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異世界平定奇譚   作者: 新樹 百佑
第四章 船出
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誰がナンバーワン?

 起き上がったベティーナが仕掛ける。


 振り降ろされた槍を船長はハルバードで受ける。


 その隙にベティーナは柄の部分で船長の足を狙う。


 だが船長の丸太のような脚はビクともせず、逆にベティーナの腕を痺れさせた。


 一矢が殴りかかると船長は飛び退いた。その時にベティーナは船長の脚を切りつけるがその傷は浅い。


 一矢とベティーナの二人を前にしても、船長は笑っている。


「良いぞお前等! もっとだッ! もっと楽しませろ!」


 先ずは一矢が行く。船長が振り回すハルバードを高々と飛び越えた。


 船長が上に気を取られた瞬間を狙い、ベティーナは下から槍で突き上げようとする。


 船長は斧刃で槍を受け止め、反対側で一矢を叩き落とそうとした。


 一矢はハルバードの柄を殴り、跳ね返すがハルバードを回転させただけだった。


 今度は斧刃の方が一矢を襲う。


「危ない!」


 ベティーナが斧刃を弾き、斧刃は一矢の目の前を通り過ぎていった。


 船長はベティーナを柄の先端で突き飛ばし、一矢にその大きな口で噛み付こうとする。


 一矢は船長の肩を蹴り、すんでの所で身をひるがえした。


「あっぶね~! こいつ違うぞ。他の魔族なんかと、動きが全然違う」


「一矢殿、気を付けて下さい。……私が何とか隙を作ります!」


 今度はベティーナが前に出る。


 ベティーナの連続攻撃を船長は全て払い除ける。


 一矢が船長の横に回り込もうとする。


 それに気付いた船長は一矢の方へベティーナを蹴り飛ばした。


「ベティ!」


 一矢はベティーナを受け止める。


「か、一矢殿。申し訳無い」


 船長はハルバードを担ぎ、余裕の笑みを浮かべる。


「おいおい、そんなモンなのか? どうする? もう二人だけじゃ役者不足なんじゃねえか?」


 その時、船上に叫び声が響いた。


「どいて下さいッス!」


 一矢が振り向くとクレアが両手を向けて立っていた。


 一矢は急いでベティーナを抱えたまま飛び退く。


「アイアムナンバーワーーンッ!」


 そう叫ぶとクレアの両手から白い光が走った。


「ぐっ! こ、これは……」


 船長はそう言ったきり、その辺一帯ごと凍り付いた。


 他の半魚人も隊員も驚いて手を止める。


「やったーッ! どうですか? わたしの魔法は火と爆発だけじゃないんスよ!」


「ひゃ~、凄いじゃん! なんだよ~。そんな事出来るんなら先に言えよ~」


「いや~。氷の魔法ってちょっと地味じゃないスか。わたし、そういうの好きじゃないんで忘れてたッス! テヘッ」


 クレアはチラリと舌を出した。


「一矢殿! あっ、あれを!」


 ベティーナの声に一矢は振り返った。


 ビキッ!


 不吉な音と共に、船長を覆っている氷に亀裂が走る。


 メキッ!


 船長の右腕が動き、氷の一部が落ちた。


「うそっ!」


 驚くクレアを氷の中の船長が睨んだ。


 一矢はすかさず船長の前に走り込む。


「俺に任せろ!」


 一矢は腕を大きく引き絞る。


「スーパーミラクルデンジャラスハイパー……え~と」


 一矢はそのままの体勢でブツブツ呟く。


「な、何してんのよ!」


「いや、折角だから技の名前をちょっと……」


 驚くエイミーに一矢は笑って答える。


 バキキッ!


 更に氷が割れ落ち、船長は右肘辺りまで動かせるようになった。


「何でも良いから早くヤっちゃいなさい!」


「……スペシャル……え~、コークスクリューパンーーチ!」


 一矢が拳を捻りながら放つと、大きな音と共に氷を砕き、船長を吹き飛ばした。


 船長は一矢達の船の縁へぶつかりバウンドすると、海賊船のメインマストへぶつかった。


 船長は倒れたまま動かないのを見て、ベティーナは槍を掲げる。


「船長は倒したッ! 海賊共は抵抗を止めよ!」


 ベティーナの宣言に、人間の海賊達は武器を捨て、半魚人達は海中へと逃げていった。


 警備隊の被害は少なくなかったが、それでも隊員達は勝どきをあげ、勝利の余韻に浸った。


 そんな中、ベティーナは一矢に声をかける。


「一矢殿、本当にありがとうございました。私はこれから奴等の海賊船内も調査調査しなければなりません」


「戦いが終わったばかりだって言うのに大変だな」


「まだ海賊が船内に潜んでいないとは限りませんから。そこでもし良ければ一矢殿にも一緒に来ては頂けませんか?」


「勿論さ! 俺とベティは死闘をくぐり抜けた仲だからね!」


 そこで一矢は思い付く。


「そうだ! クレアとエイミーも連れて行こう! アイツ等も居た方が心強いだろ?」


 一矢はベティーナの返事を待たずに二人の所へ駆け寄る。


「あっ……」


 ベティーナは一矢の背中を複雑な想いで見送った。

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