リザードマンに出会っちゃった
獣道を進む事十分程度で村に着いた。見たところ村の裏手側に出た。
近くに居た村人が一矢に気が付くと駆け寄ってきた。
「あんた旅の人かい? 悪い事は言わねぇ。今、魔族が来てんだ。さっさと逃げた方が良いよ」
一矢は胸を張る。
「安心して下さい。私は村を救いに来たのです!」
ポカンと口を開けた村人を置き去りにしてどんどん村の中に進んで行った。
一矢が村の中心部であろう広場に着くと、そこには明らかに姿の違う者が居た。
一矢は家の陰からそっと様子を伺う。
鱗に覆われた体に鎧を着ており、鎧の下から一矢の胴体程もある尾が覗いている。
トカゲタイプの魔族、リザードマンだ。
『こいつらが魔族か』
村人達から巻き上げただろう食糧品の所でリザードマン二体が笑っていた。
『……チョット強そう、かな』
見る限り、一矢よりも大きく、がっしりしている。
『大丈夫、最初のイベントは余裕と相場が決まってる』
一矢は一人頷く。
『言っても二体だし、いけるよ。よし行くぞ。行っちゃうぞ。……本当に行くぞ!』
一矢は家の陰から出るとリザードマン達に向かって大声を張り上げた。
「この醜い魔族ども! 異世界ヒーロー、一矢様が直々にブッ飛ばしてやる! 覚悟しろ!」
リザードマン達は驚きの表情を見せる。
ただそれだけだった。
一矢はリザードマン達に近付いていく。
すると周りの家々からもリザードマンが次々と出てきた。
四、五、六……十、十一、十二、十三。
金目の物や食料を奪っていてようだ。中には酒瓶を脇に抱えているものも居る。
一矢の足は止まっていた。
心臓が早くなり、冷や汗が止まらない。
『アレ? ナンカ、オモッテタノトチガウ……』
家々から出てきたリザードマン達は食糧品の山へ奪ってきた略奪品を加えた。
そして見張りをしていた二体のリザードマン達と話し始めた。
『ヤバい、こっち見てる』
一矢の耳にも何を騒いでいるんだ的な事が聞こえてくる。
状況を確認したリザードマン達は腰にぶら下げた青竜刀を抜いて一矢に近付いてくる。
その数七体。
他のリザードマンはニヤニヤと事の成り行きを見守っていた。
『ヤバいヤバいヤバい……逃げよう』
一矢が後ろに向かって走り出すと何かにぶつかって尻餅をつく。
見上げるとそこには一際大きなリザードマンが立っていた。
「ほう、まだこんな若僧が居たとはな。奴隷商人に売り飛ばすか」
大きなリザードマンが一矢の襟首を掴んで持ち上げ、仲間の方へ歩き始める。
『わぁ〜、すっごい力持ち』
「親分、そいつが俺達をブッ飛ばすらしいですぜ!」
リザードマンの一体がそう言った。
『ヤバい、詰んだかも……』
リザードマンの親分は一矢を目の高さまで持ち上げる。
ジロリと見られて、一矢は媚びた笑みを見せる。
「ほう、だったらブッ飛ばして貰おうか」
親分は一矢を放り投げる。
地面に転がり、一矢が顔をあげる。
他のリザードマンが取り囲み、逃げ道は見当たらなかった。
『負けイベント、だったかも』




