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異世界平定奇譚   作者: 新樹 百佑
第一章 始まり
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目覚めちゃいました

 一矢は気が付くと森の中に寝そべっていた。


 自分の両手を確認するもやはり何も持っていない。


 銃どころか、何も。


『〈ワンショット・マスター、一矢の冒険〉はおわた』


 失意のもと、一矢は再び目を閉じた。

 どれ位そうしていただろか。一矢に近付く足音が聞こえる。


「もし、大丈夫ですかな?」


 老人の声が聞こえる。


「もし……」


「気にしないで下さい。女の子に話しかけられるのが王道なので、それを待っているだけですから」


「仰ってる意味が分かりませんが……ほれ、リサリーや。お前も声をかけてあげなさい」


 それを聞いて一矢は飛び起きる。


 薪を背負った老人の後ろから、十にも満たない少女が一矢を見ていた。


『……確かに女の子だけど、求めてたのと違う!』


 地に両手を付けてガックリとうなだれる一矢に、リサリーは恐る恐る声を掛けた。


「お兄ちゃん……大丈夫?」


「お兄ちゃん!?」


 その一言で、一矢の目の色が変わった。


 あまりの食いつきに、リサリーは思わず老人の影へと隠れる。


『お兄ちゃん……良い響きだ』


 噛み締めるように目を閉じ、一矢はすっくと立ち上がると天を仰いだ。


『〈お兄ちゃんのハーレム物語〉始めてやるか!』


 決意を新にした一矢は拳を固く握りしめている。

 そんな一矢の様子を老人とリサリーは心配そうに見詰めた。


「あの、頭でもぶつけられましたか? ワシの家はすぐソコなので良ければ休んで行かれませんか?」


「行きましょう! そこで物語は始まるのですね? 大丈夫です。分かってますよ!」


「……はぁ」


 困惑気味に歩き出す老人をよそに一矢は意気揚々とついていく。


 リサリーはそんな一矢を警戒し、家に着くまで老人から離れようとしなかった。


 老人の家は木造の簡素な山小屋で家の脇には沢山の薪が積み上げられている。


 老人は入口の所に背負っていた薪を降ろすと二人を小屋の中へと招き入れた。


 小屋の中には土間や囲炉裏等があり古い日本家屋の様な造りだ。


「……ここにはお二人で住んでいるんですか?」


 一矢は中を見渡しながら尋ねる。お世辞にも広いとは言い難い。


「本当はワシ一人なんじゃが、最近この先にある村へ魔族が来るようになって。それでこの子を匿っておるんじゃ」


 その話を聞いてリサリーは暗い表情を見せる。だが一矢の目は、なぜか輝いていた。


「魔族! なるほど、テンプレ通りですね! 分かりました。やりましょう!」


「やる? 一体何を……」


「もう、分かってますから。その魔族達を追っ払えば良いんですよね!」


「お兄ちゃん、魔族をやっつけてくれるの?」


 リサリーは顔を輝かせる。


「リサリー、そんな事一人では無理な話じゃよ。それに魔族達ならそのうち去って行く。隠れておるのが一番じゃ」


「いえいえ、私に任せなさい! こんな最初のクエスト位、ちゃちゃっと片付けてやりますよ。それで村は何処なんですか?」


 一矢の自信に老人も戸惑う。


『この若者、もしや名のある旅人なのでは……』


「村はここから真っ直ぐの所にあるので迷う事はないと思うのじゃが。……しかし、本当に大丈夫ですかのう?」


「無論です! 必ずや村を、女性たちを開放致しましょう!」


 心配そうな老人に見送られて一矢は鼻唄まじりに出発した。

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