誰がナンバーワン?
起き上がったベティーナが仕掛ける。
振り降ろされた槍を船長はハルバードで受ける。
その隙にベティーナは柄の部分で船長の足を狙う。
だが船長の丸太のような脚はビクともせず、逆にベティーナの腕を痺れさせた。
一矢が殴りかかると船長は飛び退いた。その時にベティーナは船長の脚を切りつけるがその傷は浅い。
一矢とベティーナの二人を前にしても、船長は笑っている。
「良いぞお前等! もっとだッ! もっと楽しませろ!」
先ずは一矢が行く。船長が振り回すハルバードを高々と飛び越えた。
船長が上に気を取られた瞬間を狙い、ベティーナは下から槍で突き上げようとする。
船長は斧刃で槍を受け止め、反対側で一矢を叩き落とそうとした。
一矢はハルバードの柄を殴り、跳ね返すがハルバードを回転させただけだった。
今度は斧刃の方が一矢を襲う。
「危ない!」
ベティーナが斧刃を弾き、斧刃は一矢の目の前を通り過ぎていった。
船長はベティーナを柄の先端で突き飛ばし、一矢にその大きな口で噛み付こうとする。
一矢は船長の肩を蹴り、すんでの所で身をひるがえした。
「あっぶね~! こいつ違うぞ。他の魔族なんかと、動きが全然違う」
「一矢殿、気を付けて下さい。……私が何とか隙を作ります!」
今度はベティーナが前に出る。
ベティーナの連続攻撃を船長は全て払い除ける。
一矢が船長の横に回り込もうとする。
それに気付いた船長は一矢の方へベティーナを蹴り飛ばした。
「ベティ!」
一矢はベティーナを受け止める。
「か、一矢殿。申し訳無い」
船長はハルバードを担ぎ、余裕の笑みを浮かべる。
「おいおい、そんなモンなのか? どうする? もう二人だけじゃ役者不足なんじゃねえか?」
その時、船上に叫び声が響いた。
「どいて下さいッス!」
一矢が振り向くとクレアが両手を向けて立っていた。
一矢は急いでベティーナを抱えたまま飛び退く。
「アイアムナンバーワーーンッ!」
そう叫ぶとクレアの両手から白い光が走った。
「ぐっ! こ、これは……」
船長はそう言ったきり、その辺一帯ごと凍り付いた。
他の半魚人も隊員も驚いて手を止める。
「やったーッ! どうですか? わたしの魔法は火と爆発だけじゃないんスよ!」
「ひゃ~、凄いじゃん! なんだよ~。そんな事出来るんなら先に言えよ~」
「いや~。氷の魔法ってちょっと地味じゃないスか。わたし、そういうの好きじゃないんで忘れてたッス! テヘッ」
クレアはチラリと舌を出した。
「一矢殿! あっ、あれを!」
ベティーナの声に一矢は振り返った。
ビキッ!
不吉な音と共に、船長を覆っている氷に亀裂が走る。
メキッ!
船長の右腕が動き、氷の一部が落ちた。
「うそっ!」
驚くクレアを氷の中の船長が睨んだ。
一矢はすかさず船長の前に走り込む。
「俺に任せろ!」
一矢は腕を大きく引き絞る。
「スーパーミラクルデンジャラスハイパー……え~と」
一矢はそのままの体勢でブツブツ呟く。
「な、何してんのよ!」
「いや、折角だから技の名前をちょっと……」
驚くエイミーに一矢は笑って答える。
バキキッ!
更に氷が割れ落ち、船長は右肘辺りまで動かせるようになった。
「何でも良いから早くヤっちゃいなさい!」
「……スペシャル……え~、コークスクリューパンーーチ!」
一矢が拳を捻りながら放つと、大きな音と共に氷を砕き、船長を吹き飛ばした。
船長は一矢達の船の縁へぶつかりバウンドすると、海賊船のメインマストへぶつかった。
船長は倒れたまま動かないのを見て、ベティーナは槍を掲げる。
「船長は倒したッ! 海賊共は抵抗を止めよ!」
ベティーナの宣言に、人間の海賊達は武器を捨て、半魚人達は海中へと逃げていった。
警備隊の被害は少なくなかったが、それでも隊員達は勝どきをあげ、勝利の余韻に浸った。
そんな中、ベティーナは一矢に声をかける。
「一矢殿、本当にありがとうございました。私はこれから奴等の海賊船内も調査調査しなければなりません」
「戦いが終わったばかりだって言うのに大変だな」
「まだ海賊が船内に潜んでいないとは限りませんから。そこでもし良ければ一矢殿にも一緒に来ては頂けませんか?」
「勿論さ! 俺とベティは死闘をくぐり抜けた仲だからね!」
そこで一矢は思い付く。
「そうだ! クレアとエイミーも連れて行こう! アイツ等も居た方が心強いだろ?」
一矢はベティーナの返事を待たずに二人の所へ駆け寄る。
「あっ……」
ベティーナは一矢の背中を複雑な想いで見送った。




