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異世界平定奇譚   作者: 新樹 百佑
第四章 船出
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敗者の行方

 海賊達に話を聞くと、この海賊船は元々人間達だけだったらしい。


 客船を襲った海賊が乗客を面白半分で海に突き落としていると、そこにあの船長が現れた。


 船長の言い分は海面を通り過ぎるだけならまだしも、自分の縄張りに下らないものを投げ入れられて頭にきたらしい。


 そこで人間の食い物を見付けた船長が味を気に入り、海賊船ごと乗っ取った。


 逆らう者は客船と共に沈めて。


 半魚人を呼び、人間達に船を操舵させ、他の船から食い物と戦闘員を補充しながら海賊行為を続けた。


 ちなみに、船底に有った金品は人間達がいつかの退職金替わりにと溜め込んでいたらしい。


 ベティーナは取り調べを終えると海賊達を檻に入れた。


 折角なので海賊船内の檻も使わせてもらっている。


 そしてベティーナはこれからの行き先について悩んだ。


『港町に戻るか、このまま海を渡るか』


 ベティーナが自分達の船に戻ると、何やら隊員と一矢が揉めていた。


 エイミーとクレアは少し離れて様子を見ている。


「どうした?」


 ベティーナが隊員達に声をかける。


「隊長! 我々が魔族を始末しようとするのを邪魔するのです!」


 隊員達は縛りあげている船長を蹴った。


「別に殺す必要は無いだろう!」


「じゃあどうすると言うんだ? 逃がせって言うのか?」


「他の奴等と一緒に牢屋へ入れれば良い」


 一矢がそう言うと隊員達は笑った。


「人間と魔族を一緒に入れたら、港につく頃には魔族だけになってるぞ!」


 エイミーはそんな警備隊員に軽蔑の眼差しを向ける。


「……魔族は人間なんか喰わないわよ。そんな事も知らないの?」


 エイミーの言葉に警備隊員は笑うのをやめる。


「こいつ等は魔族だぞ! 魔族はその場で始末するのが決まりなんだよ!」


 ベティーナが警備隊員と一矢達の間に入る。


「一矢殿の言いたい事は分かります。しかし魔族を捉えて帰っても、他の海賊達と違って裁判も何もありません。……致し方無いのです」


 一矢が納得していないのは表情からも明らかだった。


 警備隊員達はベティーナに指示を待つ。


 だがベティーナは一矢を気遣い、指示を迷っていた。


「……おい、そこの人間」


 そんな中、声をあげたのは捕らえた船長だった。


「お前は何か勘違いしているな。別に俺達はお前に助けて欲しいとは思ってない」


「別に俺もお前達を助けるとは言ってない! 殺す必要は無いって言ってるだけだ」


「それが勘違いなんだよ。俺達は魔族。弱肉強食の世界で生きている。勝てば殺すし、負ければ死ぬ。それが当然なんだよ」


 船長にそう言われても一矢は引き下がらなかった。


「でもお前は人間を全員殺したわけじゃ無いだろ? 仲間にしてんじゃないか!」


「ふん、弱者が強者に従うのは当然だ」


「だったら俺に従え! 俺に負けたんだから良いだろ?」


 一矢の言葉に船長は笑った。


「馬鹿が。仲間が居なければ勝てなかったくせに。そんな奴に従うつもりはない」


「何だよ! 屁理屈ばかり言いやがって! そんなにお前等は殺し合いがしたいのか?」


「もう良いでしょ!」


 一矢を止めたのはエイミーだった。


「魔族には魔族の考えがあって、信念もある。それが人間と合わないから戦争をしてるのよ。お互いが正しいと思うから。だからここは彼の思うようにさせてあげて!」


 一矢は何も言わずに拳を握る。


「そっちの姉ちゃんは分かってんな。そう言う事だ、坊や」


 笑う船長を尻目に、一矢は船内へと帰っていく。


 エイミーとクレアも後に続いた。


 一矢達が船内に戻るのを確認するとベティーナは隊員達に頷く。


 それを見て隊員達は剣を振り上げた。

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