異世界転移しちゃいました
背中のヒヤリとした感覚に一矢は目を覚ました。
一矢の目の前には見慣れない光景が広がっている。
壁も床も天井も、全てがレンガ造り。
ドーム状になっており、扉も窓も見当たらない。
『こっ、これはもしかして異世界転移? いやいや、そんなまさか』
一矢が混乱から立ち直れずにいると、何処からともなく声が聞こえてきた。
『……異世界に行きたいか?』
「えっ?」
『えっ? こっちが、えっ? イヤイヤイヤ、無いわ〜。今まさにビッグチャンス掴もうとしてんのに、それは無いわ〜』
一矢は戸惑う。
なんだこの軽薄な声は。
しかも無駄にテンションが高い。
『もう一回いくぞ? 異世界に行きたいかーーー!!』
「い、行きた~い。……なんだこれ」
『……ならば力を選べ……』
ガシャガシャと騒々しく、金属音が響き渡る。
一矢が見回すと壁一面に色々な武器が立て掛けられていた。
そして背後から不穏な音が聞こえてくる。
シュロロロロ……。
一矢が振り向くと自分の顔ほどの目が二つ、大きな口の先から小さな舌がチロチロ出ている。
大蛇だった。
鎌首をもたげ、じりじりと間合いを詰めてくる。
足がすくんで動けない。
次の瞬間、大蛇の顎が大きく開いた。
噛み付きを、一矢はギリギリの所でかわした。
二撃目、三撃目と、休む間もなく連続で襲いかかってくる。
「うわぁ、ひぃ! イヤッ!」
一矢は悲鳴をあげながらかわしていく。
そこで一矢は気が付いた。
『あれ? ……こいつ、大した事無いぞ』
『これならイケるかも……』
一矢は大蛇の攻撃をかわしつつ、思いっきり横っ面をぶん殴った。
大蛇は面白い程吹っ飛び、壁に激突した。
「よっしゃーー!」
一矢がガッツポーズを取ると再び声が聞こえてきた。
『良かろう。お主の力は『拳』じゃな』
「えっ? 拳? いや、まだ選んでないんだけど」
『はあ? 今拳で戦いましたよね? こっちは選べって言いました。そっちは拳で戦いました。じゃあ拳で良いですよね?』
「要るよ、武器! 格好良いでしょうが!」
『言っときますが大蛇が死んだ時点で決定ですから。そう言うシステムなんで。こっちに非はないんで。選ぶんなら選んで、早く!』
「本当に友達になりたくないタイプだわ〜」
一矢はもう一度数々の武器を確認する。
『やっぱりここは王道に剣か。でも槍も格好良いな。いや、格好良さならあっちの矛だか檄だかも捨てがたい。パワー重視で斧も良いかな。あっ!』
そこで一矢は一つの武器に目を奪われた。
ベルト付きのホルスターに納まった拳銃、しかも西部劇に出てきそうなリボルバータイプ。
「えっ? 銃あんじゃん。こんなん銃一択でしょ。ゲームじゃないんだから」
さっきまで悩んでいた剣も槍も、一気にどうでも良くなった。
「剣とか槍とかでチマチマ戦う奴は馬鹿。現代武器バンザイ!」
一矢は拳銃に向かって走り出した。
あともう一歩で手が届く。
だが丁度大蛇も力尽きる。
『はい、時間切れ〜。いってらしゃ〜い』
周りの床も壁も一気に崩れ、一矢もろとも闇の中へと落ちていった。
「俺のマグナーーム!」




