で妄想してたッス……。やっぱり一矢さんは『受け』ッスね」


「……あんたに聞いたあたしがバカだったわ」

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